第41話 満月十姉妹のエイプリルフール
今回はエイプリルフールに投稿したものです。
おはこんばんにちは! 満月家の六姉妹の四女、満月ピコリです!
今日は三月三十一日! そして明日は、イベントがとことん大好きなウチにとっては激ヤバな一日! そう、エイプリルフールです!
えへへ、明日はみんなにどんな嘘つこっかなー。
「ピコリお姉ちゃん、いつまで破った三月のカレンダー見てるの?」
こう尋ねて来たのがウチの一つ下の妹、ユノス。ちょっとほわーんとしてる感じの不思議ちゃん。
「紙飛行機でも折って飛ばしたいのかえ?」
こう皮肉ったのがウチの二つ下の妹、兼、姉妹の末っ子、ルシェヌ。自称魔王のワガママのいばりんぼ。
「ごめんごめん、ボーッとしてた」
これは一日早い嘘。当然だよね、カレンダー破った直後にボーッとするなんてありえないもの。
「しっかりしてね、お姉ちゃん」
「なのじゃなのじゃ! それでこの魔王ルシェヌの姉が務まると思うななのじゃ!」
「う、うっす」
「それと、三人とも、もうじき消灯時間だからな」
そして今ウチらに注意してきたのが、一つ上の姉さん、サバキ。獣人ってことで犬耳と尻尾を生やした、グンバツスタイルな美少女で、すっごい厳しい人。
「はい、わかったよ、サバキ姉さん」
「わかった」
「りょーかいなのじゃ! さー、今日はゆーっくり明日の元気のために寝るのじゃ」
さて、明日のエイプリルフールに備えて、サバキ姉さんに素直に従って好感度上げつつ、とっと寝よう。
てなわけでウチは三段ベット×二の片方の上段に入って、明日撃つ嘘を考えながら、眠りについた。
翌日。
「ふぁー、よく寝た……」
七時半、うん、健康的なタイムだ。
ウチは目をこすりながら、下のリビングにいる皆へと嘘を言いに行……
「ぬふぅ!?」
最中、二段ベットの足の角に小指をぶつける。
アタシは痛みを噛みしめながら、不自然な歩き方をしてリビングに着く。
「あ、ピコリお姉ちゃんも起きた。イバラ、ピコリお姉ちゃんの分も作らないとね」
「……ユノス……てつだい……おねがい……」
「相変わらず美味いな、イバラ殿のハムエッグは」
「ハムエッグだけでなく全部美味いっスよ、サバ姐。フレンチトーストとか、豚汁とかもっスよ?」
「あ、そう言えば。お母さん、今日あのスーパーで卵とかの特売あったよね? どうする?」
「じゃあ……マジナに任せちゃうね」
「了解。危うかったね今の、ワノがフレンチトーストに言及しなかったらどうなった事やら……」
「おうネロア! またお前、オレに断り無しで騎人バスターの録画消したな!?」
「はぁ、それは遥か後の刻にコーリン殿が僕に、『当の価値は幾度の視聴を経てすり減り、ついに失せた。空の入れ物は無用でしかない』と唱えたであろう」
「それはそうだったか? ……けど気に食わねぇな、またお前謎のアニメ録り溜めしてるじゃねえかよー。
お、これはNEWマークがついてない。既に観たやつだな。ネロア、同様に消していいか?」
「その運命は決してあってはならない……!」
ウチの家族は、相変わらずゴタゴタとした朝を過ごしていました。
いや、ちょっと待って……イバラ、ワノ、ネロア……って、誰!? よく考えたら、増えてないこれ!?
「ん、ピコリ殿。あたかも魂が理に導かれたような、虚無状態となっているぞ」
「どうしたんスか? リビングの戸の溝に立つのが、ピコ姐のマイブームっスか?」
「ピコリ……おかしい……」
って、言って、幻のスリーガールがウチを気遣いにくる。
「いや、ちょっ、すいません。ちょっくら顔洗ってくる」
きっと寝ぼけてるんだろう。そう思ってウチは踵を返し、三人から逃げようとする。そしてふっかふかの物二つに激突してしまう。
「うわっ、柔らか! 何この弾力、サバキ姉さんの奴……いやそれ以上かも!」
「……ピコリねーさん。変態趣味に目覚めてしまいましたか」
「はっ!? すいませ……」
ウチはナイスバストから顔を離して、その持ち主を見上げる……また知らない女の子じゃーん!?
