第72話 生徒会長、決意の結末
生徒会選挙投票日一週間前の夜。満月家にて。
「えい」
と、ルシェヌが合図を出すと、テーブルに置かれたコーラ缶の上部がパカッと開き、中身のコーラが噴水めいて吹き出した。
このマジックを見たチヨと他五人の姉妹は拍手を送った。
サバキは聞く。
「それが、今日貴様が披露したマジックか?」
「そうなのじゃ! 名前は『缶コーラ爆発マジック』と物騒じゃが、いっつもこんな風に平和なマジックなのじゃ! だから今日みたいに缶の破片が飛び散るなんて、絶対にありえないのじゃ!」
ユノスはルシェヌに尋ねる。
「たまたま失敗したとかじゃないの?」
「アタシは魔王じゃぞ!? そんなショボい失敗する訳ないのじゃ!」
「根拠として言うと弱いね、そのルシェヌの言い分」
サバキはふと思う。
「根拠で思い出した。もし、ルシェヌが本当に缶コーラをあのように爆発させたのなら、こう上のみが開いた形の缶がどこかに残ってるはずだが? ルシェヌ、それは持ってたりしなかったのか?」
「し、知らんのじゃ……急に缶コーラが爆発四散したせいで、そっちに目が行ってなかったのじゃ」
さらに、その時ルシェヌの助手を務めていたピコリも言う。
「ウチも破片一発食らって混乱してた。その後、落ち着いてテーブルの方みたら、やっぱりこういうフタが開いた感じの形の缶は無くなってた」
「ユノスは、見てないか?」
「ボクも見てないよ。アザレアが飛んできた破片をキャッチするために、前に飛び出してきたから」
ユノスのベレー帽からアザレアは出てきて、
「ほら、この通り、マスターのため見事キャッチしました」
手のひらに乗せた、缶コーラの破片を見せた。
「ありがとう。アザレア」
「んー、これ以上大きな缶コーラの破片はない、か。だとすればルシェヌ。申し訳ないがお前の容疑を晴らすことは難しいぞ」
「えー、そんなー! アタシは絶対やってないのじゃー!」
駄々をこねるルシェヌに対して、チヨは言う。
「もうどうにもならないんだから、ここは大人しくしておきましょう。ね、ルシェヌ」
「うう、おかげさまで生徒会長にもなれなかったし……もう最悪なのじゃ!」
翌日。
「どうか、どうか、この高森ミソギに清き一票をお願いいたします!」
「満月サバキに、皆様の厳粛な一票を投じてください!」
ルシェヌの無念の脱落。これにより生徒会選挙は新たな局面へ――ミソギとサバキの一騎討ちになった。
「いいぞ、高森さん!」
「頑張れ、未来の生徒会長、高森さん!」
勝負の行方は、早くもはっきりしていた――投票率一番を走っていたルシェヌが脱落した今、優勢を取ったのは二番のミソギであり、
「よくそのズラ出していられるなサバキ!」
「お前の妹が人傷つけてるんだぞ! なんかすることあるだろう!?」
サバキは、不祥事を起こした妹、ルシェヌの風評被害を食らい、散々に罵声罵倒を浴びせられる。
「それに関しては姉である自分が誠意を込めて謝ります! 本当に、申し訳ございませんでした!」
「謝りゃいいってもんじゃねぇだろうがバカ!」
「もっと誠意込めてその座からおりやがれこのクズ!」
この無茶苦茶な罵声罵倒に、サバキは激昂し、思わず手を出しそうになる。
が、その前に、サバキを罵る者たちに、ミソギが言う。
「そこのみなさん。あまりそういう暴言は良くないと思いますよ。満月サバキさんはしっかり真摯に選挙活動しているだけなのですから。妹さんは妹さん、姉は姉です」
するとさっきまでサバキを罵倒していた人たちは、
「「「す、すみませんでした」」」
と、大いに反省する。それと同時に、
「流石高森さん! 器が大きい!」
「やっぱり今年の生徒会長は高森さんだな、敵対している人にも優しくしてくれるなんて!」
「もうマジ人格者って感じでしょ、これ!」
