第40話 満月姉妹withゲーム 〜VRMMO・後編〜
昇り立ての日が燦々と輝く早朝。
将軍ストレイに集められた総数四千人の軍がゾロゾロと街を出て、数キロ進んだ先にある川を前に布陣した。
ここは戦場予定地。宝をドヴァチリン国へと奪い去られた怒りから、二万の大軍を連れた隣国の軍を待ち構える場所である。
「あ、そう言えば結局ゲーム内で一晩経ってるけど、これ現実だと大丈夫なのかい?」
「大丈夫だよマジナ姉さん。このゲーム内の時間は、現実の時間よりも早く進むようになってるから、多分数時間ぐらいしか経ってないと思うよ。体感時間は一緒に感じられるけど」
「ならお母さんに迷惑かけることはないのじゃ! あんしんあんしんなのじゃ」
「この戦も安心できれば、なお良いのだがな……」
サバキが危惧するのも致し方ない。
二万を四千でどうにかするには何らかの策がいる、しかしこの軍は、結局ここに至るまでも、何も考えていなかったのだ。
ユノスは尋ねる。
「コーリンお姉ちゃん、厳島の戦いでは、お父さんはどうやって勝ったの?」
「確か、狭い島に相手を誘導して、すし詰め状態で身動きが取れなくなった所を、囲んで叩いたな」
「狭い島……じゃないよねー、ここは。マジ無理じゃねこれ、フレミーのコスプレして街出歩く並にさ」
ルシェヌは閃く。
「でも川はあるのじゃ! そうじゃ! 織田信長がやったように鉄砲をバンバン撃ちまくるのじゃ! そうすれば勝てるのじゃ!」
「あ、鉄砲はありませんね。なんせお金がない物で……」
満月姉妹の話に興味を持ち、やって来たストレイは、申し訳なさそうに言った。
「そうだストレイ殿。あなたはこの戦をどう動かす気でしょうか?」
「この川を渡る際、動きが鈍るでしょうからそれを弓で撃つ。
それと今急ピッチで作ってる木塀を用いて粘って、相手が疲弊したところで話をする……とのような作戦を考えていました」
「代案が言えないのに反論して申し訳ないが、二万の大軍がそれで怯むとは到底思えない。単純に物量で押されて負けるのが筋だろう」
「そうですか……ではどうしましょう」
ここでマジナが思わせぶりに言う。
「要するに真っ向勝負は到底勝てないってことでしょこれ? なら仕方ない、ここは私が一肌脱ぐしかないね」
「一肌脱ぐって……何?」
「それは後のお楽しみ。あと、姉御にも、ちょっと頑張ってもらおっかなー?」
*
昼間近、隣国の軍はついにストレイ軍の前に現れ、
「全軍、随時かかれー!」
即、突撃を開始した。
「うぉぉぉ! 一番乗りはこの俺だぁぁぁ!」
隣国軍の先駆け大将が、川の向こうにある、塀と幕で覆われたストレイの陣へと駆けていく。
その間に、コーリン率いる精鋭三百が立ちはだかる。
「行かせねぇよ、大将首のとこにはよぉ!」
「つけあがるなぁ!」
先駆け大将の一突きがコーリンに迫る。だがコーリンは、ただ首をかしげてそれをかわし、先駆け大将がのめりこんだ所で、一刀を浴びせ倒した。
「嘘だっ、あの方がこんな早く……」
「弔いを! ただちに仇討ちを!」
大将を討たれ、動揺しまくる兵達は、引き腰ながらもコーリンに立ち向かう。
コーリンはそれを紙切れのようにズバズバと切り刻んでいく。
「震撼剣は使えないが、どうやらゲームでも素の力量は活かせるみたいだ……おら来いよ! このコーリンが貴様らをズタンズパン刻んでやらぁ!」
後続の部隊もコーリンに目を引かれ、功を求めて討伐しようと大将に続く。そして、負の意味で続いてしまった。
これに隣国の王はカンカンに苛立つ。
「何をしてるみんな! 忘れるな! 俺らの今のメインターゲットは後ろの大将だ! おら、わかったらあのサムライ女を避けて行け!」
「今だ! 是が非でも喰らいつけ!」
ストレイの号令が下され、サバキ、ユノス、ピコリ、ルシェヌがそれぞれ属する四つの部隊が、凄まじい速度で隣国軍の各所に突撃し、隣国軍を混乱させる。
「しまっ、俺もサムライ女に注目しすぎたみたいだ! もうこうなったら、おい、ええと、し、し、周……」
「周瑜、字を公瑾なのだ! いい加減名前を覚えるのだ!」