「え、あの……皆さん! 誰ですか、本当にウチわかんないんですけど!?」
突如湧いて出た四人は揃って、
「「「「妹」」」」と、言った。
「ウチ知らないよー! 妹が六人もいるなんて!?」
この後、ウチのパニックっぷりをお母さんに心配されて、体温計られたり、昨日のご飯は何か? とか聞かれた。病気か何かを疑われた。
けどウチは全くそうではないことを、計八回言って、どうにかやりすごした。
「けど本当に変ね、あの四人がいることの記憶だけふっとぶなんて」
「ちょっとこっちも質問していい。ウチらって、最初っから十人姉妹だったの?」
「そうだよ。全くあの人は、あたしに隠れて十人も女作るとか、逆に凄いよ……そして大変だったんだよ? 九年前に十人そろって失踪されて、まさかの異世界に転生してたなんて……」
そのあたりの設定は変わんないんだ。怖っ。
「とりあえず、健康的には問題ないんだね。じゃあ、それを信じて……あたし今日も仕事だから……」
「うん、わかった。行ってらっしゃい!」
どうやら、ウチ以外の皆は『満月姉妹は十人がデフォルト』と思い込んでるらしい……あ、これってまさかエイプリルフールのドッキリ……?
いやいや、流石にこんな人手がいる大掛かりなのはしないでしょ……芸能人の動画じゃあるまいし。
「……ピコリおねえちゃん……ごはんできた……たべよ……」
「あ、うん」
とりあえず一旦腹ごしらえしてから色々考えよう。
ウチは黄緑色の髪の小柄なエルフっ娘――イバラの作ったハムエッグをパクり。うん、焼き加減も味も絶妙だ。
「料理上手なんだね、イバラ」
「!? ……うん……まえのせかい……れすとらんしてた……!」
「へぇ、凄いね」
「で、アタイはスーパーを開いてたっス」
マゼンタ髪の色白の女の子――ワノが八重歯をちらつかせて、自信満々にしゃしゃりでてくる。
「スーパー? 結構地味……何ていうか、貴族令嬢のイメージだった。色白で奇麗だし」
「元々はそうだったっス。けど、色々悶着ありまして、っスね。
……けど地味呼ばわりは痛いっス。あそこのおっぱいに比べりゃ派手っスよ?」
ワノは、タブレットで何かを見ている、さっきのおっぱいに声を掛ける。
「その低俗な呼び方はやめてくれ。正しい名前があるだろう?」
「松永充」
「それは異世界での名前、ここでは満月トツカだ。そして俺は地味じゃない……同級生たちとの血で血を洗う争いを経て邪神を……」
「おいそれやめろっス! 午前中に聞くには重たいんスよそれ」
「まぁ……お疲れさん、トツカ。じゃあこの流れで、あなたはあっちで何してたの?」
と、ウチは、現在進行形で録り溜めたアニメを片付けてる、群青色の髪の威厳ありそうな女の子――ネロアに聞く。
「……僕は、死の神ホイプペメギリの化神官として、死国トードイスムカの鎮護を使命を、己の剣と共にしていた。それ以上も以下もない」
「普通にファンタジー系の異世界かな? まぁ、だいたいこんなもんでいいかな」
結局何でいつの間に四人増えたのかはわかんないけどね。いや、いつまで経ってもわからなそう。
「それと、今宵はかの約定が存在しましたよね?」
「約定!? 何の話……」
「ピコリねーさん、忘れたか? ネロアねーさん、ワノねーさん、イバラねーさんと、俺と五人でショッピングモールに行くという約束を」
「ええ、そんな約束まで? ……ダメだ、問題が増えまくる。もうここは考えない方がいいか……うん、わかった」
「ならさっさと支度お願いしまーっス!」
てなわけでウチは朝ごはん、歯磨き、顔洗い、あと、
「ええ、サラシ巻いちゃうの、トツカ?」
「あまり、女として見られるのは好きじゃないから……」
新しくいた四人と同じタイミングで着替えた。そしてその他諸々の支度をして、
「行ってらっしゃい。門限までには帰ってこいよ、ピコリ、ネロア殿、ワノ殿、イバラ殿、トツカ殿」
「はーい、サバキ姉さん」
(五人もいると見送りも若干長いな……)
サバキ姉さんに見送られた後、ウチら五人は、仲良く電車に乗り込む。
(急に妹とお出かけとか、やっぱ違和感凄いなぁ。内三人はウチより背がデカイし)
「そういえば、みんなはウチの妹って言ってたけど、皆はどういう順番なの?」
この質問はトツカが答えた。
「ネロアねーさん、ワノねーさん、イバラねーさん、そして俺の順だ」
さらにネロアが補足する
「そして僕の上にユノス殿がいて、トツカ殿の下にルシェヌがいる」
「へぇ、あっ。ってことはウチら同じ学年なんだ」
「そうっスね。いやぁ、異世界転生したっていうのも珍しいっスけど、姉妹十人が同学年にいるのもなかなかっスよねぇ……」
言われてみればそうだったかも。
「つぎ……おりるえき……」
駅を降りてすぐに、その大型ショッピングモールはある。驚異の行き易さ、駅直結!