ミソギは支持者から大いに称賛されるのだった。
*
その日の昼休み、食堂にてサバキとユノス、情報通の青木先輩はテーブルを囲み、昼食兼作戦会議を行っていた。
青木先輩は言う。
「もう高森がブッチぎってるのは……言わなくてもわかるだろ」
ユノスは言う。
「お姉ちゃんには申し訳ないけど、元々お姉ちゃんの公約はみんなから共感が得られなかった上に、ルシェヌの不祥事からの風評被害が重なって、圧倒的不利になってるもんね」
サバキは今朝を思い出して、歯がゆく思う。
「……おまけに、自分が演説を行えば乱暴口な反対者が罵りに来て、それをミソギが賢明に押さえつけ、ミソギはますます評判が良くなる――という悪循環が起こっているからな」
「ユノスの言う通り圧倒的不利だな、これ。して、これからどうするんだサバキ?」
「どうするも何も、自分は選挙活動を続けるつもりだが」
「俺としては、何かもう、これ以上続けても時間と労力の無駄だと思うぞ。だからよ、もう選挙活動は最低限だけして、大人しく高森に勝ちを譲った方が……」
サバキはテーブルに拳を叩きつけて、凄まじい剣幕で青木先輩を睨みつけて、言う。
「自分は是が非でも諦めるつもりはないぞ! このまま高森の思うがままに這いつくばらせられ、ユノスと美術部の面々、それと二人の姉、そして青木先輩の思いを無駄にし、自分の意思を貫き通せないなんて、絶対に御免だ!
確かに自分のわがままは道理に叶っていないかもしれない。だが、折角ここまで、ここまで来たんだ!
ならば最後まであるだけの力を出し切って戦わないのは恥辱の極みだろうが!」
その剣幕に圧倒された青木先輩は、
「お、おうわかった……なら、俺はまだまだ応援するからな」
意を改め、いそいそと弁当を食べ始めた。
「とにかく、何としてでも、高森よりも票を集められるように頑張らねば」
サバキも、気を改め、ガツガツと弁当を食べ始める。
「うん、ボクもサバキお姉ちゃんのために、色々頑張るよ……コーリンお姉ちゃんやマジナ姉ちゃんにも手伝って貰ってさ」
ユノスは片手で何かを軽く握りながら、そうつぶやいた。
*
それからサバキは、あの手この手で票を稼ごうと奮闘した。しかしそれで稼げるのは、自分への厳しい評価と、それをなだめるミソギの好評価ばかり。戦局は一向に変わらなかった。
そんなこんなで、投票日前日を迎えた。
その日もサバキは、全身全霊で選挙活動に勤しんだ。だが、やはりというべきか、彼女とミソギの戦力差は圧倒的で、大した戦果も得られず、帰宅した。
そしてサバキは、帰宅するなり、倒れ込むようにソファーに腰掛け、ひどく大きなため息をついた。
そんな彼女に、コーリンは一声かける。
「よっ、サバキ。なんたら選挙の方は、上手くいってるか?」
「周りの噂は聞いてないのか、対立候補の高森ミソギ一強で、自分のことなんかさっぱりだ」
「確か今お前がやってるのって、この学校で一番偉い奴を決める選挙だろ? その高森ミソギっていうのは、そんだけ偉い奴なのか?」
「らしい、何年もあの学校の生徒会長を歴任している、伝統ある一族の出だからな」
「伝統……いかにもお前が気にしてそうな言葉だ。そういや署名の時聞き忘れたけど、そういうのに歯向かってるってことは、お前なりに何かしら理由があるんだよな?」
「ああ、奴は……どうせコーリン殿に説明しても、こんがらがるだけだから詳しくは言わないが、奴ら高森の一族は小汚いやり口で生徒会長を歴任しているんだ」
「なるほど。で、それを倒そうとお前が出馬した。ってわけか」
「それもある。が、自分は『校内の風紀を取り締まる』という意味合いの、自分でいうのも何だが素晴らしい公約を掲げて、それを実現しようとした。だが……」
「高森の伝統に勝つには全くした力不足だった。ってとこだろ?」
「……ああ、そうだ」
