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け、決してコミュ障だからって日和ったわけじゃないからな!

知らない土地で知り合い?ができた。

 ヒバナさんたちから話を聞いたその夜、予め用意されていた難民用の小屋の一室で仰向けになりながら話をまとめていた。

 改めて考えると、彼らの話にはいくつか穴があることに気が付く。

 なんといっても市長を誘拐する根拠がなさすぎるのだ。

 ”均衡の座”が人間に不利益を及ぼすというのなら、その性質上玉座から引きはがすという意味において妥当な判断である。

 だが、実情は有名無実な長物である。それならば拉致する意味はあるのだろうか。

 それに加え、内紛への経緯にも無理があるように思える。

 果たして侍従の職を辞任したいと言っただけで、国家反逆を意味するのか。あまりにも解釈が飛躍しすぎている。

 様々な仮説を吟味していると、サウナさんから連絡が入った。


「どうもライラ君。あなたの頼りある上司兼、未来の…うふふ」


 どうやら今は頼りがいのない上司になり下がってしまったらしい。酔いが回っているのか上機嫌である。


「まったく、サウナったらこんな時まで酒におぼれるとは。ライラくん成果はどうだね。あまり期待はしていないけれど。あっ、でもサウナから聞いたよ。ヴァンビット程度なら倒せるようになった、てね」


 彼女なりのフォローがなおのことドリルに加速度を与えボクの心を抉る。


「さて各部隊の代表が集まったところで近況報告会を開催する。まずは私から。鬼門のほうだが想像以上に苦戦を強いられている。だが許容範囲内だろう。対人戦線だが、魔導士による身体強化を受けているとみられる者が現れ始めた。本体が来ていないので問題はないだろう」


 すかっりと上官としての威厳を取り戻していた。


「了解。次は私ね。”3314525203412"」


 ハルさんは何桁かもわからない数字を羅列していたが、サウナさんには通じたようで、「了解」と言っていた。僕にはさっぱりわからない暗号なのだろう。

 次に僕の番が回ってきたが、特にはないと答えた。

 本当は僕の考えを聞いてほしかったが、人間の感情的な動きを論理的に考えたところで意味はないのだ。感情論は矛盾さえも寛容してしまう。

 それに部外者の僕の邪推など当たるはずもないし、かえって迷惑になりかねないので自重した次第である。

 け、決してコミュ障だからって日和ったわけじゃないからな!

 何にせよこの件には僕の知らない何かかがあると踏んで間違いなさそうだ。


「明日以降も今日と同様の動きをしてもらう。ただ先ほども触れたがジアスの軍隊がすでに戦線付近にも到達している恐れもあるので、特にライラ君は注意するように。以上」


 念押しされたが明確な情報がないため何に気を付ければいいか毛頭わからない。

「では」とサウナさんが通信を切ろうとしたとき、ふとメナミさんから貰った番号の存在を思い出した。


「あ、あの今日知り合った方に八桁の番号が書かれた紙を頂いたんですけど、なんでしょう」


 返答がない。もしかしたら切れてしまったのかもしれない。仕方ないので明日も今日と同じ場所を徘徊して接触を試みようとか考えていたところ、


「すまない、それに心当たりがなくて。妙だな。良ければその人のことを話してくれないか」


 と言われた。

 ヒバナさんとメナミさんのことを話した。彼らがジアスのことを忌避していることももれなく伝えた。


「なるほど。ジアスに反抗するものは昔から多かったからそこは問題ない。ただ」


「明らかに異世界の知識を持っている、でしょ」


「ハルの言うとうりだよ。しかも厄介なことに不完全な知識だ。恐らくは電話番号を模したものだが、桁数が本来のと異なる」


「そしてそれ以上に厄介なのはライラ君が無抵抗で受け取ったこと。彼らはほぼ君が異星人だと確信した」


 どうやら厄介事になってしまったようだ。

 それにしてもいつ僕が異星人だとバレてしまったのだろうか。


「明日から私の意識をライラ君に接続する。多少意識が混同して気分を悪くする可能性があるが我慢して欲しい」


 嘘から出たまこととでも言えようか、またあの二人と接触しなければならなくなった。ほぼ初対面の人とまた会話をしなければならないのか。しかもおそらくはこちらから声をかけることになりそうだ。

