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第85話 ■■■伝:What did in different world "■■■" ?

 とある日の満月家の夜。チヨは自分の書斎にいた。

 社長として、たまりにたまった名刺をファイリングしていた。


「あ、これは……」


 途中、チヨは懐かしい名刺を見つけた。

 娘たち六人を異世界に転生させ、約九年の月日を経て、こちらに帰還させた『異世界転生管理局』の者の名刺だ。


「今は八月だから、もうそろそろ一年になるのかぁ……そういえばこの人たち、よーくよーく考えれば全くして謎だなぁ」


 チヨはその名刺を見て、少しばかり管理局のことを考えた。

 そしてバカバカしくなってファイリングに戻る。



 ファンタッフェ――様々な種族が同じ世界で共に生きる、ファンタジーな異世界の名だ。

 そこは『かつて』、突如として力をつけた人間族が、異種族を支配しようと傍若無人なふるまいを行っていた。


 そしてそこに、一人の少年が送られて『いた』。


「おいそこからそこまでの奴、さっさと料理作れ!」


 少年は、無駄に豪華絢爛な玉座に座っていた。

 その上、少年は周りにエルフやドワーフ、獣人、種族様々な美(少)女十数人を傍においている。


 彼の名前は『和時かずとき天華てんか』。

 数年前にこの異世界に転生し、神に与えられた力を利用し、人間たちの支配から異種族を守った。その後、この世界の王、あるいは絶対神的な存在として君臨した者である。


「おい、そこの隅っこの掃除をしたのはどこのどいつだ!?」


「はい、私です!」

 召使いの一人のエルフの男が天華の問いに答えた。

 

 その直後、

「なら、死ね!」

 天華はエルフの男に、謎の力で輝く槍をぶん投げ、刺殺した。


「ったく、使えねーやつはこうやってどんどん処分していかねーと、折角の俺様の城がどんど汚くなっちまう。あ、誰かこいつの血と死体、掃除しといて」


 天華に付き添う美少女の一人が言う。


「そのような乱暴な振る舞いを続けて、はたして大丈夫なのでしょうか? この前も『天の使い』とやらが、天華様に襲いかかって来ましたが?」


「知るか! 俺様はこの国の王だ! なんならどんどん使いをよこしてこい、主自らかかってこい! 俺様が神から貰った力でそいつらみぃんな鏖てやる! 俺様は神をも超えるからよ!」

 天華は玉座の間で堂々言い放ち、思い切り高笑った。


 同時刻、天華が支配する城下街に四人の少女が訪れた。


 マゼンタ色の髪に青ざめた白い肌の少女は、辺りを見渡して言う。

「はえー、どこもかしこも人、人、人。あと兵隊、兵隊、兵隊。

 そうとう栄華を極めてるっスね……えっと、イバラちゃん、手配書読み上げるっス」


 イバラ――と呼ばれた黄緑色の髪の四人の内一番小柄な少女は、一枚書類を取り出して読み上げる。

「……なまえ、かずときてんか……ざいじょう、とうきょくのきかんめいれいをむしし、かつ、さいそくのとくしをるいけいじゅうはちにんさつがい……たいしょじこう、とうにん、かんけいしゃとわず、せいしととわず……」


 四人の内群を抜いて容姿端麗な、青緑色の髪の少女は言う。

「催促の特使を十八人殺害か……これは関係者諸々生死不問で対処しても致し方ないでしょう」


 黒い鎧を纏った群青髪の少女は言う。

「今宵の標的の悪行、しかとやつがれが記憶に刻み込んだ。して、如何なる謀略を以て逆賊を屠ろうか? ワノ殿」


 ワノ――、そう呼ばれたマゼンタ髪の少女は、即、その答えを叫ぶ。

「決まってるッスよぉッ! 依頼通り敵対者全員ブッ潰すだけっス!」


 正体不明の超次元的団体『異世界転生管理局』の務めは、発展済みの異世界から人材を派遣し、『発展途上の異世界の救済』をすること。


 なので、ある程度派遣先の異世界が発展すれば、派遣した人材は直ちに帰還させるのがルールだ。


 しかし時折、ルールに従わず異世界にとどまり続け、傍若無人の振る舞いをする『反逆者』がいる。


 その対策として管理局は、派遣先の異世界を目標まで発展させたに値する実力ある転生者を招集し、彼らに『反逆者を一定の数取り締まればまた異世界に戻して活動させてあげる』とノルマを課し、反逆者の処罰を行わせている。