「本当か?」
「本当だ」
相変わらず考えが固い。とでも言いたげな目をして、コーリンはサバキに言う。
「オレは思うぞ。伝統っつーか、経験だったら高森よりもサバキの方がパワーが勝ってるってよ」
「?」
「オレは高森にあったことはないが、何となく空気でわかる。どうせそいつは『名族の伝統』って権力に笠に着るぐらいのことしかないヤツだって。
けどお前は違うだろ。あっちの異世界で断退警察やって、いろんな修羅場を潜り抜けてきた。こっちの世界でも、色々難しかったり、空しくなったりした経験をしてきただろ。
つまりだ、それを使って、高森の高鼻へし折ることは出来ないのか? もっとこう、みんなに共感してもらえるようなこと言ってよ。
お前の口ぶりからしたら大体予想がつくんだが、いつも通り『厳粛』だの『規律』ばっか言ってないでよ」
「自分の今まで経験を利用して……確かに、今まで自分はそれを蔑ろにして、ただ高森への反抗心と、いつもの生真面目ばかり語っていた……
だが、反省が遅すぎた。もはや自分の意地の通し所は、明日、全校生徒を集めてでの『最終演説』しかない……」
「ならその刹那に全力注げよ! お前はピコリみたいにビビりじゃないからわかるだろ、『もう退路は絶たれた』って! マジナとユノスみたいな、お前なりのその他大勢の意思を背負ってるのもあるんだからよ!」
サバキは立ち上がり、コーリンへ向かって頭を深々と下げて、
「コーリン殿、激励、感謝する!」
と、誠実さを込めて彼女へ礼を言った。
「おい、礼を言うのはまだ早いぞ……お前がオレたちに礼を言うのは、お前が生徒会長になってからだ。いいな!」
「了解!」
「よし、じゃあ明日は頑張れよ! オレも、マジナとユノスも、それぞれ応援してるからな!」
かくてコーリンに励まされ、サバキは意気を取り戻したのだった。
(ま、サバキが負けたら負けたで3Pがあるんだけどな……いや、これは縁起でもなさすぎる)
*
翌日、百式高等学校全校生徒は体育館に集められた。そこが生徒会選挙最後の戦場であるが故に。
「……で、あるからして、このわたくし、高森ミソギに清き一票をお願いします」
ミソギの推薦人と、本人の最終演説が終わり、サバキ勢の演説が始まる。
まず、サバキの推薦人、ユノスがステージに立ち、生徒全員に、
「ボクが推薦する、満月サバキさんは、とっても仕事熱心で、何事にも全力でぶつかっていく人です……後は、ご本人の演説で、それを感じ取って、是非、投票をお願いします」
と、手短に演説を終え、マイクをサバキ本人に手渡した。
そしてサバキはマイクを強く握りしめ、みんなに静かに、熱く語りかける。
「自分、満月サバキはこれまで色々な人を見てきました。
ある人は安住を求めていった結果、他人との距離が大きく開いてしまい、孤独に飢えて他人に迷惑をかけるようになりました。
ある人は自分の才能の無さに絶望し、全てを諦めたがために、悪事に手を染めるようになりました。
ある人はほんの少しの人付き合いのつまづきで、周りから忌み嫌われ、学校を転校しなければならなくなりました。
ある人はただ周りを賑やかすための手品に失敗し、周りに大迷惑をかけ、相応の罰を受ける羽目になりました。
人っていうのは、そういうものです。ほんのちょっとした誤りで道が狂いだすのです。
だが自分は思う、その誤りとは、だいたいは本当に『ほんのちょっとした』物なんだと!
だから自分はここに、公約と言えるかどうかは曖昧な物かもしれないことを誓います!
――みんながしくじっても、それが適正に裁かれ、そしてまた正しく楽しく、適度な自由を以て過ごせる学校を作りたいと!
しくじったって別にいい、悪事を働いたっていい! それが後々キッチリと裁かれれば、裁きさえあれば、過度に厳しくしなくてもいいと思うのです!