「わかったわかった! どうやら俺はここまでだ! 後の指揮は全部お前に任せる! てなわけで俺は、どっかで怯えてる!」
「はぁ……最初の『俺が一息に踏み潰してやる!』発言は何だったのだ? まぁ、いいのだ、いよいよボクたちの出番なのだ!」
四方面攻撃を受け、混乱する隣国軍から、一つの部隊が飛び出し、コーリンに迫る。
そのまとめ役――ボサボサな橙髪の女は、己が叫びを戦場に轟かせる。
「おらぁー! 終戦の鬨だぜぇぇぇ!」
「また威勢がいいのが来たか。よし、こい、コーリンの首はここにあるぜ!」
橙髪の女は水を纏わせた盾を、高速回転させて投げる。コーリンはそれを剣で受け、歯を食いしばった後に弾き返す。
「重いッ……!? ほう、ただ者じゃないなお前! 名前が知りたい!」
「孫呉の都督の一人! 呂子明!」
「なっ、呂子明……呂蒙だと! 馬鹿なっ!」
その名を聞き、豪胆な彼女にしては珍しく、すこぶる動揺するコーリン。そこに呂蒙のシールドバッシュが来る。
コーリンは慌ててひらりとかわし、側面より剣閃。
呂蒙は盾を持っていない方の手より、水の刃を突き出し、その剣を粉砕する。
「やべっ、ちっ、こうなりゃこうだ!」
コーリンはまだ残っていた剣柄を、呂蒙の顔へぶん投げ、一瞬の目くらましにする。
その隙に味方から、二振りの剣を補給し、がむしゃらに呂蒙へ振り回す。じりじりと防御を崩す。
「ヤケで来るか……いや、にしては勇猛しすぎるし、技の芯がしっかりしている気がする。中々の手合だな、こいつ」
その一方で二人の持ち兵も、主の奮戦と遜色ないように。と、言わんばかりに、一進一退の攻防を、主の周りで、大将の陣前で広げていた。
だが、隣国本体に奇襲をしかけた四部隊の方は、
「おらー、もっと落ち着いて行くのだ!」
周瑜の繊細な指揮が隣国軍のただならぬ連携を形成し、四部隊を的確に迎撃していた。
「ああすみません、もう無理これー! 鋼太郎のコスプレして街出歩く並に無理ー!」
「弱音を吐くでないのじゃ、ピコリ!」
「しかし、かといって、この根本から狂った負け戦――覆せるかと問われれば、口を濁すしかない……マジナ殿がどうにかしない限り!」
この一転した戦局に、隣国の王は手を叩いて喜んだ。
「いいぞ、いいぞ! 周瑜! 俺の手元にあの宝が戻るの時は近い!」
「はぁ、調子のいい奴なのだ……」
「本当だよ、この間に内側からかき乱されたらどう対処するんだろうね?」
「なのだなのだ……って、今の誰の台詞なのだ!?」
「怪盗サスペンス……と、覚えて置いてください」
と、言いつつマジナは周瑜の背後から飛びかかり、手にした短剣を突き立てる。
「危ない、周瑜殿!」
その寸前、マジナの方へ火の玉が飛ぶ。当人は持ち前の反射神経を持ってして避ける。
「小さい癖によくやるねぇ? 危うくぶちこまれる所だったよ、弾丸を」
と、槍のようで銃でもある武器を構える、小柄で紫髪のボーイッシュな少女にマジナは言う。
「君名前は?」
「陸遜、字を伯言といいます。そしてもう手前に言うことはありません!」
再び陸遜はマジナへ発砲する。
マジナはヒラヒラとそれをかわし、機を見計らい周瑜を刺そうとするも、肝心の周瑜もそこまでやわではない。
「食らうのだ、重ヒョウ剣を!」
周瑜は、幾多の刃に分裂する奇妙な剣を振るい、マジナに反撃する。
「二体一……現実世界ならカードでどうとでも出来たんだけど、今はそれがないからなぁ。ここまでされるとつらいのなんの……」
「まさか貴様も弱音を吐くのかえ、マジナ!」
そこへ、ルシェヌがやってくる。
同時に、周瑜は剣を形どった氷塊を、陸遜はスイカぐらいの大きさの火の玉を、個々の得物で打ち消した。
「あ、あぶなかったのだ」
「まだ手に衝撃が残る……あの少女、とんでもない魔法の使い手です」
「いいや、これは弱音じゃなくて、愚痴だよぐーち。というよりルシェヌ、君は能力が使えるのかい?」
「なんかひょっとしたらと思って気合入れてやってみたら、目の前に『〇〇習得!』って表記がズラーッと出てきて使えるようになったのじゃ!
