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修理

  私は青年の腕を持って帰った。グスタフはまだぐっすりと眠っていた。


——今からあなたの腕を綺麗なものにしてあげるからね


 グスタフの腐り落ちてしまいそうな腕を見る。昔は立派に私を守ってくれた腕も、もうボロボロ。


 でも大丈夫。


 心優しい村の青年が「どうぞ、私の腕をお使いください」と新鮮な腕を提供してくれたのだから。


 作業に取りかかる前にグスタフが本当にしっかりと眠っているのか観察する。


 彼の胸は規則正しく上下していてしっかりと眠っているようだった。


 以前、彼の視覚を奪ったときと一緒。


 彼の体をゆっさゆっさと揺らす。それでも彼は起きることはない。


 ――大丈夫そうだね。これから新しい腕をグスタフにつけてあげるから。


 私はのこぎりをグスタフの肩に当てる。墓場で青年の腕を切り落としたのこぎりだ。今度はグスタフの腕を切り落とす番だ。


 のこぎりを上下に動かしてグスタフの腕を切り取っていった。


 黙々とのこぎりを動かす。


 あまりグスタフに痛みを与えないように優しく、でも急いで、のこぎりの刃を進める。


 切っている最中にグスタフは身じろぎをしたのだけど、起きることはなかった。薬が効いているみたい。


 グスタフの腕は腐りかけているせいか、村の青年の腕より抵抗なくのこぎりの刃が進んでいく。


 ほどなくしてグスタフの腕は体から離れた。


 ――彼の体の一部。大事に保存しないと……


 私はこの大切な宝物をどうやって保管しようかと頭を巡らす。


 ――やっぱり涼しいところに冷やして保管するのがいいだろう。村で氷をたくさん買ってこようか…… でも氷なんて村で買えるだろうか。街では魔法使いが作った氷が売られていて買うことができたけど、あんな小さな村では氷を売っていなかった気がする……どうしよう。


 私は考えながらも手を動かして、グスタフと青年の腕をくっつける準備を進める。


 グスタフの肩に村の青年の腕をあてがってみた。予想通りグスタフの肩口と青年の腕の太さが同じ大きさぐらいでぴったりとくっつきそうだった。


 私は裁縫道具を取り出すと、針に糸を通した。


 私はブスリブスリとグスタフの肩と青年の右腕に針を交互に刺して、糸をくぐらせた。黙々と私はグスタフの肩と村の青年の腕を縫い合わせていく。


 ―-できた。


 グスタフの右肩と青年の右腕を何とか縫い合わせる事ができた。医者ではないので縫い目がぎこちないけど、何とか繋がっているので良しとしよう。最悪、癒しを施す間ずれなければいいのだから。


 私はグスタフの肩口に手をかざすと祈りの言葉を口にした。


「癒やしの女神よ、この者を苦しみから解放したまえ、この者の傷を癒やし、病を追い出したまえ――」


 私の手のひらからふわりと光の玉が零れ落ち、グスタフの肩口に落ちた。


 グスタフの切断された肩口からみるみると細胞が増えていき、青年の腕とつながっていった。


 彼の新しい腕に触れてみる。ほのかに温かみを感じた。


――あとはこの腕が動いてくれたらいいんだけど……


 グスタフは寝返りをうつこともなくぐっすりと眠りに落ちているため、今は確認できない。明日しっかりと動いてくれることを祈ろう。


 私は切り取ったグスタフの右腕を取り上げると、保管場所を探すことにした。


        〇


「おはよう、グスタフ」


「ふああ、おはようございます」


 次の日の朝、彼が目を覚ますのを確認すると、私はすぐに声をかけた。


 いつ彼が目を覚ましてもいいように、一日中彼の顔を眺めていた。


 私が彼の眺めていた理由、それは、もしグスタフの新しい右腕に違和感があるのなら、彼の身に何が起こったのか彼に悟られる前に対処しなければならないからだ。


 昨日は墓荒らしをしてグスタフの腕の移植、と重労働を行って疲れていたが、私の愛おしいグスタフの顔を眺めていることで寝落ちすることはなかった。


 グスタフは両手を挙げてぐっと伸びをする。そう両手で。


 彼の右腕の挙動に不自然な点はないか、私はじっと観察した。彼の右腕はなめらかに動いており、別人の腕がくっついているとは思えない。


 私の癒しの祈りが上手く働いたようだ。


「昨日はなんだかぐっすりと眠れました。疲れているのかな」


 グスタフが言ってきた。


「きっとそうなんでしょう。今日はゆっくりとなさったらどうかしら」


 私はそっと提案する。ぱっと見たところグスタフの右腕は問題なくくっついているようだが、今日一日くらいは大事をとっておとなしくしてほしい。


 グスタフは私の言葉に従って一日中おとなしく過ごし、私は彼のお世話をいっぱいしてあげた。


 その日のグスタフの夕飯は睡眠薬入りで、私は夜中に左腕を交換してあげた。次の日は、右足。その次の日は左足を交換してあげた。


 全然グスタフは気が付かず、むしろ体の調子がいいと喜んでいた。


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