 すこし苦痛だが、任務のためには致し方ない。


「それでは各自明日に備えるように」


 そこで会話は終了した。改めて部屋の天井を見上げる。

 始めてハルさんにこの話を聞いたときは軽い人助けだと思っていたが、複雑な任務に複雑な事情が絡み合って複雑になりすぎている。

 頭の出来がそれほど良くない僕にはこれ以上のことを考える必要はないだろう。なるようになるさ。


 翌日、僕は昨日と同じ場所へくり出した。サウナさんの意識を持って。

 なるほど彼女の思考が逆流しながらも流れ込んでくる感覚だ。僕の思考と混濁し、立ち眩みをおこしかけてしまう。これは思ったよりきついかもしれない。

 しばらく昨日と同じ場所をほっつき歩いていたが、彼らは見当たらなかった。

 約束を交わしたわけではないし、彼らは通りすがりの冒険者だ。来るはずもないのだ。恐らくあの紙も何かの手違いだっただけなのかもしれない。

 ひとまずこの場を離れ、城の方向、図書館とやらに行こうと思う。偵察も兼ねたある意味の観光といこうか。

 それにしても本当に穏やかな街並みである。京都や奈良を思い起こす情景は帰郷したかのような感覚を与える。まあ、東京住みなので故郷とは程遠いが。


 城の付近では厳重な監視体制が敷かれていた。皆お揃いの軍服を着て、通行人を睨みつけるよに見ている。

 いかにも中枢という雰囲気を漂わせている。


(あれはジアスの軍隊ね。なるほど、早くも城を占拠したのね。早くてを打たなければ本当に飲み込まれてしまう)


