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なんというか、なん言うのか…と、尊し。

なんか魔女が来て謝った。

リサラスまではノンストップで2日ほどかかった。その間僕はハルさんに戦い方を教えてもらった。(なんとこの飛行船には鍛錬場という、有り体にいえばジムも入っていた)

こう見えても僕は、一応冒険者認定されているのだ・・・多分。

しかし残念ながら、格闘家という、僕には到底似つかわしくない職種を引いてしまった。結局冒険者になるのなら、初めから勇者を選んでおいた方が良かった気がする。今更そう言ってももう後の祭りか。今頃神は笑っているだろうか。もし、あの神に慈悲があるのならばどうか、今すぐにでも改めて農家にしてください!


いくら嘆けど現実は変わらない。僕は今後格闘家として自分の体を相手にぶつけなければならない。その上、超接近戦を強いられるのだ。だからまずは恐怖を克服するため、メンタルトレーニングを重ねた。ハルさんの幻影術で相手が創造された。それはそれは自ずと戦く尾の長い怪物だった。言葉にする事すらおぞましい、様々な動物の複合物の様相のそれは、しばらく僕のトラウマになりそうだ。あえて言うのならば鵺をぬえぬえ(?)した感じだ。


さて、そんな苦痛の日々を送りながらリサラスの領空に入った頃、そこはまるで僕らの入国を拒むかのような大嵐だった。轟々と風が吹く度に機体が大きく揺れる。幸い全てが魔力により構築されているため、例え機体に穴が開こうが墜落の危険はないという。当然その他の点では問題は大ありだが。


着陸体制に入り、機体の高度が下がるにつれ期待と不安との挟み込みが力強くなっていく。なにせ相手は人間嫌いの魔女──しかもハルさんの友人。いくら僕がハルさんに抱えられているとはいえ、下手な真似をしたら殺られるかもしれない。慎重に行動する必要がありそうだ。


暫くして飛行船は広々とした草原に着陸した。荒れた天候の中、幾人かの魔道士が整然と並んで僕らが降りてくるのを待っている。その中央、艶やかな黒髪を眉の下あたりで切りそろた、ツインテールの魔女は、ハルさんとは対照的に色々と控えめなせいで、どことなく幼くみえる。ハルさんとその少女は握手をし、言葉を交わす。そんな二人の接し方を見る限り、どうやら彼女がハルさんの友人のようだ。


「この度は急な要請にも関わらず、ご来援頂き感謝する。ハルとその召使いさん。今宵は宴の席を設けておりますのでどうぞこちらへ」


そう言ったツインテロリ魔女さんの後に続いていくと、彼女の周りにいた魔導師たちが、次々に頭を下げるのだが、このような歓迎をされたことがないので気まずく思いながらも通り抜ける。そんな中突然の背後からの強風に押され、あわや彼女に触れそうになった。すると一瞬にし、背後から幾本もの鋭い視線が突き刺さるような気がした。どうやら一歩でも踏み違えれば命を落としかねないほどの監視体制をはられているようだ。


草原を抜けしばらく歩いた後に、街中に入った。リサラスはアジェリスとは異なり、木造建築の建物が整然と並んでいる。道幅も狭いところが多く、何となく日本が想起される。


ひとつ大きな大通りの一角、軽く万平米は超えるだろうか、広大な敷地を有する木造建築の白い壁に瓦葺(かわらぶ)きという屋敷に僕らは連れられた。その屋敷の門をくぐるや左手には、滝が落ち、川が流れ、橋のかかる池が新緑に囲われていた。

僕らはこの庭がよく見える宴会場に通された。天気こそ生憎ではあるが、それでも文明の進歩という波に揉まれ忘れていた風流心を思い起こすには十分な光景だ。


さて、豪勢な食事を目の前にお預けを喰らう犬が如く、気が抜ければ舌をだらしなく垂らすといった醜態を晒す手前で今の窮状に意識を割く。社会で生活していく中で僕が最も苦手意識を持っている行為。そう自己紹介。しかも大勢(十数人)の前でだ。なるほどこの豪華な食事は最後の晩餐とでもいうのか。


