000 ~序章~初体験について
序章です。
連載の事前説明。準備運動。下ごしらえ。
クラウチングスタートで、脚の感覚を確かめるプロセス。
Emilyは速く走れないけど、丁寧に踏み込んで、歩くよりは早いよね、自転車よりは遅いけど。
って、
笑ってもらえたら嬉しいです。
序章
『初体験』についての物語を集めてみた。
たとえば、あなたが陶芸教室に初めて行ったとして、
本当に初体験が待っているかというと、そんなことないかもしれない。
指の感触から幼稚園のねんど細工が蘇ったり、
陶芸教室の先生の誰かに似た目線や話し方を耳にしたり、
ほかにも、場の空気、天井の高さ、椅子の座り心地。
どこかで感じたことのある感覚がそこにはあって、
初めて出掛けた陶芸教室のはずなのに、あまり初体験でない何かになってしまうこともあると思う。
その逆もしかりで、
近所のミスタードーナツで、オールドファッションを頬張り、
見たことも聞いたこともないナニカに出くわす『初体験』に襲われるときもあるかもしれない。
細分化された感覚としての『初めての体験』、
大きな写真として捉えられた『初めての体験』。
『初体験』ってことにしてやるか、って上手な演技も混ざるかもしれない。
(そんな中でも確かに在る『初めて』を編むことにする。)
主人公たちの『初めて』を、丁寧に編んで、
読み手になってくれる『君』と半分こ、
できたら素敵かなって。
取材させてくれた友人たちへ
心から、ありがとう。