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15/22

想い、想われ(Side藍里)

いつも読んでいただき

ありがとうございます。

 ――――出会った時の暁斗は大人しそうな印象だった。


 実際はかなり強引で、

会って直ぐに私を連れ回して、

街中を一方的に案内してくれたり。


 私が疲れを見せ始めると、

直ぐに休憩を入れてくれて、

さりげなく気遣ってくれたりもした。


 その日の内に友達ということになってしまい、

お互いに名前で呼ぶようになってしまった。


 でも、不思議と嫌な気分はしなかった。


 翌日から学校に行くことになってたけど、

暁斗が付き添ってくれると聞いて、少し安心した。


 途中で暁斗の幼馴染の千歳ちゃんと会って

お互いに自己紹介したけど、私は緊張してしまい

素っ気ない態度になってしまった。


 学校では暁斗と千歳ちゃんと同じクラスになれた。


 運が良かったのかな? 

何となく微笑む美月さんが頭に浮かんだ。


 それからは暁斗と千歳ちゃんの二人とは、

仲良くすることが出来たけど、

他のクラスメイトは私の髪と目をからかってきたので

話をする気もなくて無視することにした。


 お母さんと同じ髪と瞳の色を馬鹿にするなんて、

赦せなかった。


 だから私は、火事のせいで短くなっていた髪も

伸びてからかわれるのが嫌で短いままにしたし、

弱いと思われないように男の子のような

言動をするようになっていた。


 ただ暁斗と千歳ちゃんの二人といる時だけは、

素の自分に戻ることが出きた。


 そんな私が進級した新しいクラスで、

周りと馴染む切っ掛けをくれたのも、

暁斗の何気ない一言だった。


「藍里は髪を伸ばした方が絶対綺麗だよ」 


 その言葉は私には照れ臭すぎて

正に『顔から火が出る』思いだった。


 暁斗の言葉は嬉しかったけど、

どうしてもからかわれた印象が強くて、

髪を伸ばす気にはならなかった。


 そこに千歳ちゃんが私の髪と瞳の色がゲームに

出てくるお姫様みたいできっと可愛く綺麗になると

力説してきて、熱意に負けて髪を伸ばし始めた。


 髪を伸ばして最初に嬉しかったことは

美月さんが褒めてくれた事だった。


 今まで気にしていなかった

髪の手入れの仕方を教えてくれて、

夏休みには一緒にショッピングに行って

私に似合うといって綺麗で可愛い服を選んでくれた。


 夏休み明けの始めての学校で、

その服を着て行った時は凄く恥ずかしくて

ドキドキしすぎてお家に帰りたくなったけど

暁斗と千歳ちゃんが褒めてくれたので

勇気をもつ事が出来た。


 結論から言えば、正に『効果覿面』だった。


 千歳ちゃんも色々してくれていたようで、

今までが嘘のように、

クラスの女の子達が私のことを褒めそやした。


 余りの手のひら返しに

色々と思わないこともなかったけど、

話してみればみんな普通で

私が一方的に壁を作っていたんだと反省した。


 二人のおかげで学校生活にも馴染め

なんの憂いもないと思っていた。


 私が引っ越してきて三年が経ち

最終学年を迎えた年に転機が訪れた。


 お母さんが亡くなった日のお墓参りで、

お父さんが突然、私を助けた消防士さんに

お礼をしに行こうと言いだした。


 正直、私は嫌だった。

だって、私はお母さんを助けてくれなかった

その消防士さんのことが憎かったから。


 でも、私自身は助けてもらったのだからと

渋々会いに行くことに同意した。


 数日後、その消防士さんのところに行くからと、

私は何故か黒いワンピースを着せられ、

お隣の暁斗のお家に連れて行かれた。


お家の中には、お坊さんと

黒い服を着た大人たちが沢山居た。


 暁斗も黒い服で静かに座っていた。


 暁斗に声を掛けたかったけど

お父さんに連れられて、美月さんの所に向かう。


 美月さんにお父さんが頭を下げると

静かに二人は話し始める。


「藍里ちゃんには、まだ早いのではないかしら?」


「いえ、今の藍里なら受け止めれるはずです」


「そう………」


 二人が難しい話をしているので

 少し離れて見渡す。


 暁斗のお家には何度も来てたけど

