001-⑧ ニューヨーカー(完結)
羽二重母娘から目をそらした。
真逆じゃないような気がした。
もし、真逆だとしても、
その両端は繋がっていて、もしかしてバランスを保っているんじゃないか?
そして、繋がっているのなら、その両端は、入れ替えても、
通じる気がする。そういうことなんだろう?
熱すぎる湯が私を茹でる。
思考は追いつくことを放棄したみたいだ。
湯船の中で、自分の重みを感じられなくなってきた。
サウナ室の扉が背後で開く。
トマトさんが熱気と共に姿を現し、隣の水風呂に足を浸して、
ふう、と漏らした。
そして、ゆっくり上半身を沈めていく。
頭が熱いせいで目が熱いのか、
目が熱いから頭も熱いのか、
わからないけど、私も水風呂へ移った。
トマトさんと目が合う。
にっこり笑って、
「若い人はいいわね。
いくらでも入っていられるでしょう?」
笑って返したけど、どこを見たらいいのか
わからなかった。
トマトさんの皺皺の肌と、私の肌は、全然違う生き物みたいに見えた。
けど、私もいずれは皺皺のトマトになる。多分。
若い人はいいわね。
いくらでも。
銭湯で、こんなに気持ちになったの、
初めてだった。
(おしまい)
第二エピソードも書きたいんですが、
連載『エミリーミレットの恋人たち』と、他短編にちょっと集中します。
毎日ありませんか? 初体験て。
都内に引っ越してきて、そういうことばっかりです。
だいぶ転んでる連載を書くのも、初体験です。
くう。
がんばります。