「た、大変です! 天華様! 城下街で謎の四人の少女がこちら目指して攻撃活動を起こしています!」


 天華は剥いたばかりのミカンの皮を伝令に投げつけ、かったるく玉座に頬杖を突き、

「また天の使いが来たか。この手口の荒さ、相当あちら側は俺様をここから引き剥がしたいってわけか! 配下共! 全員徹底抗戦しろ!」


 そして、先程この世界に訪れた四人は、反逆者への断罪者であり、


「悪逆無道の衆よ! 死神の名の下に、断罪賜われ!」

「さぁ、今日も出血大サービスで行くっスよぉ!」

「……ころす……じゃまもの……ターゲット……いやなやつぜんぶころす……」

「では頑張るか……俺たちが前いた、『やり残し』がある世界に戻るために」


 蒙昧な反逆者をずば抜けた戦闘力で啓蒙するユニット、『イルミネーターズ』と呼ばれている。



 反乱の報を受けてから、天華は大量の兵力をイルミネーターズに送りつけた。

 しかし前述の通り四人は猛者中の猛者。その兵力は、斬殺、轢殺、射殺、感電死、エトセトラ……様々な方法で散っていく。


 そしてとうとうイルミネーターズは天華がいる王城へと侵入した。


 これを知るや否、天華は大焦りして、

「くっそ、とうとう俺様の城に! きったない土足で! ええい、こうなりゃしかたない! キルシア、ウィーナ、クラフニカ! 頼む! 奴らを止めてくれ!」


「「「はい、わかりました!」」」

 自分の嫁の中でも特に強い三人へ、出撃命令を下した。


 一方その頃、イルミネーターズは、

「よっし、王城潜入成功っスね!

 じゃあここからは狭い屋内での行動なんで、玉突き事故みたいにならないよう、別行動で行くっス!

 恐らくメインターゲットは一番上にいると思うっスから、なるべく上を目指して行ってくださいっス!」


「了解した」

「……わかった……」

「畏まった」


 ワノの一言により、別々に王城内を進む事に決め、その通りに個々別ルートへ行った。



「……来ましたわね。天華様に楯突く愚か者が」


 沢山の白騎士を連れた、白銀の鎧を纏う、凛としたエルフの女騎士――天華騎士団長、キルシア。

 彼女はイルミネーターズの一人――群青色の髪の黒鎧の少女と対峙した。


「愚か者――今宵はそう呼ばれるのがやつがれの運命だろうな……」


「それを理解しているのなら、とっととお引取りくださいまし。ないしは、このキルシアの一刀により倒れてください」


「……だが僕は、その運命に叛逆する。僕が、死神ホイプペメギリより死国トードイスムカの鎮護の命を賜った者、ネロア・ルォーナピアナであるが故に! 迅速にそこへ帰り、今一度トードイスムカを守らねばならぬ故に!」


