まさかまさかのオトコの娘!?
なんか色々と慌ただしかった。
さて、僕とハルさんとが共に行動する理由はわかる。彼女には借りがあるからだ。そのために僕は彼に付き従う。しかし、あの悪徳商人(仮)(変態)に関しては説明がつかない。ところで僕が彼に初めて会った時に依頼された件についてはなおざりになってしまった。いや待てよ、そもそも僕はお金借りる条件で彼と口約束をした。だが手元に金はない。それならば僕が彼の言いなりになる必要は無い。つまりこれにて契約終了ということだ!
「それにしても君はなぜ毎回私の元を訪ねるのだい?私は君のことが嫌いだ。金輪際関わるなと前回出会ったときにいっていたはずだが?」
彼女の言葉には怒りと嫌悪と、そしてほんの少しばかりの愛があった気がした。やはりこの2人は知り合いだ。初めて僕が2人と同時に接した時に感じていた違和感が今確信へと変わっていく。
「今回はたまたまさ。本当はこの少年を介して君と交渉、いや、一方的に素材を獲得するつもりだったが不慮の出来事続きでな」
2人は一体どういう関係なのだろうか。愛人か恋人か夫婦か、倦怠期の夫婦か。本当は仲良くしたいのに突っぱねてしまう彼女と、手段を選ばず彼女を手に入れたい彼氏?凹と凸がハマりそうでハマらない感じ?
「恋人ね〜。俺はそれでいいけど、その場合どっちが男役かね?それより俺の渾身の告白は受けっとてくれるかな?」
僕の返答より先に、結果など分かりきっているけれど、と消え入りそうな声で言った。そして僕に答える隙を与えるより先に
「さて、俺はそろそろ行くよ。君らに迷惑をかけるつもりは無いからね。またどこかで・・・」
彼と言うべきか彼女と言うべきか分からないが、悪徳商人(良い奴)とか言う矛盾に溢れた存在は飛行船から飛び降りた。空に一筋の置き手紙を残して。
そこには「君が俺以上に愛しているやつが来ると聞いた」と書かれていたように見える。あっという間に消えてしまったが。
それを見たハルさんは呆れ悲しんでいるように思えた。
「あぁ行っちゃった。ライラくんは彼と何かしらの契約を交わしたのだろう?可哀想に・・・」
彼女が何を言いたいのか分からなかった。ただただ哀れまれた。
「あの人タケシって言うんだけど、世界を股に掛ける大悪党なんだよね」
ちょっと待て。たった一文にツッコミどころ満載なんだが。まず名前!いくらなんでもこっち風がすぎるだろう。って、おい!どんなルビの振り方だよ。
それはさておき悪党をもって世界に名をあげるな!あれ?さっき女の子みたいな匂わせしてなかったけ?まさかまさかのオトコの娘!?
「さて、厄介が厄介を呼ぶ前に次なる目的地へと向かいましょうか。次行くのは・・・」
大悪党タケシが残した分には厄介とは書かれていなかったと思うが、僕の記憶違いだっただろうか。いずれにせよ彼女が言い切るより先にその人が来てしまった。
「ハロー、ヒーリアス・トゥルーゼ・シャルオルド・ジーアリス・エルジオード・ハル!」
すげー、ハルさんのフルネーム(僕は忘れてしまったので正しいか分からないが)を噛まずにそれで言っていやがる!こいつ・・・何者だ。
「なーに、私のフルネーム言えただけで強者感出してるの。こいつはそれほどでもない」
厄介者だと言うだけあって、ハルさんのその人に対するあたりは200K位だ。
姓名しかない日本人からした三文節以上の名前は複雑でしかない。いや、短ければ多少の音節の追加は認めよう。一言断っておくが、僕はクラスメイトの大半において名の方を覚えていたことは無い。姓さえわかっていれば我が国ではさほど問題でないのだ。少集団の中ではな。つまり何が言いたいか。人の名前を完璧に覚えているだけで十二分に強者だ!
そのもう1人の魔女はハルさんの「どうしてここに来た」という問いに対し、
「親愛なる君が旅立つと聞いてはなむけをしににたのだよ。急な話だったのでね、大したものは用意できなかったが受け取ってくれ」
そう言うと腰に着けたポーチから小さな欠片を取り出すと、周囲を確認してからそれを地面に強くたたきつけた。「少し離れて」と、忠告の後欠片が膨張を始め瞬く間に一般的な棺桶と同等サイズのビニールハウスが現れた。
「これは私特製の一点物だから大事に扱ってよね。使い方は・・・まぁ、頑張って。それじゃ、もう時間だから。今度あった時、感想聞かせてトゥルーゼ」
一難去ってまた一難が去った。慌ただしさのあまり行く末を忘れていたが、難はこれから対処しきれないほどにやってきそうだ。
それにしてもハルさんの言うところの厄介ってやつは、僕の想像以上に広義のようだ。たとえそうだとしても2人目に関しては手土産までくれて善人の中の善人のように思えたが。
「ライラくん。一を聞いて十を知ろうとしない方がいい。付け焼刃の知識ほど自分に刃を向けるものは無い」
確かにハルさんの言うことは正しい。生兵法は大怪我のもとという言葉があるくらいだ。よくよく思い返してみればタケシとかいう商人と言い、先程来た人と言い素性を隠していた人が多い。特に記憶力長者の顔は八重棚雲に隠れるかのように曖昧模糊としていた。なんにせよハルさんの知り合いには訳ありが多いのだろう。「さてと」と、僕の思考をぶった斬るかたちで言い、改めてこちらを振り返った。そして、
「次は私の知り合いの元へ行く。応援を頼まれた」
と、今までのふたりへの感情とは異に、弾むような口調で言った。何となく彼らへの対応を鑑みると「孤高こそ崇高」などと僕と似たような思考を持っていると勝手に思い込んでいたが、友人の一人くらいはいるようだ。おおかた僕に心配される筋合いはないだろうが。誰が友達少ないって!僕の心中を知ってか知らずか「だが」と逆説の接続詞をおき、暫く間を開ける。
もはやそこで会話を終わらせたのかと思うほど次の言葉が続けられなかったのでいよいよ耐えかねて、貧乏揺すりを開始しようとしたその時、折りよく彼女が空前の笑顔を顔に張りつけ言い放った。
「実はその子、人間が大嫌いなんだよね」
語尾には隣の芝が青すぎてむしろ手入れを心配になってしまうほどに草が生い茂っていた。
最後までお読みいただき有難うございます!
この物語の登場する人々はどうも出演時間が短いようで・・・。これがのちのち何かしらの伏線になるのかも分かりませんw
それと相も変わらず戦闘シーンがない。苦手なんですよね〜、勢いのある描写。でも、頑張ります。
それでは次回もお楽しみに!