絵空事を語るような人間が言うのもなんですが、どうか、どうか! この満月サバキに清き一票をお願いします!」
〆に、サバキは全校生徒に、自分の至らなさ故の謝罪と、生徒会長の座への懇願の意を両方ありったけ込めて、深々と頭を下げた。
直後、パチパチ、と、いくらかの拍手が巻き起こった。ただしそれは、先程のミソギの演説後よりも圧倒的に少なく、事務的に聞こえた。
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
しかし、それでもサバキはその拍手をしてくれた人達に精一杯感謝の意を述べながら降壇した。
サバキと入れ替わって、今回の最終演説の司会者が登壇する。
「それでは以上をもちまして、生徒会長立候補者二名の最終演説が終わりました。この後、生徒の皆様は各教室に一旦お帰りいただいて、順番に投票所へ起こしいただきま……」
「と、その前に私にも言いたいことがありまーす!」
「なっ、マジナ殿!? いつの間に!?」
マジナは司会者が持っていたマイクを強奪し、止めに入る人たちをヒラヒラとかわしながら、ざわめく生徒達にこう語りかける。
「皆さん、覚えているでしょうか! 今から一週間前に起こった、元生徒会長立候補者、ルシェヌさんが起こした『缶コーラ爆発事件』! 今回私は、それにまつわる面白い物を持ってきました!」
マジナは追っ手を避けるべく、ステージから降りる。同時に、ステージ脇の音響室に忍び込んだユノスが、ステージに備え付けられたスクリーンを起動する。
そしてそこから映像が映し出される。その映像は、ルシェヌのマジックショーを後ろ視点から取った映像で、ピコリが大急ぎで缶コーラを買う場面から始まっていた。
「最近の自動販売機は監視カメラがついていますからね! 私はそれをどうにかして、ゲットしました! それでは、衝撃の瞬間をご覧ください!」
その衝撃の瞬間は、思いの他すぐやって来た。
『まばたき厳禁じゃぞ……! 三、二、一、ゼロなのじゃ!』
と、映像内でルシェヌが『ゼロ』と言った瞬間、とある生徒がルシェヌの方にコーラ缶を投げつけ、それが爆発四散した。
さらにその後、同じ生徒が混乱に乗じて、フタがパカっと開いたような形の缶――ルシェヌが魔法をかけた缶を、すばやく回収したのだった。
その映像に生徒全員がポカーンとしている中、マジナはミソギにマイクを向けて、
「私はこの事件を聞いてから怪しいと思ったんですよねー。この日って確か選挙の中間報告の近くで、ミソギさんがルシェヌに負けてたって出てたでしょ?
だからもしかしたらこの事件は、ルシェヌを選挙から引きずり落とすための、ミソギさんの工作のように思えるのですが?」
ミソギは答える。
「いいえ、知りません。そもそもその映像自体、そちら側の工作に思えるのですが?」
するとマジナは、ステージではない、なるべく大勢の人に近くで見てもらえるような位置に避難し、ある物を取り出す。
「ではこちらはさらに、証拠を用意しておきました。
こちらはその時、爆発四散したコーラ缶の破片です。
ここで皆様にトリビアを一つ、飲料缶は『アルミ缶』と『スチール缶』の二種類があり、スチール缶は主に内部からの圧力が高い物――つまり炭酸飲料などに使われます。が、ここ最近では加工技術の発展により、アルミ缶に入ったコーラも存在します。
実際、校内に設置されている自動販売機から出る缶コーラの缶は『アルミ缶』です。
ここで話を振り返りましょうか。この事件はルシェヌが自動販売機で買ってきた缶コーラを即席で爆発させるというマジックでしたね。
でしたらあの時飛び散るべきなのはアルミの破片のはずでしょう。しかし、この破片は……」
マジナはその破片を宙に投げ、持ってきた磁石を上に掲げる。
そして破片は、見事に磁石にくっついた。
「鉄なんですよ、これ。
つまり、ルシェヌが缶を爆発四散させ、周りに被害をもたらしたというのは、まるっきり嘘。
やはり、誰かがわざわざ爆発する缶を用意する程の執念を持った工作員がいたのですよ。アルミよりも『硬くて傷つけやすい』スチール缶をつかって、ね」
「……ですが、わたくしとその工作員とのつながりがあるとは断定出来ないではないですか?