「はぁ、何やら言い方がいちいちくどいので、飲み込むのに一苦労しますが……とりあえず、『退くつもりは更々ない』のですね?」


「それが宿命」


「ならばいいでしょう……皆様、天華様にあだなす愚か者に、正義を振りかざしましょう!」

「「「おおーぅ!」」」


 かくてキルシアとその配下である騎士は、群青色の髪の少女――ネロアに突撃する。


「【モンスターコール・スケルトン5】!」


 対するネロアは、己の周りに騎士達とほぼ同数の忌々しい容貌のスケルトン――【ダムドスケルトン】を召喚。

 自分はキルシアと剣を交え、その他の騎士はスケルトンに任せた。


 一合、ニ合、三合……幾度と剣をかち合わせても、ネロアとキルシアは互いに傷つかず、傷つけられない。


「天華騎士団長の私と互角に張り合えるとは、お見事です」


「その称賛、僕は敬意という名の心の庫に収蔵しよう。だが、この称賛を送ったことに、後悔はあるまいな?」


「?」


「死神ホイプペメギリより賜った力を今宵、貴様らに味わってもらおう……誉れと思え! 【死神の凶器】!」


 ネロアは剣に禍々しいオーラを纏わせ、剣に括り付けてある紐を利用し、辺り一帯の広範囲をその剣で薙ぐ。

 キルシア達天華騎士団は微かな傷を負う。 対して、ネロアが召喚したスケルトンは一撃死した。


 大掛かりな技を使い、自分の方に被害を与えたネロアに、キルシアはただただ呆れた。

 ――この時、キルシアは考えもしなかった。このような何かを犠牲にして、何かを得るのは、よくある話だと。


「危ない、姫様!」


 キルシアの前に、一人の騎士が飛び出す。そしてその騎士に、剣型の霊魂が突き刺さり、彼は徐々に凍り始める。

 剣型の霊魂は他にも存在し、全てキルシアの騎士に突き刺さる。

 そしてある者は身体より烈火を放ち、ある者は激しく突風に飲まれ、ある者は微塵にも動けなくなる。地獄絵図があっという間に出来上がった。


 ネロアが呼び出したのは【死神の凶器】――一定時間武器に確率即死効果をエンチャントし、これで死んだ者は、食らった相手をえげつない状態異常にする計七種の霊魂をドロップする。

 死が新たな死を呼ぶ……ネロアが前いた異世界『アンド・ロジスティクス』で得たスキルだ。


「み、み、みんな!?」

 この壮絶な光景に、死に体の味方を気配る。自分の構えなど二の次だった。


 この隙をネロアは逃さず、

「【禍根の楔】!」彼女は闇のオーラを纏わせた剣で、彼女を一閃。


「がはっ……」


 これにて、致命傷を負ったキルシアは力なく地に伏せた。

 そして微かな声で、こうつぶやく。


「天華様……ありがとうございました……そして、申し訳あ……」


 ネロアは彼女の去り際を、物悲しげな目で見て、目的のため先に進んだ。



「……なにここ……ひろい……」


 イルミネーターズの一人、イバラは不自然に広く、そしてガランとした空間についた。


「お、きたきた! ようやくアタシの出番だー!」


 何者かの声がするや否、イバラは両手に銃を握り、周りに目と配る。


「やだなぁ。フツーに前にいるよ、キミ!」

 と、イバラの正面に立つ、天真爛漫なドワーフの幼女――天華騎兵団長、クラフニカが言う。


「やっほー、クラフニカだよー! キミはなんて言うのかなー!?」


 イバラは二丁の銃をクラフニカに向けながら、

「……イバライャ・マヒナピハ、りゃくしてイバラ……で、わたしになにするき……きみ……」


「えー、そりゃ決まってるじゃん。アタシの天華様に歯向かった人にはー……」


 クラフニカは指を鳴らした直後。ゴゴゴゴ、と不穏な音がこの広い部屋にこだまする。

 何か嫌な予感がする。と、思ったイバラは、軽やかに背後に跳びつつ、ついでにクラフニカに弾丸を二発送る。

 刹那、イバラがいた地点には巨大な金色の剣が振り落とされ、弾丸は巨大な銀色の盾で防がれた。


「……もちろん、徹底的にぶっ潰すよ!」

 そしてイバラは見た。クラフニカの両脇に、両腕が剣の金色のロボットと、両腕が盾の銀色のロボットが着地したことを。


「それ……何?」


「金ピカの方が『ゴールドセイバー』、何でも叩き切っちゃうよ!