「まずどこ行く? ウチ的にはまず服屋行きたいなー」
本音を言うとCDショップに行きたいんだけどね。けど、ここは皆に合わせて。
「拒否はしない」
「いいっスねー、賛成っス!」
「ならいこ……ピコリ……」
「服なら充分だが、ピコリねーさんがそう言うのなら付添おう」
早速ウチらは着心地良くてデザインがいい服を安く買える服屋、『チェルクロ』に行って、ダラダラ歩く。
「トツカはさ、本当に女の子みたいな格好したいとか思わないの?」
「思わない。今朝見ただろう、この全体的にふにふにした蠱惑な身体。これを平常に扱えば……モテてしまうじゃないか。一度女装もしたが、ものの見事に幾度とナンパされたんだ。そう、幾度とな!」
「はぁ、それは一理あるね……あと、この手は何?」
ウチは、まるで恋人みたいに指を絡めてウチの手を握る、トツカの手を指さす。
「こうしないと今度は女子にモテてしまうんだ。どうやら俺は余程美しいらしい」
「贅沢な悩みっスね、ホント」
その後は、お昼になったらフードコートに集合ってことにして、皆で自由行動にした。
ウチはかねてからの通り音楽ショップへGO。
あのアーティストの新アルバムでてたんだ、これはまさかの限定パッケージ、とか思いながらニンマリする。
「……?」
どこからか視線を感じたウチは、ふと振り向く。けど誰もいない。ま、当然でしょ、何で音楽ショップにいるだけでジロ見されきゃいけないんだか……
「!? イバラッ!?」
犯人はこいつだったんだ……いつの間にか、イバラが、今にもキスするんじゃないかってぐらいの至近距離で
「ピコリ……これすき……」
「あ、うん。この『FALSE』ってバンドね。大好きなの」
「わたしと……どちらがすき……」
「え、ええ……んと、僅差でFALSEかなぁ……?」
と、出来る限り気を使って正直に言ったウチを、イバラは強制的に向き合わせて言う。
「……なんで? きょう、いった……わたしのりょうり、おいしいって……」
「いや、ちょっと待って。別にウチはイバラが嫌いとは一言も……てか、ウチ料理が美味しいって言っただけ……」
「……いいの……ピコリは、わたしだけをみていれば……!」
するとイバラはガチャリ、と、ウチにゴツイピストル? をちらつかせた。
「……ねぇ、もういちどきく……! わたしと……」
「この状況で答えられるかってのー!」
ウチは全速力で、ヤミ蠢く音楽ショップから逃げ出した。
えっと、どこ隠れよう……あ、本屋さんにしよ! 本屋の本棚は高くて見通し悪くなって撒きやすくなるから。あと、本も見たかったし。
「うっし、後はナチュラルに動いて、イバラには頭を冷やして貰うまで、ウチはQJを立ち読……ん、あの遠くにいるマゼンダ髪の子は」
間違いない、ワノだ。何か立ち読みしてる。
今朝はスーパー経営してたとか言ってたし、多分ビジネス本でも読んでるのかな? いや違う、モロに漫画コーナーにいる。じゃあ今度は何の漫画読んでるのかな?
