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第61話 マジナ&マジカ 〜NEWな趣味〜

※サブタイトル改題済みです

 マジナの部活は女子サッカー部である。


「さぁ、こい満月! 俺からボールを奪ってみろ!」


 ただいまマジナは、今は男子サッカー部部員を相手に、一対一のボールの争奪練習をしていた。

 男子は男子らしく勢いのあるドリブルで、マジナを抜けようとする。

 

「ああ、何が何でも奪ってあげるよ!」


 マジナは男子の足から僅かにボールが離れた所をへ、つま先を滑り込ませ、ボールを宙に高く飛ばす。


(おっ、空中戦に持ち込んだか。けれども負ける気はしないぞ!)

 と、心中で勝ち誇る男子だったが、マジナは彼の予想の斜め上をいくスピードとジャンプ力で先にボールを取り、そのまま男子の後ろを駆け抜けた。

 

 マジナはサッカーボールを軸に振り返り、こう誇らしげに言う。

「はい、これで十八勝だよ」


「くっ、身軽過ぎるよマジナさん……」

 パチパチ、と、それを見ていたサッカー部員の男女はマジナの健闘ぶりを拍手で褒めたたえた。


 ここで男女両方のサッカー部顧問は、それぞれ言う。


「そろそろ休めー、次からはもっとハードなことするから、三十分ぐらいみっちり休めよ」

「みなさんも、特に一年生の方も、無茶しない程度にやりましょうねー」


 かくて二つのサッカー部は、三十分の休憩時間に入る。


「お疲れ様です。マジナさん」

 女子サッカー部の同学年の子がタオルを差し出す。


「うん、ありがとね」

 マジナはそれで汗したたる顔面を一気に拭く。その後なんとなく男子部員達のいる方向を見た。

 彼らは顧問の休憩時間に甘え、ベンチに何らかのカードを広げて遊んでいた。


 一応自分もカードを持ってるので、それに少なからず興味を持ったマジナは、

「何してるんだい? そんなにカードおっぴろげて」


「『マジモンカードゲーム』してるんだよ」


 まずマジモンとは、『マジで好きになるモンスター』、縮めてマジモンのフレーズでおなじみのキャラクターの総称。あるいはマジモンを捕獲し戦わせるRPGゲームシリーズのこと。


 マジモンカードゲームとは、RPGの『マジモン』をカードゲームに落とし込んだメディアミックス作品。独特のルールと、マジモンのネームバリューの高さから世界各地老若男女に受けているカードゲームだ。