 銀ピカの方が『シルバーセイバー』、何でも弾き防いじゃうよ!

 どう、アタシ、すごいでしょ!? こんな凄いロボット発明できちゃうなんて!」


 イバラは直球に言う。

「……ぜんぜんすごくない……」


「え、何で?」


「……だって……わたしにこうげきしたから……つまり、わたしのことがきらいだとおもってるから……だから、しんで……」


 イバラは両手に握った銃を、腰のホルスターに戻す。

 腰から両手を突き出すとともに、妖しく光る黄緑色の茨を伸ばし、茨の先をクラフニカのロボットニ機に侵入させる。


 するとロボット二機は、突如として開発者であり主であるクラフニカに襲いかかった。


「あれ! 何で! おかしい!? コントロールが利かない!?」


 イバラが持つ一本の茨――アーティファクト【意志を残すイバラ】は、片先が侵入した非人間の物質を、イバラの思うがままに操ることが出来る。

 これがイバラが前にいた異世界『ギャングェイジ』で得た力である。


 これによりロボット二機はイバラに操作権を奪われ、マスターを襲っているのだ。


「た、助けてー! やだよー! 自分の発明で死ぬなんて! 恥ずかしいったらありゃしないし、天華様に申し訳な……」


「うるさい、はやくしね」


 イバラは雑にロボット二機をクラフニカめがけ、文字通り倒す。

 破砕音が轟いた後、またこの空間に静寂が訪れた時、イバラは先へと駆け出した。



「何やら悠然と構えていますな……」


 イルミネーターズの一人である、青緑色の髪の容姿端麗な少女は、大人びた猫耳の女性と出会う。


「運の尽きねぇお綺麗な方。この天華魔術師団長、ウィーナと出会うなんてぇ……ところで、お名前は?」


「松永充」


「充ちゃんねぇ……その顔と体だったら、きっと天華様に気に入って貰えると思うわ。

 け、ど、あいにく来る方法が残念すぎるから、私、あなたを推薦出来ないわぁ、ごめんねぇ」


「……無駄話はこれくらいにして、さっさと始めてくれませんか。さもなくば、思い切り痛くして黙らせる」


 ジョークが通じないつまらない女の子ね。と、目で言いながら、ウィーナは杖を手に取り、それに魔力を注ぎ、

「わかった。始めるわ……【ファイア・ミサイル】」

 即、何十発もの火弾を、物凄い速さで発射する。


「ふんっ!」

 対して、充は同じ数の雷球を放ち、それを打ち消す。


「へぇ、雷の魔法が得意なのねぇ! けど、アタシは魔法全般大得意なのよ! 【ファイア・ミサイル】、【ウォーター・ミサイル】、【アース・ミサイル】、【ウィンド・ミサイル】!」

 ウィーナは再び杖に力を注ぎ、地水火風の弾を無数に放つ。

 充はそれだけの雷球を放ち、相殺を目論むも、威力も弾数もあちらが若干上。防ぎきれなかった弾をいくつか受けてしまい、片膝を突く。


「どう、十分にわかってくれたかしら、アタシの魔法の強さは?」


「ああ、十分にわかりましたとも……」


「ありがとう、じゃあもっとアタシの魔法をくれてやるわ!」


 ウィーナは三度杖に魔力を注ぎ、


「故に見せて差し上げましょう。俺の【世戎】を!」


 充は床を強く殴り、辺りをピリッとさせる。


(さぁ、たっぷり受け取りなさい! 【エレメント・ミサイル】!)


 こう心の中で言ったウィーナは、何の意味もなく杖を充に突き出す。


(あれ、おかしい。声が出ない! 魔法が詠唱出来ない!)


