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第84話 話数余り

 夏休みの終わり頃のある日。

「ふんふふーん、今日のあたしは早帰りー」


 いつもより早く退社できたチヨは上機嫌に帰路を歩いていた。


「ただいまー!」


 そして家に帰ると、チヨは元気よくリビングに向かって言った。


「「「「「「おかえり……」」」」」」


 すると奇跡的に『ヒマ』の二字を書くように、ぐだー、と、リビングで横になる六人の娘が、そう元気なく返事した。


「……え、何これ? どうしたの? なんでこんな元気無いの?」


 六人は、チヨに個々の事情を説明する。


 まず、コーリンから、

「単純に部活で疲れた……」


 次に、マジナから、

「何となくムラムラしてないんだよね……賢者タイム突入したっていうか、何というか」


 続いて、サバキから、

「生徒会の仕事も、新聞のパズルもやりきって、やることが無さ過ぎるんだ……」


 そして、ユノスから、

「漫画のネタが思いつかないの……」


 最後に、ルシェヌから、

「シンプルに暑いのじゃ……」


「そう、なるほどなるほど。で、ピコリはどうして元気ないの?」


 遅れて、ピコリから、

「話数計算ミスったらしい……」


「話数……計算?」


「ここで一つ解説を入れる人、お願いしまーす」


 ここで一つ解説を入れるとしよう。

 本作『六人の娘が異世界から帰ってくるだけの話 ――When in different world do as the different worldns do――』の作者、都Pは、第86話から満月姉妹が修学旅行に行く話をお送りする予定だった。

 しかし、だいたい『第82話 完全休暇、魔王様、ボウガイ!』を書いてる頃から、それまでに繋ぐための話のネタが尽きてしまっていた。

 それでもどうにかその第82話、第83話を絞り出したのだが、とうとう限界の限界が来てしまい、結果満月姉妹をダラダラさせてしまっているのだ。体たらくなのもいいところである。


 チヨはふと疑問に思う。

「あれ? 今ここって第84話だよね? なら第85話の方も危うくない?」


 その疑問にピコリが答える。

「メタいこと言うね、母さん。どうやら作者の奴、第85話は修学旅行行く以外で何するか、もう考えてあるらしいよ……はぁ、じゃあその勢いで今回分の話も考えればいいのに」


 そして六人は引き続きダラダラした。


 この娘達の腑抜けっぷりに、チヨはカチンとくる。

「……みんな! せっかくの夏休みをこんな形で過ごしていいの!? もっと夏と休みを満喫しようよ! ほら、海行くとかさ!?」


 ピコリは言う。

「だからさっきの解説通り、ニ話後に修学旅行行くから、そういう旅行行けないらしいよ。

 ちなみにウチらの作者、一回は水着回としてウチらを海に行かせようとした。けどどう考えても卑猥な話しか思いつかなくて、もう二度とサイトの運営様にお咎め食らいたくないからやめたらしいよ。

 あと、六人分の水着デザイン思いつかないのと、イラストレーターがつかないから、様にならないっていうのと、作中舞台が何県だか決めてないから海に行きづらいってのもあるよ」


