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村へお買い物

「近くの村に買い物に行ってくるね」


 私はグスタに告げた。


 二人でゆっくりとティータイムを楽しんでいる時だった。私が作ったクッキーをグフタフは美味しいと食べてくれていた。


「買い物?」


「そう。もうすぐ食べ物がなくなってしまいそうなの。だからお買い物に出かけたいの。あと村の皆さんに挨拶もしておきたいし」


 ここ数日は都から出発するときに持ち込んだ食料で過ごすことができていたが、もうすぐなくなってしまう。


 幸いなことにこの別荘の近くにはそこそこの大きさの村があった。食べ物はそこで買うことができるだろう。お父様から頂いたお金が沢山あるので、村で買い物するのに困ることはない。


「そうなんですね。じゃあ一緒にいきましょうか」


 グスタフはゆっくりと立ち上がった。やはり蘇生前よりも全体の動きが緩慢になっている。


「大丈夫?」


「なに、これくらい大丈夫ですよ。ありがとうございます」


 グスタフを村に連れて行ってもいいだろうか……。グスタフはもう死んだ人間。そのことを知っている人間をグスタフの姿を見られると、困ったことになる。


 でも……


 グスタフと二人並んで買い物にいく姿を想像してしまう。二人で何を買うか相談しながら、商品を選ぶ。とても素敵な光景に思えた。


「そう、無理なら言ってよ。私一人でも行ってくることはできるんだから」


「大事な人を一人行かせることなんてできませんよ。それに村の挨拶をするなら二人で行かないと」


「そうよね」


        ○


 私はグスタフとともに村にやってきた。石造りの家々が20軒ばかり建っている村だ。村の周りには麦畑が広がっていた。麦畑では幾人かの村人たちが農作業をやっているのが見えた。


 農作業をしている村人たちの幾人かは、私とグスタフが村にやってくるのに気がついたのか、私たちにいぶかしげな視線を投げかけた。この村では見慣れないものだからいぶかしがっているのだろう。


 体の調子がもとに戻らないグスタフのために、ゆっくりとした歩調で村に入った。


「グスタフ大丈夫?」


「ええ。大丈夫です。けど、情けないですね。なかなかに体が衰えているようです」

 森に囲まれた別荘、もとい、私達の新しい家からこの村まではそんなに距離は離れていない。それでも体の動きが鈍くなっているグスタフには厳しかったようだ。


 村に入りぽてぽてと二人並んで歩く。村の中を歩いていると幾人かの村人とすれ違った。村人はちらちらと私達を私達に視線を投げたあとは、足早に去ってしまう。


 私たちは村人から見るとよそ者だ。あんまり関わりたくないのだろう。


        ○


 グスタフと私はパン屋に入った。


 パンの香りが店内に充満していた。


「こんにちは」


「やあいらっしゃい」


 店内に入ると40代ぐらいのおじさんが私たちを出迎えてくれた。


 パン屋のおじさんはグスタフと私の顔をみると目を丸くして言った。


「あんたたちこの辺じゃ見ない顔だね。いやーこの村に若い人が外からやってくるなんて珍しい」


「最近近くに引っ越してきたんです。素敵な村ですから多くの人がやってくると思ってましたけど……」


 私は笑顔で話す。これからこの村にはお世話になるのだ。なるべく村人たちとは友好的になっておきたかった。


「お嬢さんはうれしいこと言ってくれるね。けど、こんな村に若者がやってくることなんてほとんどないよ。もし来るとしても行商人の人たちくらいだね」


 パン屋のおじさんは気さくに話しかけてくる。


 本当に私たちが珍しいのだろう。


「それで今日はパンを買いに来たのかな。俺が作ったとびっきりうまいパンを買って行ってくれよ」


「まあそれは食べるのが楽しみです。じゃあその自信作とやらをくださいますか。それでいいですね」


 グスタフに確認する。せっかくグスタフと一緒に買い物に来たんだ。私だけで物事を決めるのは良くない。


「ええ、もちろん。クリスティーナのいいようにしてください」


「毎度あり」


 パン屋のおじさんにお金を払い、パンを受け取る。


「そういえばこの村の近くってどこだい?」


「村の北にある森の中です」


「……森の中? どうしてそんな不便で危険なところに? あそこの森の奥には人を丸呑みにしてしまう魔物がいるというぞ。それなら村に住めばいい。こんな美女と美男のカップルなら村のみんなも歓迎するだろうに」


 パン屋のおじさんは首をかしげながら聞いてきた。


 人を丸呑みにしてしまう魔物とは先日遭遇した巨大なイノシシのことだろうか。あれほどのイノシシだったら村人たちに恐れられても不思議じゃない。でも少しばかり人を丸呑みするには大きさが足りない気がした。


 森の奥深くにはもっとおそろしい魔物がいるのだろうか。きっといるのだろう。


 森の中に住むことは危険が伴なう。でも……


「村に住む事は遠慮します。私たち新婚ですの。せっかくの新婚生活ですから誰からも邪魔されたくないんです」


 私だけのグスタフなのだ。誰にも私たちの邪魔はさせない。詮索好きの村人たちに邪魔されてはたまったものではない……


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