 声が出ず、魔法が出せず、あたふたするウィーナを見て、充は言う。


「今、声が出ない! 魔法が詠唱できない! とでも思ったか? はぁ、どこの異世界に行っても、無言で魔法を使える人はそうそういないから、【沈黙の世戒】が役に立つったらありゃしない」


 計十種の、発動地点を中心とした一定範囲内にルール【世戎】を課せる。それが松永充が前いた異世界『カンナギイヤサカ』で、悪魔にして古の雷神たる【バアル】より力を賜った能力である。


「この【沈黙の世戎】は、半径八メートル以内の音を消し、発せなくする効果を持つ。

 もちろん今こうして話せている、その発動者たる俺は例外だ」


(だから声が出せないのね! なら……)


 ウィーナは背を向け充から距離を取る。【沈黙の世戎】から逃れるためなのは火を見るより明らか。


「そんな甘い行動は俺の予想内だ」


 何度もテレビで再放送される映画のストーリーのように、充はウィーナの逃走を知っていた。

 だから迅雷が如くウィーナに駆け、その後首を情けを掛けず、稲妻を帯びた脚で強く蹴りつけた。


(がっ……ごめんね……天華……)


「……さて、本当の無駄話はこれくらいにして、とっとと対象を始末するとしよ」


 そして充はウィーナの屍を踏み越えて、先を急いだ。




 豪華な装飾の扉が、無慈悲に蹴って破られる。


 直後、この玉座の間の主にして、今回のイルミネーターズのターゲット――天華は言う。

「ついに来たか! 忌々しい異世界転生管理局の連中め!」


 ネロア、イバラ、充は、悠々と天華の前に姿を見せる。


 ネロアは剣を構えながら言う。

「忌々しい? 戯言をのたまうな。これまでやつがれたちの同胞を屠り、この異世界で酒池肉林乱暴狼藉を享受する貴様の方が忌々しい」


 充は両腕より電気をバチバチ放ちながら言う。

「ここに来るまで俺はしかと見てきた。貴様がこの城中で贅沢している傍ら、城外では民草を虐げているのをね。

 手配書によれば、一度は無慈悲な人間から異種族を守った経歴があるそうじゃないか? それが少し時を置けば、それと何ら変わらない豚に成り下がるとは噴飯物だな」


 イバラは二丁拳銃を構えながら言う。

「……で、もうしぬきはできてる……?」


 これまで気づきあげた名声と、自分の誇らしい欲望を全否定され、天華は青筋を立ててキレ散らかす。

「馬鹿を言え! 死ぬのはお前らだ! そして、俺様の栄光はこの神の力がある限り、永遠だ!」


 天華は己の周りに無数の槍を作り出し――これぞ転生時に与えられた、『魔力の限り好きな物体を作り出せる』天華の能力――三人に向けて一斉に放つ。


「さぁ、防げるかなぁ! この圧倒的物量をッ!」


「その言葉、そっくりそのまま返してやるっスよォ! このワノンドロラ・ポルナヤルゥナが!」

 と、三人の前に遅れて現れたマゼンタ髪の色白の少女――ワノは、己の眷属であるコウモリを正面に大量展開する。

 そのコウモリは口にブラックホールを作り、一匹一本ずつ槍を吸い込む。


「なっ、この物量を防ぎきった!?」


「おっとっと、ギリギリセーフ……ゲフン! この程度の物量、アタイにしちゃあ楽に防げるっスよ! けーど、やっぱ防ぐだけじゃあお得感がないっスよねぇ!?」


 槍を吸い込んだコウモリ達は、ワノの意思の元、天華の周囲に半球を描くように配置され、


「さぁ働け、アタイの眷属【チャネルバット】。ワノグループ発展の歯車、とくと魅せてやれっス!」


 コウモリ達は口にブラックホールを作り、先ほど吸い込んだ槍を一斉に発射した。


「ぐはぁぁぁぁぁ!?」


 当然、コウモリが作る半球の中心にいた天華は、自分で作った槍でハリネズミのような姿になった。


