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第44話 迷惑老人、満月の裁

 自分、満月サバキは、ピコリに連れ添い、住宅街を歩いていた。


 今はコンビニに行った帰りの最中。ピコリの手に提げたバッグがそれを表している。


「SNSで話題の新作スナック『ポテトパイ』、前から食べて見たかったんだよねー」


「そのために近所のコンビニでは無く、遥々遠方のコンビニへわざわざ行ったのか」


 自分はピコリの手提げバックを覗く。三色それぞれ二個、計六個の細長い紙箱が入っている。


 しかし、この細長いのがパイとは。自分の既知の範疇においてはパイは円か、それのn等分がスタンダードなのだが。

 この前(※第21話参照)の肉まん然り、コンビニの食べ物は色物が多いな、つくづく今ドキという奴は、知ることが多い。


 突然とピコリが足を止め、つられて自分も足を止めた。道に高所作業車が駐車されていて、看板と共にそれを塞いでいたのだ。


「『電線工事中のため、しばらく迂回してください』……えー、さっき通った時はこれ無かったのに、タイミング悪ー」


「仕方ない、言う通り迂回しよう」


 自分達は迂回し、さらに住宅街を歩く。最中、見知らぬおばさんが話しかけてきた。


「お嬢さんたち、見かけない顔だね?」


「最近、あっちのほうに引っ越してきた者です」


「で、今家に帰ろうとしてる所でーす」


 するとおばさんは、こんなことを教えてくれた。

「ならこの先の通りは行かない方がいいわよ。『タンジロウ』がいるから」


「タンジロウ? うわー、ウチの作者、流行り物に乗っからないとやってけなくなったのかなぁ? 今必死にアマプラで追っかけてるけど、まだ五話までしか見てない(掲載当時。今はきっちり履修済みです)っていうのに……」


「あの、タンはタンでも、かまどにくべる方の『炭』じゃなくて、口から出てくる方の『痰』よ。

 タンジロウって言うのは、この先の通りに住んでるおじいさんのあだ名。

 すこぶる偏屈で何にでもガミガミ噛み付いて、限界まで怒ると痰を吐いてくるの。

 それで近所のお孫さんがタンジロウって呼んで、語感が良いからみんなそう呼んでるの。

 とにかく、あそこの通りは絶対通らないでね。今も、すこぶる機嫌が悪いから、気をつけてね」


 そう言っておばさんは自分たちの元を去っていった。


「じゃあ、また迂回しないとね」


「そうだな」


 しかし、どうやら今日は一斉電線工事の日だったのか、行く先行く先の迂回ルートで高所作業車が道を閉していた。

 これ以上あちこち回っててもらちが明かないと、ピコリはスマホのマップアプリを用い、高所作業車に出くわさないルートを練りあげようと試みる。


「一時間三十二分……うわー、これめちゃくちゃ回り道じゃん! どうすんの、ポテトパイ冷めちゃうし! ウチ寒いんだけど! ええい、こうなったら!」


 こうなったらどうするのだ……まさか、まさかな。自分はピコリがそんな無鉄砲な人間ではないと信じつつ、彼女に着いていく。 そして、そのまさかだった。ピコリが来たのは、タンジロウの家前の通りだ。


「サバキ姉さん、ここを強行突破しよう! もうそれしか方法がない!」


「先程のおばさんの助言を蔑ろにして大丈夫なのか?」


「大丈夫! 全速力で駆け抜ければいける! 万が一があればサバキ姉さん、お願い!」


「結局自分頼みか、お……」


 自分が説明を言い切る前に、ピコリはタンジロウ通りを疾風の如く駆けていく。

 自分はそれを追いかける。その直後、ピコリはわかりやすくコケた。ある和風な一軒家の門前を過ぎ去る直前、そこから飛び出した物干し竿につまづいて。


「このガキ共! 誰の許可得て家の前通ってるんだゴラァ!」

 濁った青ジャージ姿をした、白髪角刈りの老人が、物干し竿を槍のように構えてピコリをにらみつける。奴が噂のタンジロウか。

 