 さらにコーリンが言う。

「あと単純に疲れて、泳ぐのもつらいんだけどオレ……」


 チヨはコーリンにペコリと一礼する。

「ああ、それはごめんね……けど、せめて何かしようよ。何か、面白いこと! 例えばガールズトークとか!」


 マジナはコーリンに言う。

「ガールズトーク? ああ、そういえば姉御、カップ焼きそばってあるよね? あれどうして焼いてないのに『焼きそば』って付いてるんだろうね?」


 コーリンはマジナにこう返す。

「確かにそうだなぁ……あれ焼かないで、お湯に入れてるだけだよな? よくよく考えたら詐欺じゃねえか、あれ」


 今度はルシェヌがユノスに尋ねる。

「おーいユノス、このアタシにオーガニックの意味を教えてくれなのじゃ」


 ユノスは答える。

「添加物を入れてない物のことだよ」


「テンカブツ? それは何なのじゃ?」


「食べ物に色つけたり、長持ちさせたりするための薬のことだよ」


「なるほどなるほどなのじゃ。で、最近あちらこちらでオーガニックオーガニック言われてるのはどういうことなのじゃて?」


「その添加物が健康とか環境に良くない可能性があったりす……」


 チヨは六人の会話を遮る。

「ガールズトークってそういう感じの物じゃないでしょ!? ねぇ、もっと面白いことしてよ!」


 それを聞いて、ピコリは投げやりに思いつく。

「……じゃあサバキ、とりあえず漫才しようか?」


「はぁ? 漫才!? それも自分とピコリが!? 何で!?」


「漫才使って中身がある文字数稼ぎして、親愛なる読者の皆様にこの回が捨て回に見られないようにするためだよ! で、この人選は、ウチとまともな漫才出来そうなのがサバキ姉さんだからだよ」


「捨て回!? ……何が何だかイマイチわからないが、やらなきゃダメか?」


 チヨは言う。

「あたしちょっと見てみたいかも、サバキとピコリの漫才」


 サバキはゆっくりと起き上がり、

「……わかった、じゃあピコリ。その漫才とやらは、どうすればいいか教えてくれ」


「ガッテン承知の助!」


 五分後。


「どうもどうも〜、サバピコズの満月ピコリで〜す」

「同じくピコサバズの満月サバキです!」


 サバキとピコリはいかにもそれらしく、チヨと他四人の姉妹の前に登場し、漫才を始める。


「いや〜サバキさん、ウチのオカンがね、好きな作品が思い出せないっていうねん」


「ほう、そうか。ならその特徴教えてみろ? 自分が当ててやる」


「どうやらウチのオカンが言うからには、それ三国志がテーマの作品らしいねん」


「それだけだと情報足らんなぁ? 他に何か言ってなかったか?」


「どうやらオカンが言うには、三国志の武将がタクティカルに敵をバッタバッタ倒す作品ねん」


「そうか、他には?」


「オカンが言うからには、三国志の武将が美少女化して登場してるらしいんやて」


「それなら自分が思ってたのと違うな。他には?」


「オカンが言うからには、主に孫呉中心にストーリーが回ってるらしいんやて」


「それなら自分が思ってたのとは違うな。他には?」


「オカンが言うからには、孫呉の特に、都督っていう偉い武将四人が美少女化して活躍する作品らしいねん」


「それなら自分が思ってたのとは違うな。他には?」


「オカンが言うからには、その美少女化した孫呉の都督四人がVRMMOのNPCとして、懸命にその世界を生きる作品らしいねん」


「それなら自分が思ってたのとは違うな。他には?」


「……あのさぁ、サバキ姉さん。さっきの五分間で聞いてた話の内容、覚えてるの?」


「覚えてるぞ。心当たりの無い情報をよこされたら、『それなら自分が思ってたのとは違うな』って返せと」


「それはそれで覚えて貰って助かるけど! 五分間っていう短い時間であの作品の概略バーっと話したよね! どっちかって言うとそっちを覚えて欲しかったんだけど! それ覚えた上で、ボケツッコミする漫才なんだけど、この漫才のフォーマット!? 

 あと地味なポイントだけど、サバキ姉さん最初の名乗りも間違ってたよ! ウチらのコンビ名、ピコサバズじゃなくてサバピコズだからね!」


「……ピコリ、申し訳ないがな、五分で単行本四冊分(※作者の推定)の作品の内容覚えるのは難しいと思うぞ」


「うそーん! ウチめっちゃ要所かいつまんでサバキ姉さんにあの作品の内容叩き込んだつもりなのにー!」


 この時、チヨと他四姉妹は、この熱意が空回りしているピコリと、堂々とポンコツするサバキのやりとりを見て、クスクス笑う。


「うわ、この漫才ちょっと面白いかも」


「だと母さんが言っているぞ、ピコリ。自分達、よくやったんじゃないか?」


「いや、これ漫才じゃないから母さん! ああもういい、ありがとうございました! 