ひょっとしたら、単なるわたくしの過激な信者がそういう行動を起こしたのではないですか?」
マジナはステージめがけてマイクを放り投げる。
マイクはステージに堂々立っていたサバキにキャッチされる。
サバキはミソギに問いかける。
「ならば、今後生徒会長を務める身分としても、貴様から一言『うちの関係者が良くないことをした』と謝らなかったのか!?」
「それは、学校や警察の手で事件が明細化するまでどうしようか判断に迷っていたからです」
サバキは今度は全校生徒に問いかける。
「みんな、あの事件が起きてから警察か学校に何か動向があったか確認できたか!?」
体育館にいた全校生徒は、誰一人、うんともすんとも言わなかった。
さらに、今まで好き勝手行動していたマジナ、ユノス、サバキを取り締まろうとした教師達も急に動きを止めた。
「そうだろう! 警察や学校は何一つ動かなかっただろう! せいぜいルシェヌの立候補を取り消しただけだ! まるで、何か別な権力に睨まれたように黙り込んでいたではないか!」
ほとんどの生徒たちは、高森ミソギの方を見た。彼らの目に懐疑の念がこもっていた。
「さて、茶番はここまでにしておこう。先程の司会通り、投票があるからな。
もっとも後程、警察や教育委員会の手がこの学校に及ぶのはほぼほぼ確定事項のようなものだがな。
ミソギさん、自分は二つ期待します。
一つは、この後あなたが全校生徒にどちらが信頼されてるか否かが明らかになること。
もう一つは、あなたがしたことが適正に裁かれることを」
と、捨て台詞を言って、サバキはステージを降りる。その時、皆に疑いをかけられた、ミソギはただ、うなだれていた。
*
その後、投票結果が開示された。結果は、高森のブランドがまだ物を言ったのか、僅差でミソギが上回った。
しかしほどなくしてミソギは百式高校から転校した。それがルシェヌに対する妨害行為が捜査され、ミソギへの追及と、高森グループの失墜から逃れるためだというのは、大抵の者には火を見るよりも明らかだった。
そして、肝心な生徒会長の座は、言うまでもなく……
「では今日から、自分、満月サバキが本校の生徒会長として振る舞わせていただきます! 皆様、出来るだけの応援をお願いします!」
と、生徒会長就任式で、サバキは体育館のステージで、高らかに宣言した。
直後に、生徒達による拍手と歓声が巻き起こった――今回は、誰一人として罵声罵倒を浴びせることはなかった。
その日の夜、満月家はいつも以上に賑やかだった。
「生徒会長就任おめでとう、サバキ!」
当然、今宵は、サバキの生徒会長就任を祝うパーティーが開かれたためだ。
「いやー、ほんと頑張ったねー、サバキ姉さん」
「これにてサバキのことを数ミリは見直さねばならなきゃいけなくなったのじゃ……アタシじゃ掴みとれなかった生徒会長の座を頂くなんてな」
「全く、今回は実に大変だった……本当にみんなには感謝しなければならない。特に、ユノス殿。貴様がコーリン殿に自分を励ますように頼んで、マジナ殿にあの事件の全容を調査・公開するように頼んだんだろう?」
「え、なんでボクが裏回ししてたってわかったの?」
「貴様、アザレア殿を使って缶の破片を回収していただろ? それからあの推理を立てて、ああして公開しようと考えたのだろう?」
ユノスは普段の微笑みより、若干口角を上げて、
「流石は断退警察だね。そうだよ。ボクの今回の仕事は、サバキお姉ちゃんを生徒会長にするって決まってたからね」
「やはりか、ありがとう、ユノス殿。そしてコーリン殿、マジナ殿、本当に二人の働きには感謝する……しかし、改めて考えると不思議だな。いいのか二人とも、これにて3Pとやらは出来なくなったが?」
コーリンは言う。
「ああ、そんな約束もあったな。ま、別に今思い返してもどうでもいい話だけどな、本題は妹の本気に手助けすることだし」
マジナは言う。
「私も別にサバキが負けてもどうでもよかったかな? だって、あの高森とかいうお嬢様ぶっ飛ばすので十分気持ちよかったし!」
「そうか、ならますます、ありがとう……」
サバキは、チヨが親切に用意してくれた鳥軟骨の焼き鳥にかぶりつく。
(相変わらず鳥軟骨は旨いな……この味は、しっかりと噛みしめておかないとな、明日から、自分を支えてくれたみんなのためと、少しでもその他の方々からより信頼されるため、すこぶる忙しくなるのだからな)
【完】