「いたた……あのすみませんおじいさん。ウチはただ公共の道を通っただけなんですけど! それすらもしちゃいけないんですか!?」


「うるせぇ、この道は俺の目の前にあんだから俺の土地だろうが! お国の為に必死に働いて買ったんだぞこの土地! それをよそ者にふんつけられていい気になれるかってんだ! カー……」


 これは危険だ、急がねば。と、思い、自分も駆けた時には既に遅し、


「きっ、きったなああああ!」


 ……ピコリの尊厳と自分の生理的嫌悪感故に、中略。

 ピコリは絶叫し、手提げバッグすらも忘れ、家へと退散した。


「……」

 標的に逃げられたタンジロウは、次に自分をロックオンし、自分は身構えする。そして、乱暴に投げつけられた手提げバッグを受け止める。


「早く、さっさと出ていけ! よそ者! ほら早く、年寄りの言葉は聞けないと言いたいのか!」

 

 ここでやり返せば面倒が積もる――自分は、ポテトパイでホカホカする手提げバッグを抱えて、ピコリの後を追った。



「はむっ、はむっ、ホカホカホクホクでおいしいのじゃー! でかしたぞピコリ、やはり貴様はおいしい食べ物を取り寄せるのだけは上手いのじゃ!」


「……それは一体どういう犠牲を経て食べられるか、よく噛み締めてね……はぁ」


 と、風呂上がりのピコリは、元気なくルシェヌ殿に言った。


「ピコリ、今日はほんと災難だったね。私達の分も買ってきてくれてありがとね」

 マジナ殿はそうピコリを労う。しかしピコリはまるで回復せず、黙々と自分のポテトパイを食べる。


「タンジロウか。噂に聞いてたが、マジでああまでやるとはな……」


「コーリン殿、タンジロウを知っているのか?」


「オレと朝のランニングコースがダブって、結果仲良くなった爺さんからよく話して貰ってたからな」


 間違ってタンジロウの家に紙飛行機を飛ばした子供に、その飛行機をビリビリに破いて見せた。


 家の前で喋ってた中学生組を家の前で小一時間土下座させたままにした。


 近所迷惑だって注意しに来た役所の人を物干し竿を振り回して追い払った。


 などなど、ただただタンジロウの社会性のなさを示す話を、コーリン殿は次々と話していく。


 なかでも、最も、残酷だったのは、自分としてはこれ。


 キレにキレた血気盛んなご近所の息子さんが文句言いに行ったところ、家に引きずり込んでボコボコにした後、警察に不法侵入だー、と騒いだ。という嘘であってほしい話だ。


「やばいおじいちゃんだね」


 ユノス殿の言う通りだ。警察でもお手上げにさせるとは、ある意味侮れない老人だ。


「おいしかったのじゃ。ピコリ、もう一回買ってくるのじゃ」


 いくら魔王を自称しているとはいえ、それは酷薄すぎるぞ、ルシェヌ殿。


「うん、うん……うん。ウチ……上で寝てくる」


 ピコリは完全に落ち込んで、重い足取りで二階の寝室へ。

 もうすぐ入学も近いというのに、このテンションのままでいられるのは非常に可愛そうだ。

 仕方ない、ここは断退警察としての責務、やるべきことをしよう。



 翌日早朝。自分はタンジロウの家へと、赴いた。

「お前にしては大胆に出たな、サバキ」

 ……コーリン殿と共に。 


「何故についてきた、コーリン殿」


「妹がひどい目にあってるんだ。このまま黙っていられるかってんだ。絶対あのトチ狂った頭、むりくり地につけさせてやる」


「まさかとは思うが、乱暴はよせよ」


「じゃあ逆に乱暴はする気なかったってことか?」


「無論、自分は断退『警察』だ。私怨むき出しの成敗などするつもりは更々ない……」


「あ、じゃあピコリのことは二の次って言いたいのか?」


「別に……そこまでは思ってないぞ。妹の不幸とタンジロウの暴走、両方の解決が動機だ」


「素直じゃねえな」


 憎きタンジロウの家が見えてきた。ついでに容疑者が既に――年寄特有の早起きであれば健康的でいいとは思うが、奴に限ってはそうではなさそうだ――玄関で物干し竿を構えていのも確認した。

