001-⑦ ニューヨーカー
初体験についての短編集。
『私』は、引っ越してきたばかりの町で
初めての銭湯への向かいます。
浴場にいる人たちを、ちょこっと観察。
『私』の『初体験』を、
あなたと半分こ。
トマトさんは、再度ふわり微笑みかけてくれながら、
ゆっくりと立ち上がり、
湯船へと向かっていった。
トマトさんを追いかけるわけでは決してないんだけど、
使い終えたシャンプーやら櫛やらを整頓して、脇に寄せると、
私も浴槽へ向かった。
浴場で一番広い湯船に、二人の羽二重餅がいた。
そこで、まったく見る準備のなかった光景をみた。
足を伸ばしてお風呂に入りたかっただけ、
水圧と水蒸気で、体を休めたかっただけ。
460円の贅沢。
大きな鏡で、自分の裸を映して、まだ大丈夫、だなんて気休め的安堵。
イージーに深呼吸して体を温めたかった。
別にこんな壮大な光景見たくなかった。
逃げ込むみたいに、羽二重餅たちの隣の高温湯船に肩まで浸かった。
タイル壁挟んで隣の湯船の羽二重母子。
総白髪の80歳は越えてそうな母。
還暦あたりに見える娘。
湯船の中で、頬の赤くなる位置が同じだった。
湯の中で、
娘は、母の足の筋を伸ばし、母の肩甲骨を剥がし、
背中をさすっていた。
リハビリなんて、カタカナエーゴのハセイゴでは表せない。
もっと、赤ちゃんがママの顔見て微笑むくらい、
生々しくて、自然な営み。
娘だって、半世紀以上まえは赤ちゃんで、
母だって、ママで、娘の体を洗ってたんだと思う。
私がいま見ているのは真逆の光景。
真逆?
真逆?
本当に真逆?
あと1話くらいでしょうか。