現実のヤツより威力はすこぶる弱いが……貴様らをぶっ飛ばすにはこれで十分なのじゃ!」
「気合で魔法を覚えた!? 陸遜、とんでもない奴が来たのだ! 用心するのだ!」
「のだのだうるさいのじゃ! そこの黄緑髪の女!」
「貴様に言われたくないのだ! さっきから年寄りのようにのじゃのじゃほざきやがってなのだ!」
「誰が年寄りなのじゃ! 魔王じゃ魔王!」
「ならばこちらは孫呉の都督、それも大都督なのだ!」
と、ルシェヌと周瑜が気張っている間、マジナと陸遜は、
「……君、あの人の部下かい? だとしたら日頃も大変そうだね」
「言いたくありません……ただ、手前も共感は出来ますよね」
一方その頃、コーリンと呂蒙の戦いの方は、
「さあ渡り切れ! そして陣の大将を討ち取れ!」
未だ互角だった。ただ兵士同士の対決は、後詰めが多い呂蒙側が勝り、結果数名の渡河を許してしまう。
「ぐぬぬ……」
「お、どうした? 追わなくていいのか、このままでは大将は……」
「オレはお前さえどうにかできればそれでいい、後は全部空っぽでいいんだよ!」
「ああっ、空っぽだ!」
と、陣に侵入できた兵は叫ぶ。そこの無人様を見て。
「あの人は偽装だっただと!? なら、大将はどこにいるんだ!」
呂蒙は慌てて探しに行こうと、適当にコーリンを突き放し、踵を返して敵本陣に飛び込もうと。
その時、撤退を意味する楽器の音が鳴る。
直後、遠くから周瑜がこう叫んでくる。
「敵の総大将が行方不明なのはその様子からしてわかるのだ! かといってここで探しまわるのは軍がバラけて不都合なのだ!
だから今日は一度体勢を立て直すのだ! そうすれば総大将ももう一度姿を現すはずなのだ!」
「なるほど、流石は周瑜殿! よし、コーリン、名前は覚えた! 続きはまた今度だ!」
かくて両軍は臨戦態勢を解き、始めの様に川を挟んでにらみ合うように布陣し直した。
「ああ、助かった……マジで死ぬかと思った……」
ピコリは胸をなでおろし、現状を喜ぶ。
一方、大将ストレイは、浮かない顔をしていた。
「俺を探そうと敵軍が散開した所で、俺の部隊が一気に突き刺さりに行く……まさかあそこで手を引かれるとは。敵の勘が良すぎる……」
と、ストレイは、傷だらけの自兵を見てつぶやく。
マジナはストレイの肩をポンポン叩いてあげる。
「気の毒だったね……ま、明日はツイてたらいいなってことにしとこ……ごめんとも言い切れないなぁ。私達の軍、だいぶ減っちゃったからね……」
言っていいか悪いか。少々考えた末に、コーリンは正直に言う。
「対してあちらはあの篝火の多さからして、まだ数がありそうだ。
もう一戦やるとしたら、かなり辛くなりそうだぞ。おまけに、周瑜、呂蒙、陸遜……三国志において、孫呉を支えた英傑達がいるなんて……」
「へぇ、コーリン姉さんが三国志なんて難しいの知っているなんて意外」
と、ピコリがつぶやくと、コーリンはちょっとだけムッとする。
「オレ田たち武士にとって三国志は教科書みたいなものだ。
だからオレは三国志をよく知っている。最終的な勝利国は魏呉蜀のいずれでもないこともやるせないが知っている。
そして、オレたち武士にとって、三国志の英傑は憧れの的だ!
