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11/22

希望と絶望は紙一重 (Side藍里)

いつも、感想と評価ありがとうございます


これからも、それを励みに頑張ります。

 あまり良い寝付きではなかったようで

目を覚ましてもスッキリしない。


 身支度も時間がかかってしまい

いつもより少し遅れて暁斗のお家に伺う。


 暁斗は勝手に入って構わないと言ってくれたが

一応、インターホンを鳴らし来たことを報せ

預かっていた合鍵を使い家にお邪魔する。


 リビングに顔を出し暁斗と朝の挨拶を交わす。


 直ぐにご飯の炊ける良い香りと

テーブルに並べられた朝食に気付いた。


 完全にしてやられた私は憎まれ口と合わせて

恨みがましく暁斗を見るが、長続きせず

自然と笑顔になってお礼を言っていた。


 炊きたてご飯が、私の前に置かれ

一緒に『いただきます』をする。


 私だけかもしれないが

誰かと一緒の『いただきます』はいい物だとだと感じる。


 食事をしていると暁斗は物言いたげに

何度か私を見ていたが、気持ちが定まったようで

おもむろに話しかけてきた。


 話の内容は思っていた通り

私を心配する内容だった。


 暁斗は私を優しいと言うが

それは違う、本当に優しいのは暁斗だ。


 私は子供の頃、暁斗の優しさに

何度助けられただろう


 確かに少し疎遠になった事もあるけど

あれはお互いに気不味くなっただけで

喧嘩したわけではない。


 私の大切で大好きな親友。

それを守るためなら私は………


 その考えを強くした私に、暁斗は

心からの想いを私に告げてくれた。


『僕のせいで藍里が傷付くような事があれば

 ……僕はきっと自分(・・)を赦さない!!」


 その言葉は正に『目から鱗が落ちる』だった。


 私が逆の立場だったらと考えた。


 もし、大切な暁斗が私のためだとしても

深い傷を負ったとしたら、そんなことになったら、きっと

私だって、その要因となった私自身を一番

赦すことが出来ないだろう。


 そんな想いを受け、私はまじまじと暁斗を見詰める。

 暁斗も真剣な表情で私を見ていた。


 私は本当に馬鹿だ、私はもう

ちゃんと暁斗の大切なものの一つになっていた。


 分かっていたようで、分かっていなかった。


 その思いに改めて気付けた事が純粋に嬉しかった――


 そう……本当に嬉しくて

 暁斗から目が離せず、思わず笑ってしまう程に……


 ……あっ、私…初めて……

 にらめっこで負けたかもしれない。


 そんなどうでもいい事を思いながら

 追加で笑わせてくる暁斗の言葉を聞きながら

私はどこか吹っ切れた気がした。


 そんな私に更に嬉しい追い打ちが――


 不思議そうに私を見ていた暁斗が

私に釣られるように、()()()微笑みを見せてくれた。


 正に『笑い角には福来たる』と言うべきか

暁斗には本当の意味で笑えるようになってほしい。


 強くそう願った。


 

