一日目 噂
「でも、あんまり遅くならないようにしないとね、嫌な事件も続いてるし」
瞳心のそんな一言で空気が変わった。
「連続殺人・・だよね、私怖い」
空は不安そうな顔をしている。まぁ当然か同じ街で殺人、おまけに犯人はまだ捕まっていない空でなくても恐怖を覚えるのは当たり前である。ただ、今までそんな事件なんかはなかったのでまさか自分の街でこんなことが起きるとは。
「警察も無能だよな、まだ捕まえられないなんてさ」
「失礼しまーすカフェオレ、アイスティー、コーヒーのブラックにオレンジジュースご注文は以上でしょうか?」
「はい、ありがとうございます」
「今の話って例の殺人事件のことですよね、なんでも被害者は身元が分からないくらい損傷が激しくて、どの遺体も左目がえぐられてるって話ですよ」
「うげ、えぐいなそれ、店員さん詳しいんだね」
「いえ、私も噂とか聞いた程度ですので、失礼しまーす」
「左目がないっか・・・なんでないんだろ?」
「殺人犯が持って帰ったんじゃないか?」
「その後、食ってたりしてオエー」
「コレクションとかじゃないかな・・・殺した証として持って帰ったとか」
「そうなると完全にサイコパスだな」
普通は痕跡を残したくないなどの理由で、同一犯と断定されるような行動はしないと思うが、どうも考えが違うらしい。
「でも、これだけの事件起こしといて目撃者は0って聞いたよ?おかしくないかな?一人くらいいてもいいと思うけど、人影を見たとか悲鳴を聞いたとか」
「確かに、締め切った部屋の中とかなら別だけどニュースでは、裏路地とか住宅街とかだったもんな」
実際、警察の発表では犯行時刻は夜の21時から深夜1時にかけてだったらしい、まだ人の目がある時間帯に目撃者0っていうのはおかしい話だ。
「別の場所で殺されたとか?」
ずたずたの死体をわざわざ見つかるような場所に移すとは考えづらい。
「眠らせた後殺したとか、もしくは殺した後に運んで解体したとか・・・目は自分の左目がなかったからその代わりとか・・・なんちゃって」
瞳心の言うとおりだとしたら完全に狂気のそれである。なんにせよそんなやつが、まだ捕まらず、この街を歩いていると考えると
背筋がゾッとする。