 ワノは吸血鬼であり、人間以外の物を出し入れ出来るコウモリ型モンスター【チャネルバット】を眷属とし、大量に飼いならしている。

 ワノがこれを利用した輸送網を用い、前いた異世界『デーシルマルネ』でスーパーマーケット事業で大成功を収めたのは、また別な話。


「うっし、在庫一掃完了! まいど、ありがとうございましたーっス! ふー!」

 と、一息つくワノに、充は一言ぼやく。


「……ワノ殿はいつもおいしい所だけ持っていくよな。俺たち三人は奴の側近と相手して、それなりに苦戦したというのに、ワノ殿は対して消耗したように見えないじゃないか」


「ノンノンノーン! これはアタイの運が強すぎるだけでーっス!」


 イバラはワノに聞こえないよう、超小声でつぶやく。

「……うさんくさい……」


 ネロアはハリネズミ状態の天華を一瞥し、皆に言う。

「なにがともあれ、これにて任務も完了した。それが今宵の僕達の運命の果てだ。なんと僥倖であろうか」


「そうっスね。じゃあそろそろ……あの人が来てもおかしくないっスねぇ」

 

 噂をすれば影とやら、背広姿の男性――異世界転生管理局の断絶者管理部門の担当者が、何の前触れもなく四人の前に現れた。


「……任務対象死亡確認。今回もお手柄です、イルミネーターズの皆様」


「いや〜、こんなのお茶の子さいさいっスよ〜! アタイら四人にとってはねぇ!」


「して、これにて、僕達が前の異世界に帰る運命と、僕達の手の距離はどれだけ縮まった?」


「まだまだですよ。なんせ反逆者はあちこちの異世界にいますから……」


「はぁ!? まだまだっスかぁ? もうかれこれ百三十四人は葬り去ったってのに!? あなた方のノルマってどんだけなんス……」


 担当者はワノの文句を完全に無視して、

「そして! もうあなたたちの次の任務は決まってます」

 たまたま近くにいた充に、次なる手配書を渡した。


「何々、名前は……六人もいるな。罪状は……特に無し。対処事項は『生け捕り』」


「……ころさなくていいの……へんなてはいしょ……」


「待て、特記事項がある。『六人ともこの世界を揺るがしかねない力を持っているかつ、姉妹という名の強固な団結力を持つ。よって万が一彼女たちが悪意に目覚めれば、この世界は崩壊する恐れあり』」


「という訳です。今回の対処事項は生け捕りというぬるい物とはいえ、対象は六人ですから、きっとイルミネーターズのノルマに響くと思いますよ? では一応尋ねます、どうします、受けま……」


 代表してワノは食い気味に答える。

「ええ、受けるっスとも受けるっスとも! アタイは早く異世界に帰って、やることやらなきゃいけないんスから!」


「俺も早く異世界に戻りたい。仲間がきっと帰りを待っているんだ」


「……わたしは……わたしをすきになってくれるひとをみつけられれば……どうでもいい……」


「僕もみんなと同感だ。僕は死神ホイプペメギリの【化神官】として、死国トードイスムカを守らねばならぬ運命がある故に」


「わかりました。では、今回も健闘を祈ります!」


 四人は、担当者が用意した不可思議な輪――異世界と異世界をつなぐワープホールをくぐる。

 そして次なる異世界へ、遥か遠い地へと旅立った。



「それじゃあ、行ってくるぜ!」

「あんまり心配しないでおくれよ。私たちがあっちで何かやらかさないかって」

「無論、自分たちはお土産は絶対いい物を買ってくるからな」

「んじゃ、ウチらはあっちでいっぱい楽しんで来まーす!」

「行ってきます。お母さん」

「うう、しばらくお母さんと会えなくなるなんて……アタシ、寂しくなるのじゃ」


「はーい、行ってらっしゃい。もちろん、楽しんでいってね、修学旅行」


【完】

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