こほんと催促の咳払いを受け、浮かびつつある単語を何とか紡ぎ出す。しかし発された言葉はまるで僕の存在と同化していくようだった。ほんとどうかしてるぜ・・・。


一通り挨拶が終わりいよいよ「待て」が解かれる。並んでいる料理はどれも見たことないものだが、全てが妙味だった。魚から肉、野菜。素材に対して素朴な味付け。それが良かった。


ある程度料理を堪能したところでハルさんのもとにロリツインテペタタン魔女ことサウナさんがやってきた。名前こそ暖かそうだがここまでの印象、むしろ対極、と言うよりはまさに感情零度と言った感じだ。

ところが今現れた彼女はどうか。顔は赤く、目はとろんと落ち、おぼつかない足取りでハルさんに近づき甘え始めたでは無いか!なんというか、なん言うのか…と、尊し。


それから再会をは果たした二人の話を聞いている(僕はお得意のコミュ障スキルを発動しているので聞き専)と、サウナさんがこちらを向いて話しかけてきた。


「たしかあなたは人間だったわね?」


彼女のその暖かな声色の一言は、重い砲弾のように、鋭い槍のように僕を襲った。一挙に場が凍り、誰しもが彼女の次の言葉を待っている。


「ハルるんから聞いているとは思うけど、私人間が嫌いなの。だから・・・、もしかしたらあなたを情緒的に殺しちゃうかも☆」


さらりと恐ろしいことを言う。彼女からの視線、口調から察するに本心なのだろう。彼女のファーストインプレッションはおろか、今後彼女に対する味方が一変した。化けの皮が剥がれたのだ。


「だけれど・・・」彼女はそう言いながら、手に持っていたグラスを緩やかに回し、一口飲むとそれを僕に渡してきた。ぶどうの芳醇な香りが鼻をくすぐる。


「このワインを飲むことが出来たら、あなたに一切の危害を与えないことを盟約するわ」


試すような笑みを浮かべこちらを見つめる。それは僕がアルコールに弱いと見切ってのことなのか、或いは・・・。戸惑いを隠せず、ワインの入ったグラスと彼女の方とを何往復も目をやる。深紅色は血の契約か、擬似接吻の契約か。様々な感情が場を覆う。対面からの挑発する期待。二方からの嫉妬する殺気。そして隣の静かな揺らめき。

飲むも飲まずも終着は死か。たしかに飲まずは延命の可能性もある。飲まなかったからいって、その場で死ぬわけはなかろうて。いくら人ならざるものと言えども、それほどには無情になれないだろう。

だが、飲むはほぼ確実に終わりな気がする。

そうは言っても、僕だって曲がりなりにも一人の男だ。女性からの──しかも傾国の幼女と言っても過言ではない人、自らの意思でこれを差し出しできたのだ。

一息ついて生唾を飲み込む。もし、このグラスに唇をつけたとして、サウナさん御親兵の方々からどんな処遇を負おうとも官能的な気分に浸れるのならそれも一興。

意を決して、大人の男らしくグラスを回してみる。どういう訳か先程より甘い香りが増しているように思われる。目を閉じ無を感じる。そのままグラスを口元へ・・・


どれほどグラスを口に近づけようとも触れる気配はなく、遂には自らの手にキスをしてしまった。目を開けると当然手元にグラスはなく、指でできた輪っかから鮮やかな紅色を覗く。あぁ、僕の頬の色も吸い取ってはくれないだろうか。


僕の心を弄んだ()クガ()()()はこの後味の悪い空間を生み出した張本人の元へ返されていた。おあ()がよろしいようで。・・・。


ところがどうだろうか、サウナさんの様子が異様な感じがする。ハルさんの方を恨めしそうに見つめていた。一方ハルさんは動じることなくスンとしていた。


そしてサウナさんが一息つくと、


「今回はどうやらダメそうだけれど、私はあなたが好きよ。今度は二人で…しましょ」


その一言で僕への視線は一層冷たくなり、そしてより厳重に監視されるようになったのであった。



ただこれからは以前と同じような頻度になると思います。出来る限り、一か月に二回あるいはそれ以上をめざして頑張りますので、これからもよろしくお願いします。


それでは次回もお楽しみに!!

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