 まるで門番だ。門番なら門番で、自分の家『のみ』を守って欲しいのだがな。


「む、何じゃあお前ら! ここは立入禁止だぞ!」


 何という反応感度、まだ自分はタンジロウから半径十メートルぐらいのエリアに足を踏み入れたばかりというのに……


「昨日自分の妹が貴方に酷い目にあったんだ。それで一つ言いたいことがある」


「知るか。お前みたいなドカドカと人様の土地に入ってくる無礼者なんか、覚えたくもないわ!」


「うわ、実際会うと気迫がヤバいな……ガチの嫌な老人だ」


「横の金髪の女! 誰がクソジジイだと!」


「それは言ってね―よ!」


「こっちが言ったと思ったら、言ったんだ! このバカタレ!」


 勝手にキレたタンジロウは、物干し竿を振り回して、こちらに迫る。


「コーリン殿。ここは自分が穏便に済ませる。だからまだ刀は抜くな」

 自分は、反射的に暴れる危険性のあるコーリンを後ろに回した。


 血の気が多いことで家内では有名なコーリン殿だが、ここは『まかせたぜ』と、すんなり飲んでくれたのが、非常にありがたかった。


「死に晒せこの能無しがぁ!」


 タンジロウは自分に向かって物干し竿を振り下ろす。それを自分は片手でキャッチする。


 自分の両腕には断退警察より支給された、ナノマシンで構成された手袋型の装備が備わっている。その機能は様々だが、ここでは並外れに強化された腕力のみを使う。


 どうせならその無駄な気概を完璧にへし折ってやるために、これをちょうちょ結びにしても構わないが、それはそれで騒ぎになるので、あくまでキャッチで止めてやろう。


「はっ!? ……おい、離……れない!」


 自分は物干し竿を引っぱり、タンジロウの手から離させ、後ろのコーリン殿に預ける。


「して、何か自分たちに言いたいことは?」


「くっ、泥棒が! 人様の物干し竿を盗りやがって!」


 と、威勢よく言うタンジロウ。しかしその足取りは、明らかに後ろ――自宅の方へと動いている。負け惜しみしつつ逃げているのは明白だ。


「追うぞ、コーリン殿」


「おう、けどそれだと今度こそ不法侵入になるぞ?」


「物干し竿を返しに行くという建前にしておく」


「さっすが、気配りが上手いな」


 自分達はタンジロウを追い、奴の邸宅へ。 これまではバリケードめいた塀で囲まれていてよく見えなかったが、なかなかいい家をしている。元はいい職に就いてたのだろうな。

 ――今、奴が鞘から模擬刀を抜いているのもそれを裏付けている。


「おいおい爺さん、流石に刀は良くないと思うぞ」


「やかましい! ワシの土地を、ワシの土地を……無視するなぁぁ!」

 タンジロウは模擬刀を振りかぶり、自分達に迫る。最中、奴は何かにつまづき、前のめりに転ぶ。

 模擬刀は宙でくるくると回り、そしてタンジロウの背に落ち……


「危ないっ!」

 大惨事になる前に、自分は片手より、少量のルマを発射し、刀を別方向へ弾き飛ばした。


「間一髪だな。サバキ……ジジイ、起きないな」


「うめき声はするから、少々気を失ってるだけだろう。コーリン殿、家で安静に寝かせる手伝いをしろ」


「こんな訳わかんないことのたまうわ、人の妹泣かせるわ、色々と最低なジジイを?」


「かといってこのままほったらかしにして重篤になれば、自分達は大きな責任を背負う必要が出る。それに、これは義理に適った罰じゃない」


 かくて自分とコーリンはタンジロウを家に運び、布団を敷いて安静に寝かせた。

 回復を待つまでの間、自分は家の中を見渡し、奴の人となりを知ろうとした。


「六法全書――この世界の法律書だったか。刑事ドラマの小道具ではない、本物のそれは初めて見たぞ」


「何いってんだサバキ?」



 五分後。タンジロウは目を覚ました。


「……おい、まだ俺の家にいるのかお前ら!」


「自分達に助けられるのが余程不満か? なら、一一〇番で、その手の病院で面倒見てもらった方がよかったか? それに行くまでの罪状はいくらでも挙げられる?」


「あと、これ以上抵抗するってんだったら……見たよな? さっきうちのサバキが物干し竿掴んで奪い取ったのを」


「こちら『も』いつでも手を出せるぞ? 自分が良くて相手はダメ、を正当化するのなら、それなりの理屈を挙げて貰わないと困るからな」


「くっ……この卑怯者! そこまでしたくなるほど、俺はお前らに何かしたか!」


「したにはしたな。だが、貴様の出方次第にもよるが、これ以上、野蛮な真似はするつもりはない……強いてするとすれば、聞きたいことがある」


「……何だ」


 軽重問わず、いかなる犯罪者にも共通点が二つある。と、自分は前の世界で長官に教わった。

 一つはシンプルに犯罪を犯したこと、もう一つは……


「何故、こうも周りに迷惑を掛けるんだ?」


 善悪・正誤・大小を問わず理由があることだ。自分は今、それをタンジロウに尋ねる。


「それを聞いてどうなるってんだ!?」


「言えば情状酌量として見なせる。言わなければ乱心と見なす。それでいいな」


「……わかった、話せばいいんだろ、話せば!」



 数十年前、タンジロウ――本名、長門ジロウ。だがここまでタンジロウ表記で通しているので、以降もタンジロウと明記する――は、田舎町の平凡な家に生まれ、何不自由無く育った。