「へぇ、『マジモンカードゲーム』ねぇ。私結構カードゲームに興味あるんだよね」


「そうなんスか。意外っスね」

「何かマジナさん大人の女性な雰囲気ありますから、そういう男の子っぽいこと興味ないかと思いました」


「人は見かけに寄らないんだよ。とにかく『マジモンカードゲーム』っていう名前はきっちり覚えたから、その気になったらアクション起こしてみるよ」


 その晩。リビングでマジナは、スマホをいじっていた――スマホでマジモンカードゲームのサイトを見て情報収集していた。


「なるほどなるほど、今なら五百円でデッキ一通りが買えるのか。親切だねぇ、このカードゲーム作ってる人は。ルールもしっかりと動画にまとめてくれて」


 しかしそれでも少々マジモンカードゲームについて疑問がある。

 というわけで彼女は困った時の解決役の『あの人』を呼ぶ。


「ピコリィー、よろしく!」


「ほいほいほい、来ましたよー。召喚獣めいて来ましたよー。で、何の用」


「このマジモンカードゲームっていうのに興味があるんだけど」


「あー、マジカね、ウチも何となく知ってるよ。最近暴売れしてるカードゲームのことでしょ?」


「そうそう、あれこれ知ってるピコリなら何か詳しい話聞けると思ってさぁ」


「うっしゃ、マジナ姉さんに知恵袋キャラ扱いされた。

 で、例えば、どんなこと聞きたいの?」


「そうだねぇ、まず聞きたいのは……これやってる人って、前の『ディメプレ』みたいに、相手から異臭がしたり、マナーが悪かったりしないよね(※第45話参照)?」


「それは大丈夫、これやってる人はみんないい人だってネットでみたことあるから」


「なるほど。じゃあこれは始めて大丈夫なカードゲームだね。よし、じゃあまずこの五百円で買えるスタートデッキを買って……」


「……それもいいんだけど。マジナ姉さん、本気で勝ちたいと思ってたら一回ネットで強いデッキ調べた方がいいよ。そうするとその通り、強いデッキが出てくるから」


 マジナはピコリに言われた通り、ネットで強いデッキを検索する……と、いかにも高そうなカードをふんだんに使ったデッキレシピがズラリと並ぶ。


「この四枚入れてるカードは二千円……二千円!? たかがカード一枚で二千円!?」


「そのカードはドローソースとして超優秀だからね。四枚買っといて損はないと思うよ」

 ※ドローソース……手札を増やすための手段。手札は大体のカードゲームで肝になるので、ドローソース入手は死活問題となりがち。


「……そうかく軽々しく言うピコリだけどさ。君はこういうの余裕で買えるのかい?」


「い、いや……ウチは五百円のデッキ一つを買ったぐらいでーす」


「じゃあ私も五百円のデッキだけ買って、それからはもう少しお小遣い貯めてから考えよう……んー、けど、大会とか出てみたいって気持ちはおさまらないなぁ」


「じゃあ『初心者バトル』はどう?」


「初心者バトル?」


「五百円のスタートデッキ以外使っちゃいけない大会だよ」


 マジナは少しだけムッとして、

「そういうのあるんだったら最初っから言ってよピコリ! 私危うくこのカードに八千円使うところだったじゃないか!」


「ごめんごめん……あとこういうカードって、後々安くなるかもしれないことを説明しわすれてごめん」



 その後、マジナは自分の気に入ったタイプのデッキを二つ買った。

 二つ買ったのは、デッキの強化用ではなく、


「BASLC、そのカードはそこにおくけぇ」

 自分の仲間の八体の竜――より厳密に言うと、八体の内の知恵袋『IrrynCrash』と、対戦・練習するためである。


「よし、こちらはターンエンドけぇ。しっかし意外じゃのぅ、マジナが再びカードゲームに熱中するなんて」


「感覚的にカードを使ってすることは全般好きなんだよね。けど今回はさ、ちょっと変わろうと思って始めたんだよね」


「変わるって、どういうことじゃけぇの?」


「今更な話だけど、この世界に帰ってきて、盗みとか催しとか出来なくて、やることがなくて虚無だったんだよね。

 だからさ、コーリン姉さんの騎人バスターみたいに、私も何か趣味を見つけて、全うに楽しく生きようと思ってさ」


「それは立派な話じゃけえの」


「ま、怪盗サスペンスの名も丸くなったってことだね」

 と言った後、切り札のワザの使用宣言をして、

「さて、もう一回勝負しようか」


「怪盗サスペンスの名前はまだ角ばってるじゃけえのぉ。OKじゃけぇ」



 数日後、某ビルの一階にあるカードショップにマジナとピコリの姿はいた。

 今日は『初心者バトル』の日。その名に合わせた、また大会に不慣れな者や、実はやり込んでそうな風体の物など、参加者は様々だった。

 だがマジナ含む参加者全員の意は一つ、『勝利』のみ。


「それでは、時間の限りお願いしまーす」

 という、カードショップの店員の掛け声に合わせ、各テーブルで真剣勝負が始まった。

 

 今回使えるカードはスタートデッキ、奇々怪々なコンボや、鎧袖一触なデッキアドバンテージは生めない。

 どれだけ基礎を操れるか、どれだけ地頭が優れているかが勝負の決め手という窮屈な試合を皆、強いられている。


「私はこれを使います」


 故にマジナは、仲間のドラゴン達との練習で培ったテクニックを容赦なく振るい、相手を圧倒していく。


「あはは、これ負けましたね……」

「すごい、初心者向けのデッキでこれだけうまく回せるなんて」

「おめでとうございます、いい勝負、ありがとうございました」


 そしてマジナは時間内に三人を負かし、本大会一の勝利数を得て、


「それでは参加賞を配りますので、みなさん私とじゃんけんお願いしまーす」


 最後の店員とのじゃんけんに負け、大した賞品は得られなかった。


 なお、優勝賞品はエンジョイ向けの大会のため、なかった。


 ピコリは参加賞のパック三つをもってニコニコして、

「ウチは勝ったけどねー! 試合ではボロクソ負けたけど」


「……ピコリぃ、ちょっと家で話したいことがあるんだーけーど」

 思い切りマジナの逆鱗に触れたのだった。


「?」


【完】

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