↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バイバイまたね、クドリャフカ  作者: くろのあずさ
コルネフォロスの本音―ヘルクレス座―
PR
23/36

3

「私は……お父さんの大事な人を奪っちゃったんだ」


 いつも明るくパワフルで家の中心だったお母さん。素直で可愛らしくて優しいまなか。そんなふたりが先に逝って、私が残ってしまった。


 お願い、許して。私ももうすぐ逝くから――。


「だから?」


 ぼそぼそと事情を話すと、遮るような声が響く。反射的に顔を上げれば穂高はまっすぐに私を見据えていた。


「全部、ほのかの推測だろ? お父さんがそう言ったのか?」


 鋭い指摘に、私は一瞬唇を震わせる。


「言っては、ない。けど私のことをよくは思ってないよ」


 いつの間に、お互い避けるようになってしまったんだろう。顔を合わせてもさっきみたいな感じだ。


「それも含めて、聞いてみればいい。お父さんの気持ちはお父さんしか知らないんだから」


 想像して私は即座に首を横に振る。


「やだよ。もういいの。なにを話してもお母さんとまなかは返ってこない」


「そうだな。でも、ほのかもお父さんもまだ生きてる。なにかが変わるかもしれない」


 今さらなにが変わるの? 変わってどうするの? どうせ世界はもう終わるのに。それなのに――。


『両親が亡くなったのは自分のせいだとか、ばちとか思うなよ。親は子どもが幸せだったらいいんだ』


 お父さんはどうなんだろう。なにを思ってるの?


 私は穂高から視線を逸らし、うつむく。


「……もしも話したとして、本当にお父さんに嫌われてたら、いらないって言われたら、私はどうしたらいい?」


 穂高はなにも答えない。しかし不意に腕を引かれ、私は顔を上げた。


「俺のものになればいいよ」


 これでもかというくらい目を開いて、私は固まった。穂高はふっと微笑んで私の頭を撫でる。


「大丈夫。俺がいるから」


 手を繋いだまま、彼は私に背中を向けて歩き出した。ぎこちなく私も続く。


「お父さんのところに行ってたら、天文台行けなくなっちゃうよ」


「いいよ。今はこっちが大事」


 目の奥がじんわりと熱くなる。胸が詰まって息も止まりそう。


 地球が終わりそうなときに、人の事情に首を突っ込んで、お人好しなのにもほどがある。


『終わりそうなんだから好きなことをしない方が馬鹿だろ』


 ああ言ってたのに。突然押しかけて、なにげなく口にした私の希望を叶えようとして。


 なんなの? なんで私に優しくするの?


 でも穂高がそばにいるから、一緒にいるから、諦めていた私が今、こうやって一歩踏み出せるんだ。変われるかもしれないって思える。


 繋がれている手に力を込める。穂高の手は相変わらず温かかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。