 中学生の頃、安定した生活を求めて公務員を志望。

 高校生の頃、自分の真面目な性格に合わせて将来を『検察官』と具体的に定め、大学法学部に籍を置く。

 その三期全てにおいて、タンジロウは一心不乱、ストイックに勉学に励んだそうな。


 その甲斐あり、タンジロウは無事、検察官の夢を叶えた。それからはがむしゃらに仕事をし、貯金をし、健全に勤しむ……何もかも、『安定』の一言であった。


 しかし、この世界に完璧など存在しない、どんな物でもごくわずかなほころびがある。 タンジロウの場合、それが顕になったのは定年を迎えた時だった。


 ふと振り返れば、両親は死んでいて、自分は独り身だった。両親ともありふれた習慣病が死因だったという。


 けれどもどうせ人はいつか死ぬ。くよくよしていられるか、と、タンジロウは楽しい老後のため、老人ホームに移り住んだ。


 そしてそこで、タンジロウは独りになった。

 これは勉学か安定ばかりを求めた人生が原因だった。

 忘れられないニュースや、誰もが見た映画、往年の芸能人――総じて、普通の人の感性など身につけておらず、まるで他人と絡めなかったのだ。


 老人ホームで憂鬱になったタンジロウは、そこから抜け出し、この屋敷を買った。普通の人らしく、世間の風を浴びようとした。


 だが、彼の中に住んでいる、プライドというか、我というか……とにかく何かがそれらを『くだらない』と捨て去り、拒絶した。


 結果、彼は毎朝から毎晩まで、孤独だった。誰も、彼に構ってくれなかった。


 ずっと、ずっと、寂しかった。寂しくてしょうがなかった。

 気がつくと、タンジロウは、自宅の前で遊んでいた子供たちに、石を投げていた。

 まだ良心が残っていたか、その石は明らかに子供たちから外れていた。

 しかし投げたのは紛れもない事実。子供は泣いて逃げ出し、タンジロウは自分を疑った。


 後日、その子供の親が来た。タンジロウは精一杯謝り、許してもらった。


 その後、こんなことは間違ってる。と、タンジロウは独り、自分を責めた。

 だが、一方で自分の中にいる何かは、喜んでいた。


 やっと、構って貰えたと。


 それが、乱暴老人タンジロウの誕生であった。


 ……と、タンジロウは、序盤は嫌そうに、中盤に哀愁を漂わせ、終盤には涙を流して、自分達に語ってくれた。


「酷い話だ……必死に励んだ検察官が、今となっては害悪な老人に成り下がるとは。が、だからといって悪事は厳禁だろうに」

 と、自分は、はっきりとタンジロウに言ってやった。断退警察の名に賭けて、締める所は締めなければならないのだから。


 タンジロウは泣きじゃくった。

「なら俺は何をすればよかったんだよ! 好かれようとしても好かれない! 認められようとしても認められない! 八方塞がりだぞ、八方塞がり! 俺はただ、そこまでは、正しいと思ったことをしてきただけなのに!」



 正しいことをして、結果正しくなくなった、か。

 同情――その悲愴の叫びが、自分のそんなやわな感情をさそった。


 だからコーリン殿が、自分が動く前に、はっきりと言った。

「なら、その正しいと思ってたことが間違ってたってことだろ?」


