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僕の初体験を、君と半分こ  作者: Emily Millet
2/9

001 ニューヨーカー(入浴家)

初体験について。


たとえば、あなたが陶芸教室に初めて行ったとして、

本当に初体験が待っているかというと、そんなことないかもしれない。


幼稚園のねんど細工が蘇ったり、陶芸教室の先生の誰かに似た目線や話し方、

場の空気、天井の高さ、椅子の座り心地。


どこかで感じたことのある感覚がそこにはあって、

あまり初体験でない何かになってしまうこともあると思う。

その逆もあると思う。


細分化された感覚としての『初めての体験』、

大きな写真として捉えられた『初めての体験』。

『初体験』ってことにしてやるか、上手な演技も混ざるかもしれません。

(そんな中でも確かに在る『初めて』を編みます。)


主人公たちの『初めて』を、丁寧に編んで、


読み手になってくれる『君』と半分こ、


できたら素敵かなって。


トウキョウに引っ越してきて4か月が経つ梅雨入り時。

家のちかくにセントウがあると知った。


ふくらはぎの乳酸がたまって倦怠感に満たされた六月中旬、

私の住む地域は、低所得エリアで大衆浴場が多いとインターネットで知った。

よく言えば『下町』、悪く言えば、なんて。悪く言っても仕方ないので言わないでおく。

よいもわるいも、私の都合であって、私はそんなことを半分こしたいわけじゃない。


つづけよう。


最後に銭湯にいったのは、小学生のころ、実家のお風呂のボイラーが故障した時以来だ。

私の地元は総会屋事務所と風俗街が近く、肝試しさながら母と手を繋いで二週間銭湯へ通った。

スーパー銭湯、温泉、スパエステにはその後の人生で何度か行ったけど、

銭湯はもう二十年以上ご無沙汰だ。


足を伸ばして風呂につかりたい、浮腫みの取れない下半身をどうにかしたい。

遠足気分でトラベル用チューブにシャンプーを小分けにし、タオルをリュックに詰め込んだ。

歯ブラシは要らないな、ドライヤーは設備としてついてるんだっけか。一応持っていくか。

慣れた自転車で慣れない道を、地図アプリを観ながら進む。


まだつかないな。


次回は7/7Sundayです。

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