 ちなみに、親愛なる読者の皆さんへ! ウチは一体何の作品をサバキ姉さんに当てさせようとしたのかは各々覚悟して調べてください!」

 と、言って、ピコリは強引に漫才を終わらせた。


 するとルシェヌが、思い切りサバキとピコリを鼻で笑う。


「ふん、凡ミスでしか人を笑わせられないとは、相変わらずサバキとピコリらしい低次元さじゃのう」


「そちらこそ相変わらず口の利き方が悪すぎるぞ。驕りにもほどがあるぞ」


「驕り? こちらはそんな気更々ないぞい。故に、この魔王ルシェヌが見せてやるのじゃ、真のエンターテインメントという物を!」


 そう言ったルシェヌは、いそいそとテーブルと缶コーラを用意して、

「はいはいどうも~! 最かわマジシャンの満月ルシェヌなのじゃ~! 早速じゃが、今からこの缶コーラを爆発させて見せてやるのじゃ~!」


 ルシェヌは缶コーラに人差し指を向け、それをグルグルさせて、


「えいっ!」


 人差し指を上に向ける。直後、その合図に合わせて、テーブルに置かれたコーラ缶の上部がパカッと開き、中身のコーラが噴水めいて吹き出した。


「「「「「「……」」」」」」


 そして、チヨと他五人の姉妹が黙り込む。


「……なんじゃー!? なんかワーッとか、パチパチとか送らんのかえ!?」


 遅れて、コーリンはコメントする。

「それ、前どっかでやんなかったか!?」


 続いてユノスが言う。

「うん、確かサバキお姉ちゃんが生徒会長の選挙中だかにやってたよね?」


「正確に言うと第72話でやってたよね」


 そしてお母さん――チヨから一言。

「うーん、ちょっとルシェヌには申し訳ないんだけど、そのマジック飽きたんだよね。

 あと、そもそもルシェヌのマジックはタネが別な意味のマジックっていうのも含めてわかってるから反応に困るっていうか……」


「うっそーんなのじゃあ~……おい、コーリン、マジナ、ユノス! 貴様らまだ何もやって無いじゃろ! だからさっさとこっち側に来て、お母さんを笑わせるのじゃ!」


 マジナはルシェヌに言う。

「え!? そういう流れなのこれ?」


「こうなったらこうなるのが、こういう流れなのじゃ! ほら、さっさと三人まとめてでもいいから何かするのじゃ! そして思い切り赤っ恥かけばいいのじゃ!」


 そうルシェヌにワガママを言われたコーリンは、やれやれと思いながら、

「しゃあない、マジナ、ユノス、オレ達もなんかやるぞ」


「えー、いいのかい姉御。ルシェヌなんかに従っちゃって」


「ここはルシェヌ関係ねぇよ。サバキやピコリも、皆を楽しませようとなんかやったんだ! ならオレたちも何かするのが礼儀っていうもんだろ!」


「うん、そうだよね。お姉ちゃんたちも頑張ったんだから、ボク達たちも何かしないとね、コーリンお姉ちゃん、マジナお姉ちゃん」


「そう二人が言うんなら。やらない訳にもいかないかぁ。で、何するの?」


「ショートコントしようよ。ボク、ちょっといいネタ思いついたから」


 数分後。


「やたらと準備時間かかってるな」

 と、サバキがつぶやく。


 それにピコリが反応する。

「そりゃさっきのウチらの惨状見れば、準備時間かけたくなるでしょ。あ、来た」


 ネタ合わせが終わったコーリン、マジナ、ユノスが、チヨと他三人の前に現れ、ユノスが、


「ショートコント、満月家の日常」


 と、言った後、ユノスがイヤホンを装着し、音楽を聞く素振りをする。


 そのユノスの背後で、コーリンがやたらとニタニタ笑いながら、

「ふひひひひ、ピコリの馬鹿め、今日ものんきに音楽なんて聞いてるのじゃあ! 隙ありなのじゃあ!」