 その後は朝食も食べ終わり二人で登校。


 暁斗には言えないけど、いつも居た

ポンコツな幼馴染がいないのは少し寂しい。


 そんな、いつもの一人を欠いた登校時間は

特別なにか起きるわけでもなく平和に過ぎていった。



 学園に到着し教室に入ると

暁斗は珍しく自分から前島君に話しかけていた。


 今の所、クラスで暁斗は腫れ物扱いだ

皆扱いに苦慮してる。


 そんな中で態度を変えずに接してくれる

前島君は暁斗にとっては有難い存在なんだろう。



 昼休みに入り、暁斗とご飯を一緒にしたかったが

千歳に話しておくことがあるので


 暁斗に断りを入れ、千歳の教室に向う。


 千歳は昨日、私を置いて行った事を謝罪してきた。


「昨日はホントにゴメンね

 自分で付いて来てってお願いしてたのに」

「大丈夫よ、気にしてないから」

「ありがとう、藍ちゃんはやっぱり優しいね」

「………そんなことないわ

 それより、出来れば二人で話がしたいのだけれど」

「それなら、良い所があるよ」


 そう言って千歳が連れて来てくれたところは

手芸部の部室だった。


「勝手に使って大丈夫なの?」

「一応、私も部員だよ

 殆ど参加してないけどね」

「他の部員が来たりはしないのかしら」

「それも問題ないよー」


 そう言って千歳は部室の扉にぶら下がっていた

プラカードをひっくり返した。


「部員達の暗黙のルールなんだー

 こうしてると入ってこないでってことなんだよ」


 良くわからないルールのある部活だとは思ったが

他に邪魔されないなら問題ない

私はそれ以上深く考えないようにし

持ってきたお弁当を千歳に渡した。


「えっ、いいのー」

「私が呼び出したから当然よ」

「ありがとう、藍ちゃんのお弁当久しぶりだよ」


 嬉しそう私のお弁当を食べだす。

美味しそうに食べてくれる姿は

作った側としても嬉しいものだ。


 千歳が食べ終わるのを待って

私は本題を切り出した。


「千歳、よく聞いてね」

「うっ、うん」


 私の真剣な表情に押され千歳が背筋をピンと伸ばす。


「あの後、比留間先輩と話をしたわ」

「えっ」


 千歳は驚いた顔を見せる。

 私は続けて昨日のゲス野郎の言葉をありのまま伝える。


 ここに来て千歳も自分の甘さを認識し直したようで

最後は涙目になっていた。


 朝、暁斗に言われたこともそうだけど

もうひとつ私は大事な事を忘れていた。


 どこかで千歳はあのクズとの関係を自分から

断ち切ることが出来ないと思っていた。


 だから私が代わりにやらないといけないと思った。


 でも、それはひどく傲慢で安直な考えだった。


 だって、目の前にいる千歳だって暁斗の事を

何より大事に思っているはずだということを


 流されやすく、自分の気持ちに衝動的になりがちな

本当に世話の焼ける幼馴染。

でも私はもう一度信じてみたいと思った。


だから、改めて彼女に問い掛けた。


「千歳、あなたは本当に暁斗の事を愛してる?」

「もちろんだよ、アッ君が私は一番好き!!」

「だったら、暁斗の為に

 アイツを完膚無きまでに振ってきなさい」

「うん、分かった。私頑張るよ」


 私の意気込みが伝播したのか

千歳の鼻息が荒くなってるのが少し面白かった。


「今度は私、ついて行かないからね」


 業腹だがゲス野郎もひとつ正しいことを言っていた。

これは千歳自身の問題なのだ。


 どんなに稚拙で粗悪で醜い贋作だろうと

結局、買うか、買わないかを決めるのは千歳の意思だ。


 私は可能な限りそれは買うべきではないと説得した

少し想いがから回って千歳の手に渡る前に

買い取ろうとさえ考えてしまったけれど 


 それでも、もし、千歳がそれを本物と信じて

買うのであればそれは千歳の責任だ。


 自分で決めた事なら

責任は自分自身で取らなくてはいけない。


 結果、暁斗を傷付ける事になっても……


 そして、その時はきっと私も傷付いているだろうから。


「大丈夫、やってみせるよー」


 目の前で息巻く千歳の姿を見て思わず微笑んでしまう。


 だって、こんな残念でしかたのないポンコツ幼馴染でも

やっぱり、長いこと付き合ってきた大事な存在なのだから。



 だから暁斗、もしもが現実になったら

 それは、苦しいかもしれないけど……


 その時は一緒に痛みを分かち合おうね―――



 

 

少しでも楽しめましたら

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― 新着の感想 ―
[一言] 果たして、ポンコツは大丈夫か。
[一言] 1人で行かせても良いけど近くに隠れる位はするべきだよね。
[一言] なにか、文芸部の活動に問題ありそう。部室に入って来れないようにして、何やってるの?勘繰りすぎですかね。例の先輩がよく使ってるとか。二人の接触点は部活?ポンコツ千歳は、また繰り返すような感じだ…
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