蘇生
お父様とベンノさんの遺体は、地面に穴を掘って埋めた。別荘、いいえ、私とグスタフの家からは見えない、少し離れた場所に埋めた。
グスタフは知らなくてもいいことだもの。全部一人でやった。地面もしっかりとならして、ぱっと見ただけだとわからないくらいにごまかした。
今はグスタフを蘇らせようと死霊術の準備を行っていた。部屋のカーテンを締め切り、外からの光は入ってこない。灯された蝋燭だけがほのかに部屋を照らしていた。
グスタフの体を部屋の真ん中に寝かせて、グスタフの体を囲むように大きな六芒星を床にチョークで描いた。星の各頂点には蝋燭を灯していた。
ヘンドリックから買い取った死霊術の材料を鍋でかき混ぜてできた、どろりと粘り気のある緑の液体を私は用意した。虫の死骸や植物の葉を混ぜたものだ。鼻を刺す臭いがするその液体をグスタフの口に注ぎ込んだ。少しばかり溢れてしまったけど気にしない。
――はじめよう
私は禁書に書かれた呪文を唱えた。失敗しないように何度も何度も暗唱した呪文。床に書かれた六芒星の魔法陣は怪しく薄紫色に輝き、私の中に蓄えられている魔力がぐんぐん吸い取られていくのを感じた。
「死の神よ、あなたのもとに旅だった、かの者の魂を返し給え」
最後の呪文を唱えると、魔法陣は一際強く輝き、光は消失した。
――これで成功したはず
死霊術を行った倦怠感に襲われながら、私はグスタフの様子を伺った。
穏やかな表情のグスタフ。
じっと見つめていると、グスタフの目が開いた。グスタフは戸惑ったようにあたりを見渡す。
――グスタフが帰ってきた
「クリスティーナ、ここは? 私はたしかドラゴンに食べられたんじゃ……」
私はあまりの嬉しさにグスタフに飛びついた。
「良かった……帰ってきてくれたんだね」
「クリスティーナ……?ただいま?」