ウチは気になって、ある程度接近する。と、ワノの現状がまあまあわかる。
一つ、その表紙には、艶っぽい男二人。
二つ、ワノの目の前は、BL漫画の本棚。
三つ、ワノの表情は、顔真っ赤の恍惚顔。
「うわっ、ピコ姐!? 隠密行動とかへらこいなぁ!?」
「へらこい?」
「あ、これは、ずる賢いって意味の徳島弁っス! アタイの産みの母さんが徳島出身だから遺伝しちゃってるんっス! 忘れてくれっス!」
「徳島弁嫌いなんだ……わかった。じゃあ、その手元の方はどう処理したらいい?」
「あ……無に帰してくれっスー!」
ワノのビンタが、ウチの頬へ痛烈に飛ぶ。そしてウチは本屋からヨロヨロと出ていき、次にゲームセンターへと行った。
ゲーセンは人が多いから、イバラも見つけられないでしょ。お昼まで音ゲーして暇潰せるし。
「おっと、今度は群青髪……」
お目当ての音ゲーには、既にネロアが布陣していた。……音ゲーしてて恥ずかしいなんてことはないだろうし、今度は普通に声かけよ。
「数分ぶりだね、ネロア」
「どうもです。ピコリさん」
「あれ、今の……さっきまでと違って中二チックに喋ってないね」
「ピコリさんと二人きりなら、中二病気取る必要ないですもの」
「気取りだったんだ……」
「気取らないと大変ですから……僕は、ここに来た時、死神の右腕と言い張っちゃいましたから。
それは、元の世界『アンド・ロジスティクス』でプレイしてたVRMMO内での設定なのに。
後で神様だか何だかに聞かされた話ですと、あの世界は、地球における月のように、小異世界が付属していたんです。
僕がプレイしていたVRMMOは、驚くことにその小異世界に転移してプレイしているらしいので、完全にホラ話でもないですけど……
けど、やはり皆と比べると僕は、普通の一般人なんですよね……ピコリさんと同様に」
「そっか……そうなんだ、姉さんトリオは、こんな気持ちだったんだ……」
なんだか、すっごく温かくなった。こんな風に信頼してくれる家族がいるなんて。
……的に感慨深く思ってると、ネロアは周期表見てるときみたいに首をかしげている。
「ごめんね、そしてありがとう、ネロア。ウチ、ようやくお姉さんになれた気がする」
ま、それはユノスとルシェヌがああいう感じだからだけどね。そのうえ急に現れた妹にそれを気付かされるとか……あー、情けなー。
*
それから、ウチら五人は色々食べたり、映画観たりして、ショッピングモールを骨の髄までしゃぶる勢いで遊び尽くして、大満足で家に帰ってきました。
「ただいまー! ちゃんと門限守って帰って来ましたー!」
散々楽しんだ故のハイテンションのまま、家の門を開けた。
すると、そこでルシェヌがピリピリした雰囲気で、仁王立ちして待ち構えていた。
「あれ、どうしたのルシェヌ? ご機嫌斜めだけど……」
「貴様ら、今日は何の日だか覚えているのかえ……?」
「エイプリルフールでしょ?」
「違う! 今日はアタシの誕生日なのじゃ!」
しまった、エイプリルフールに夢中ですっかり忘れてた! この作品の『登場人物』にガッツリ書かれてたのに!
「ピコリも、ネロアも、ワノも、イバラも、トツカも……あるべき物を持っておらんぞ……」
「あるべき物? 僕らがため、それは何物か教授してくださらぬか?」
「アタシへの誕生日プレゼントなのじゃ! 皆ショッピングモールに行ったと聞いたから、アタシめちゃくちゃ期待してたのじゃ! なのに、なのに、誰も何も買ってこないなんて……うう」
「とはいっても、ルシェヌに物渡すとか、お金もったいないっスて」
「ルシェヌはとことん人を振り回す名人だもんな。いくら魔王と言えど、そういうことを繰り返せばこうなるに決まってら。今回を気に心を入れ替えたらどうだ?」
「ぐぬぬ……ならば、仕方あるまい……」
ルシェヌは、目の色を変え、辺りに殺気だか魔力だかを溢れさせる。あー、やばい、始まった……
「武力行使するより他に無しなのじゃー!」
「やっぱりー! た、誰か助けてー!」
「……さがってて、ピコリ……まもる……」
まずイバラはウチを背後にやり、二丁拳銃を構える。
「やれやれ、品格を落とすのも上手だな、アンタ」
次にトツカは呆れつつ、目を輝かせ、体中からバチバチ言わせる。
「けど、今回も出血大サービスしてやりゃ、反省するっスよ」
そしてワノは周りに沢山のコウモリを召喚する。
「貴様の誉れ……ここに汚す! 僕の罪で!」
最後にネロアが黒い禍々しい剣を構え、これにて新キャラ四人が臨戦状態になった。
……家の玄関で。
「強がってられるのも今のうちじゃぞ……何せこれを食らうのだからなのじゃ! 『導く火のブートストラップ』!」
ルシェヌの火魔法が、ウチらに容赦なく放たれ、ウチ以外の四人が放った技と激突する。
そしてその衝撃で、ウチの家は、数話前に引っ越したばかりの家は、嘘みたいに爆発したのでした。
「爆発オチなんてサイテー!」
【缶】
「ピコリ、起きろ。今日はゆっくり寝すぎだ」
「ふぁ〜、ん、サバキ姉さんだ。あれ、ネロアは、ワノは、イバラは、トツカは?」
「誰だそいつらは?」
「ウッソ、夢オチ! ……もう、ベタなオチの上塗りじゃんこれ!」
【今度こそ完】




