光をなくしてから
光を失ってからはグスタフは家でおとなしく座っていることが多くなった。どこを見るでもなくいつもぼうっと座っている姿は痛々しかった。
このままでは段々と体が衰えてしまう。ずっと同じ姿勢で座っているのもよくない。少しはグスタフも体を動かさないと。
彼の視力を奪ったのは私だが、彼には笑顔でいてほしいのだ。今までのように笑みを私に向けてほしいのだ。
「ねえ外に散歩しない」
「でも私は目が見えませんから」
「大丈夫。私が手伝ってあげる。だから、ね」
グスタフの手を取って立ち上がらせてあげる。
「こっちだよ」
グスタフの手を引いて家の外に導く。
ドアをくぐって外に出た。グスタフに日の光が当たる。
最近グスタフはこもってばかりだったので、日の光に当たるのも久しぶりのはずだった。グスタフの顔に笑みが浮かぶ。
「足元気を付けてね」
グスタフと並んでゆっくりと歩く。グスタフが歩きやすいようにできるだけ平らになっている地面を歩く。ひっかけて転んでしまうような木の根や石はよけて歩いた。
「気持ちいいね」
「ええ」
〇
彼の目が見えなくなってから、何をするにしても彼を助けてあげる事になった。食事もグスタフ一人では食べるのが大変そうだった。何処に何があるのか、どうやったらつかむことができるのか、目の見えない彼には一苦労だ。
だから私が食べさせてあげる。
グスタフが一口で食べれる量をスプーンですくって、熱くないように冷ましてあげて、彼の口に運んであげる。
大変だけど、彼が感謝して喜んでくれるから私は満足だった。
「グスタフ、どうぞ」
目の見えない彼のために鍋をよそってあげる。彼は口を開けて、私がスプーンを差し入れる。
「美味しい?」
「美味しいです」
私に頼り切ったグスタフ。とってもかわいい。
小さい頃はいつもそうだった。私がお姉ちゃんとして孤児院にいるグスタフの世話をしてあげた。また彼の世話をしてあげるのだ。
彼が美味しそうに食べている間に、彼の体を観察する。
彼の体の腐敗は一向に収まらない。なんとか癒しの祈りでだましだまし彼の体を維持していたが、それももう限界だ。体の末端の腐敗がひどい。右腕なんてもうすぐ腐り落ちてしまいそう。
彼は目が見えないから、自分の体がどうなっているのか気づかない。でもこのまま腐っていくのを放置してしまえば、グスタフとずっと一緒に暮らすこともできないだろう。
なんとか解決策を見つけないと……。
〇
「いつも本当にありがとうございます」
食事が終わるとグスタフは申し訳なさそうに謝ってきた。
「いいの、私はグスタフの役に立てて嬉しいよ」
「でも」
「気にしないの。私にはたくさん甘えてくれていいの? だって恋人でしょ」