 初めて入った広い部屋で

 中央の奥に段が置かれ両脇に綺麗な花が飾られていた。

 その段の上には

 暁斗に何となく似た笑顔のおじさんが

 お母さんと同じような写真で飾られていた。


 ぼうっと、写真を眺めていると

 話し終えたお父さんが横から私を呼んだ。


「藍里……」


「ねぇ、お父さんあの人って」


 私は壇上のおじさんの写真について尋ねた。


「ああ、あの人が藍里を助けてくれた方だよ」


「うそ。だって……それって………」


 暁斗はお父さんの事を

 遠い所で人助けをしてるって言ってて……

 ……ああ、そうか…遠い所って……

 お母さんと一緒の所にいるんだ。


「ああ、朝比奈星明(アサヒナ ホシアキ)さん、それが藍里を助けてくれた

命の恩人の名前で、暁斗君のお父さんだ」


 心臓がバクバクして息苦しくなる。


「何で…暁斗のお父さんは…」


『亡くなったの?』と、口に出そうとして、

その嫌悪感に吐き気を覚える。


「あの日の火災で星明さんも………大怪我をしてしまってね…」


 私の言葉を察して亡くなった理由を教えてくれた。 


 でも、誰のせいで大怪我をしてしまったの?


 だって、私を助けてくれたんだよね。


 呼吸がままならなくなり息が乱れ俯く。


 お父さんが心配そうにしゃがみ込む。


 私は心配させないように顔を上げる。


 見上げた先に映ったのは

 写真に映った暁斗のお父さん。


 暁斗の写真のお父さんは、

 私の写真のお母さんと同じように

 優しく微笑んでいた。


『暁斗、ごめんなさい』


 貴方のお父さんを殺したのは……


『………私だ』


 私はそのまま意識を失った――――



――――目が覚めると、目の前に暁斗がいた。


「いつから、見ていたの?」


「藍里が泣いてたときから」


 暁斗に言われて涙を零していたのに気が付いた。


 結局、起きても、寝てても私は泣いていた。


「はぁ、私ってダメね」


「なんで、急に自己嫌悪にひたってるのさ」


「暁斗のお父さんの事、思い出しちゃって」


 正直に暁斗に話す。


「なるほど、それで自分なんかがとか思っちゃった」


 思わず暁斗を見上げて俯く。


「…何で分かったの」


「僕だって藍里ほどではないけど

 ちゃんと見てるよ」


「そっか」


「ねえ藍里、僕は君に救われ、

 立ち直る切っ掛けをくれた

 千歳と向き合う気持ちを取り戻させてくれた」


「それは、結果論よ。もしかしたら

 私は暁斗を千歳以上に傷付けたかもしれない

 暁斗からまた大事なものを奪っていたかもしれない」


「でも僕は大丈夫だった。

 だって藍里の気持ちが僕に響いたから

 何よりも大切に思ってくれる想いが、

 人を大切だと思う気持ちが人を傷付ける訳がないよ

 だから、改めて『ありがとう』藍里」

 

 暁斗に感謝されて、途端、嬉しくなる。

 泣き止んだばかりなのにまた泣きたくなる。


「ずるいよ、暁斗は」


「あと、藍里は僕から奪うって言ったけど

 それよりも藍里からは大切な事いっぱいもらってる

 それこそ、返し切れない程にね

 だから、覚悟しておいて、

 これから一杯返して行くから、

 勝手に離れたら許さないからね」


「うん、私も負けない。暁斗に返せたとは思えないもの

 私の方が利息だってあるんだから、まだまだ

 足りないわ、だから貸し逃げなんて許さないんだから」


 そう言って、やっと二人で笑えた。

 結局私も暁斗がいないと駄目なんだと

 改めて思い知らされた。


 その後、養護教諭の『景子さん』に咳払いされ

 気まずい思いをしつつ教室に戻った。


 




 

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― 新着の感想 ―
[一言] 負債の上乗せがありましたか。 そりゃ、相手を第一に考えても仕方ないかな。
[一言] 普通にいけば間違いなく付き合っていたのはこの2人だろ。と思うのですが、ポンコツちゃんと付き合ってしまったのは、9割近くは藍里が拗らせていた所為な気がするんですよね。今だに主人公と千歳のヨリを…
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