 コーリンはユノスの背後から、イヤホンを外す。するとユノスはバタリと倒れて、


「オオゥ! オオゥ! オオゥ!」

 首をおさえて、苦しそうな素振りを見せる。


「ふひひひ! 流石は音楽聞く事以外はな~んにもできないピコリじゃあ! イヤホンを取られてしまえば、もはや貴様は虫の息なのじゃあ!」


「オオゥ! オオゥ! オオゥ!」


 と、ここでマジナがやたらと澄ました顔をして、コーリンの前に現れる。


「貴様、厳粛な自分の前で何やってるんだ? 厳粛な自分は、厳粛なダン……ダン……警察だぞ?」


「オオゥ! オオゥ! オオゥ!」


「ふん、警察など知ったことかなのじゃあ! こちらは魔王じゃぞお! 魔王と警察どっちが偉いか、わかってるのかなのじゃあ? わからんだろうなのじゃなあ!? よって食らえ、『なんたらかんたらビーム』!」


 マジナは首を傾けて、コーリンが放ったという設定のビームを避けるふりをして、


「オオゥ! オオゥ! オオゥ!」


「厳粛に食らえ! 『なんかのローションビーム』!」


 ビームをお返しするふりをする。そしてコーリンは、


「オオゥ! オオゥ! オオゥ!」


「ぐわー、やられたのじゃあー」

 雑に倒れた。


 そしてマジナはユノスのイヤホンを戻す。

「厳粛に大丈夫か? 厳粛なピコリ? 厳粛にまだ、厳粛な息はあるか?」


 だが、時既に遅しであった。

「サバキ姉さん……ウチはもうダメだよ……イヤホン外されて音漏れして、内臓を焼かれたんだぜ……」


「厳粛におい、厳粛にしっかりしろ! 厳粛に死ぬな! 厳粛なピコリぃ!?」


「最後に……姉さんに言い残したいことがある……お葬式のBGMは……ベガスで……」


 ユノスは幸せそうな顔をして、力尽きるふりをした。


「厳粛におい、厳粛に死ぬな、厳粛なピコリ! 厳粛な自分の厳粛なピコリー! 厳粛なピコリー! ……まぁ、どうせピコリの事だから、なんやかんやあってどうにかなるか」


 最後に、三人は揃って立って、

「「「どうも、ありがとうございましたー」」」


 そしてチヨは、三人へ盛大な拍手を送った。


 だが、他の三姉妹は、

「自分、そんなに『厳粛』言ってたか?」


「ウチイヤホン外されたぐらいじゃ死ななないんですけど。あと、なんで死にそうな時の声がアシカみたいなんですか?」


「それとアタシが弱すぎると思うのじゃ! もっと魔王らしく強くするのじゃ!」


 と、自分たちのモノマネにケチをつけた。


「まぁまぁ、あたしは面白かったと思うよ。三人の特徴がよく出てて」


「出てたかこれ?」

「過大解釈がすごいと思うよ」

「アタシはちっとも似てなかったと思うのじゃがな」


「それに、時間もそれなりに潰せたしね」

 と、言ってチヨは壁掛け時計を指さす。その時計はだいたい四時を示していた。


「よし、じゃあそろそろ夕飯の支度でもしようか」


「「「「「「だねー」」」」」」

 かくて六人は文字数稼ぎのネタ見せを終え、各々夜の家事を始めるのだった。


 その中で、ピコリはつぶやく。

「明日は早起きしないと。お友達と朝早くから、ショッピングモール行って、修学旅行の準備する予定あるから」


 それにチヨがツッコむ。

「あれ? それならこの第84話、それネタにして作れば、スムーズに話進んだんじゃないの?」


「あ、それは無理。だってショッピングモールに行く話は第41話でやったから。ネタ被りしちゃうじゃん」


 とにもかくにも、第86話から始まる修学旅行編、ぜひぜひお楽しみください。


【完】

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