赤壁にて曹魏の覇権に待ったをかけた周瑜。関羽に金輪際圧倒されず論戦を制した魯粛。国がため努力と仁義を貫いた呂蒙、劉備を正真正銘の敗北で焦がした陸遜……その他みんなみーんなオレたちの憧れの的だ!」
コーリンは、呂蒙の盾を受け止めた衝撃の残渣が残っているような気がする左手を一瞥して、
「正直色んな意味で震えが止まらねぇ……まさかこんな所で、あんな英傑達に会って戦ったんだからよ。
……けど、どうして全員女なんだろう?」
「あれは、それが元ネタのNPCかなんかだよ多分」
そうコーリンにツッコミを入れた後、ピコリは恐怖百パーセントで震える。
「もう完敗でしょこれ! アドミストレータのコスプレして街出歩く並にさ!」
「ピコリ、お前はとことん弱気だなぁ」
ストレイはピコリのことを気遣う名目で、本音を吐く。
「俺もそんな気はしてた。ひょっとしたら、この戦いって、最初っから無茶だったのかなって……」
「オレは無茶とは言わねぇぞ! なんせ、はやしたてたのはオレだからな! それに、まだどうにもならないっていうことは、まだわからない! だろ、お前ら……ってあれ」
今になってコーリンは気づいた。ここに、サバキとユノスの姿が無いのだ。
「サバキとユノスはどこに行った!?」
「それさっきから気になってたのじゃ! 遅いのじゃコーリン!」
「まさか、やっぱり途中で……」
サバキとユノスの行き先が、とてつもなく暗いような気がして、ピコリは洗濯機ぐらい震える。
一方、マジナは沈着冷静に、
「ユノスは引き際がわかるし、サバキは強いから、多分その線は無いはずだろうけど……こっちも確定してるとは言い切れないからね……」
ストレイは言う。
「……わかった」
「何がかえ?」
「ここまでやったんだ。仮にのこのこ帰ったところで、みんなに嘲笑われるだけだ。
ならせめて、やるだけやる……コーリンさん、マジナさん、ピコリさん、ルシェヌさん……付き合ってくれますか!?」
四人は、何も言わず、ただ首を縦に振った。
「よし、みんな同感だな。偉いぞピコリ」
「ま、よくよく考えればゲームだし……どうせウチは強制参加だろうし……」
「メタいこと言わないでくださいよ」
と、ストレイは突っ込んだ。
*
翌日。ストレイ軍は、コーリン達は、再び隣国軍と向き合った。
「うっわ……やっぱまだ万ぐらいいる……無理じゃねこれ、漆黒の騎士のコスプレして街出歩く並に無理じゃね……?」
隣国の王は言った。
「まだ戦うか! 昨日は散々痛手を受けた癖に! 今度こそはこの俺がケチョンケチョンに……」
周瑜は、隣国の王を突き飛ばして言う。
「どうせ何もしない癖に偉そうにほざくななのだ! コホン、ドヴァチリン軍! こちらとて貴様らと戦うのはつらいのだ! ここは背を向けても構わんのだ! 我々は何もしないのだ!」
コーリンは言う。
「何を抜かしやがる! もう勝った気でいやがるとは、思ったより傲慢なんだぁ周瑜さんよぉ!」
「傲慢……ふん、好きなだけ言うのだ! ボクは口喧嘩などという阿呆の真似はしないのだ!」
この時、マジナと陸遜は思った。
((昨日ガッツリしてたじゃん))
「ストレイさん! もういいか……かかっても!」
「いい、それで、どうにかなるなら、それでいい!」
「うっし、ならお前ら行くぞ! この劣勢、意地でも覆してやらぁ!」
そしてついに、このコーリンの一声の元、ストレイ軍は最後の大勝負に出る……
「待て! コーリン殿!」
……前に、サバキとユノスが、百人くらいの隣国兵を連れて、両軍の間に入る。
「やったようですね」
「流石だぜ」
「けど遅かったのだ……」