 事態は思ったより切迫しているようであった。

 そして城を少し行った先にお目当ての図書館らしい立派な建物を発見した。

 全面ガラス張りの明るい雰囲気の大図書館で、市長を監禁しているという割にはフリーに人の出入りがされていた。

 早速中に入ろうとしたところ、まるで待ち伏せていたかのように例の二人に声をかけられた。

 昨夜のサウナさんの話を聞いたあとだと、どこかしらカツアゲを彷彿とさせるものがある。


「やあ、ライラ君。久しぶりだね。おっと、昨日会ったばかりだったかな」


 どこか懐かしくもデジャブを感じる。というかヒバナさんの印象が昨日と大幅に異なっていて恐怖を覚える。中の人が違うというほうがしっくりくるほどだ。

「さて中に入ろうか」とメナミさんに促され、図書館に足を踏み入れると、その大きさに驚く。

 外観通りの広さに、一面を埋め尽くす棚、蔵書の数と言ったら相当数あるだろう。

 僕らは最上階である四階にいく。そこには数人程度が入れる小さな個室があるようで、そこへ連れ込まれた。

 机を挟んで僕に対面するように右にヒバナさん、左にメナミさんが座る。


「そんなに固くならなくていいよ。俺らは君に少々興味があるだけだから」


 その一言がより僕の体を強ばらせるとわかってのことなのか、ヒバナさんはそう言った。

 僕が異星人だとやはり確信を得ているようだ。たった一つの失態で、面倒事に巻き込まれてしまった。


「単刀直入に聞こう。ライラ君は異星人だね」


 メナミさんは相も変わらず優しい口調で問うてきた。さることながらこれも恐怖というスパイスであることに変わりはないのだ。

 僕は頷くことも出来ず、ただ二人の間を見つめていた。


「俺らは別にお前が異星人だろうが取って喰ったりはしねぇよ。ただ、少し協力して欲しいだけだ」


 この世界に来て僕は頼み事しかされていない。タケシさん--僕は忘れてないぞ--から始まり、サウナさん、そして彼ら。

 これはスキルの存在を疑わざるを得ない。そういうのあるだろ【被頼】みたいなやつ。

 というか、パッシブスキルに【薄影】とか言うやつなかったけ?レベル八の。機能してなくないか。


「もうヒバナは、説明無しに協力しろなんて相手を困らせるだけでしょ。ごめんねライラ君。実は私たちはWHIの一員なんだよ」


 WHIかつてどこかで聞いたことがある気がする名前だ。

 そうだ、アジェリスで宿泊したホテルでエレベータで居合わせたマッチョが言ってたやつか。その真相こそ分からなかったあれだ。


「WHIについての詳細は教えられないが、まあ()()()()()()有益な活動をしてる団体だとおもってくれ」


 人間にとっては?まるで魔導士に対しては一切の配慮をしない言い方だ。

 気になる言い方ではあるが、ここは異星人という特性を生かして、名も知らないふりをする。そう、魔導士という存在を知らないことに。


「は、はあ。えーっと、それで」


「お前は魔導士のことをどう思う。知らないとは言わせないぞ。裏は取れている」


 一体どこまで面倒事が押し寄せてくるのか。

 皆に思いだしてもらいたい。僕はもともと農業でスローライフを送るつもりだった。それが、一般小説より以上に交錯した状況に身を置かなければならないのか。

 誰も収拾がつかないのが現実というものか。


「あっ、えーと、どうにも」


僕が曖昧に応えると、


「そうか。なら一緒に魔道士殺しをしよう。協力、してくれるよな」


顔を近づけ、脅迫するように言われた。

あまりのことに目を丸くすることしか出来ない。

魔道士殺しだと。そこにはサウナさんやハルさんも含まれるのだろう。


「あのー、それはちょっと」


僕かそう言うと、


「なるほど。いきなり物騒な話を持ちかけられても困るよね。ごめんね。でも、」


メナミさんはやはり優しい口調でそういった。優しいのは口だけで、鋭い眼光でこちらを見ていた。


「申し訳ないけどライラ君が誰に指示されてかはわからないけど、フッカ市長と接触を図ろうとしているのなら私たちは邪魔するよ」


 そう言い切って、メナミさんは背に担いでいた弓を手に取り、つがえた。

 普段優しい人が怒ると怖いのと同じ理論で彼は恐ろしかった。美男とという面を被った悪魔である。

 死を直前に走馬灯を見ることもなく、向かってくる矢がスローで見えることなく、僕は矢を…避けた。


【発動】

【緊急回避 壱】

 咄嗟によけやすくなる。回避率+5%付与(自動)


 いつしか獲得していたスキルである。自動発動かつ、確率が絡んでいるので心配要素しかないスキルだが、幸い今回は効果を発揮した。

 だが、次の一矢はおそらく避けることはできないだろう。ならば、


【発動】

【猫だまし 壱】

 相手を驚かせることができる。相手は硬直1.5秒。(鍛錬 一定時間自身を強化。全能力+1%)


 僕の意図を汲み取り、ベストタイミングでサウナさんが僕を帰還させる。


「危なかった。それにしてもあの緊急回避は素晴らしかった。あれがなければ…」


 前にも一度回避を褒められた気がするのだが、そんなにすごいのか、僕の回避って。一度見てみたい。


「しかし、面倒なことになってしまったな。WHIとは…」


 サウナさんは呟きながら、要人を集め会議を開いた。

 アジェリスからここに来る間の飛行船で習得させられた【猫だまし】がここで役に立つとは。ハルさんにも感謝だ。

 しかも苦しい訓練に耐えたおかげで「鍛錬」という、プラス効果を得ることができたし。

 心残りは、ヒバナさんの質問内容と、答えを聞くことなく矢を向けてきたメナミさんの行動だ。

最後までお読みいただきありがとうございます!


しばらくはネタ要素の少ない真面目回となりますのでよろしく!


それでは次回もお楽しみに!

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