「……俺が、間違ってた?」


「けど、早とちりするなよ。間違ってたからって八方塞がり、じゃねえんだぞ。タンジロウ、お前はまだ間違った『だけ』だ。これからは、反省していい結果に導く事だって出来るんだ。

 オレの親父……ゲフンゲフン、戦国時代の武将、毛利元就は一度城を追い出されても、どうにかこうにかして中国地方の大名になったんだ。

 だから、罪を重ねるのも、悔やむのも、後ろを向くのも、もう止めろ。

 代わりに、変われ。そして、自分の為に強くなれ。

 オレが言いたいのはそれだけだ……サバキ、お前は何か言いたいことはないか?」


「……もう無い」


「じゃあ、長居するのもあれだし、帰るか。おじゃましました!」


 そして自分とコーリン殿は、うつむいたままのタンジロウを残して、帰路に付いた。


 ある程度、タンジロウ宅を離れた所でコーリンは言う。

「サバキ、何か今日のお前はキレが無かったな」


「ん? 特にどういった所がだ?」


「ほら、結局オレが最後にガツンと言っちまったじゃねえか。

 まさかお前、『お前は悪者だ』の一点張りでいく気じゃなかったよな? 流石にあれは同情してやってるよな」


「……ああ、同情した。自分と重ねるぐらいにな。覚えているか、コーリン殿。九年ぶりに貴様にあった時の事」


「えっと、オレが柿の種勝手に食ってたのを、お前が叱ってたな」


「このまま、自分はそのままでいれば、タンジロウと同じ轍を踏むのかと、同じ穴のムジナと……ずっと考えていたんだ」

 と、自分は少々情けなく、本音を吐露した。

 

 コーリンはにっと笑って。

「……いや、もうその線はねえな。それを良くないと思って、よりによってオレに言うんだからよ。

 ま、今お前も悪いと気づいても、お前はあと数十年ぐらい強くなれる機会があるしよ。タンジロウの方は、十年もあれば御の字だろうけどよ」


「そうか……ありがとう、コーリン殿」


「どういたしまして。あ、そう言えばよ、コンビニとコインランドリーって、外見すげぇ似てないか?」


「話が一気に変わるな……それはだな、閉店したコンビニの建物をコインランドリーの会社が新たに買い取る事案が多いからだ。ガラス張りの建物が丁度いいとな」


「でさ、家から歩いて七分ぐらいの所にコインランドリーあるだろ。この前その辺走ってたら、そこ工事してたんだ。

 まさかもっかいコンビニに戻るのか? なら都合がいいな、もしポテトパイ売ってるコンビニなら、ルシェヌ本人を買いに行かせられるし、もうピコリに不運はぶっかからないだろうし」


「さぁ、それはどうだろうかな?」


 これは後に噂で聞いた話だが、あの後タンジロウは今まで迷惑をかけた人全員に頭を下げ、交通パトロールや掃除など、ボランティアを始めたそうだ。


 だが、誰も今の所は、誰もタンジロウを許していない。


 けれども、だとしても、タンジロウはきっとこれからも、贖罪を止める気は更々ないだろう。

 それを自分、満月サバキは、信じる。


【完】

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