あまり動揺しない孫呉の都督三人と違って、動揺しまくりの隣国の王は、
「な、何者だお前たち!?」
するとその百人の中から、三人の縄に巻かれた男――一人は西洋の王風の男、一人はローマ皇帝風の男、一人は中国の皇帝風の男。どいつもこいつもまるで冴えない――が蹴飛ばされた。
「陛下、かの窃盗犯を捕まえてきたれすよ」
と、その男たちを蹴飛ばした水色髪の女性――名を魯粛、字を子敬――が、宝箱を抱えて現れる。
同時に、サバキとユノスはコーリンの元に帰る。
「どこに行ってたのかい、君たち?」
「ドヴァチリン国だよ。魯粛さんが戦の最中にボクに『この戦の原因である宝物と窃盗犯をどうにかしないれすか?』って話しかけてきたから、それに乗ったんだよ」
「そして、ユノス殿と、話を聞いて協力を求められた自分はこっそり戦を抜け出し、魯粛殿の部隊をドヴァチリン国へ誘導し――未だに論争する将軍達を脅し、奴らと宝物を持ち帰ってきたのだ」
「魯粛さんは凄いんだよ。ああのほほんとして見えて、すごく芯のある女の人なんだよ」
「……でもそれを信じるユノスも凄いけどね」
「あの人を信じたっていうよりは、まずみんなが本当にしたい『盗人と宝をあるべき場所に返すこと』だと信じたんだよ」
両軍の目線は、一斉に三人の窃盗犯に向いた。
隣国の王は、憤怒の形相で三人に迫り、
「お前ら……せっかく俺が、路頭に迷ってくたばりかけてたお前らを雇ってやったというのに、こう仇で返すとはどういうつもりだ!」
「い、いえこれは、その、私たちにも深い訳がありまして」
「我らも元は一国の君主だったのだ。だから、諸事情で国を滅ぼされたのだ」
「故に、朕らはそれを用い国を再興しようとしたのだ。頼む、共に泣いてくれ」
「悪い、今の全然聞いてなかった。さっきからお前らを檻にブチ込むこと以外考えてないからよぉ……」
「「「ひっ、お、お助けを〜〜!!!」」」
かくて、この戦は魯粛の機転と、ユノスとサバキの協力により、比較的奇麗に収まった。
その後、雇われ将である孫呉の四人は、暫しドヴァチリン国で休んだ後、
「アタシはもう少しコーリンと戦ってもよかったんだがよ」
「それで嫌な結果呼んでも俺は知りませんけどね、呂蒙殿」
「ストレイ殿、この度はご迷惑おかけしれした。あの王様には弁償しろと強く言っておきれしたので……」
「それじゃあかねてからの通り、ボク達はまた流浪に行くのだ。満月の姉妹達も、元気でやるのだ」
満月家の六人に見送られ、去っていった。
「はい、そちらも頑張ってください!」
「コーリン姉さん、別にこの人たち、武将ご本人じゃないから丁寧語じゃなくてもいいんだよ。別に」
「陸遜君も、末永く上司と付き合っておくれよー」
「さて、これでお仕事完了だね」
「ふっ、やっぱりVRって奴は楽しかったのじゃ」
「ルシェヌ殿。貴様は、最初の方に帰りたがってたくせに……」
孫呉の都督の皆様の見送りが終わった後、六人は満足した様子で、ようやくログアウトするのだった。
*
「ただいまー……え!?」
チヨが帰宅した時、彼女は手に持ってたカバンをドスッと落とし、ピーンと固まる。
彼女の視界で、自分の娘たちがバイクのヘルメットのようなものを被って、リビングでとっ散らかって寝ていたのだから。
「……相当暇だったんだね、みんな」
この後、チヨはこのヘルメットにただならぬ恐怖心を持ち、家族会議を経て質に入れたそうな。
「ま、またこういう物語が楽しみたいんなら、『呉の評価が低すぎるーーNPC都督達のVRMMO東奔西走記ーー』を読みに行けばいっか」
【完】




