一日目 学校
チャイムがなり席につくと同時に担任の岩瀬 元が入ってきた。どうやら間に合ったらしい。
「席につけ、出席をとるぞー」
次々と名前を読み上げていく。
「成瀬瑠奈・・・・・・・成瀬瑠奈!」
「あ・・・はい」
「おいおい、自分の名前を忘れたのか?それともまだ寝てるんじゃないか?遊ぶのもいいが学生の本分は勉強だ、夜更かししてないで早く寝るんだぞ」
周りからくすくすと笑い声が聞こえる、すると前に座っている俊が後ろを振り向くと小声で話しかけてきた。
「昨日夜更かしでもしたのか?」
「いやしてないと思うけど」
「軍曹もたちが悪いぜ、皆の前で余計なこというなっての」
軍曹とは、担任の岩瀬元のあだ名で、普段から何かと口うるさく服装だの、校則違反だの怒鳴っている昔ながらの体育系教師、その厳しさから生徒からは鬼軍曹とか、軍曹と呼ばれている。
「静かに、ホームルームを始めるぞ日直は誰だー?」
今日の日直は確か瞳心である、あいつ気づいてないのか?瑠奈はともかく瞳心は、夜更かしして寝坊や寝不足になるようなやつではないのだが。
「あ、はいすいません私でした!起立、礼、着席」
瞳心の号令でホームルームが進んでいく、今日も長い一日が始まる。そう思いため息を付き窓の外を見た。天気はよく遠くに海が見える。ここ桜田高校は山の上にあり見晴らしもいい、1年の教室は2階にあることから窓からの見晴らしもなかなかのものである。
「最近インフルエンザが流行っているようで、他のクラスでも病欠届が多く出ている。なので、明日金曜日は学級閉鎖とし休みとなった」
「おー、マジか!」「ねーねーどこいく?」
教室がざわめく、生徒たちは早速明日の打ち合わせに入っているらしい。俊もガッツポーズをして僕の肩をぽんぽんと叩いてくるので勘弁してほしい。
「静かに、休みだからと言って事故や事件に巻き込まれないように、最近は色々物騒だからな外出は控えるように、以上」
そう言うと担任は教室から出ていった。教室内はまだざわついている。
「物騒ってあれだよね、連続殺人」
殺人・・・・今朝ニュースでやってもやっていたな、未だに犯人は捕まっていないらしい。
「やー、災難だったね瑠奈ちゃん」
すぐに瞳心が近寄って、瑠奈の頭を慰めるようになでている。
「ごめん、なんかぼーっとしちゃって」
「瑠奈ちゃんは陸人と違ってしっかりしてるから、珍しいね」
「一言余計だぞ俊」
「ん?何か間違ったこといったか?」
ぐぬぬ、悔しいが否定できない、朝は弱いがしっかりものだ、家は親がいないことが多いから炊事や洗濯などは瑠奈がやっている。親は一日帰ってこないということもよくあるので、夕飯も瑠奈が作ることが多い。
「まぁまぁ、それより明日休みだって!まさかリクの言ってたことが本当にその通りになっちゃうなんてね、よかったら5人で遊ぼうよ!」
「5人?」
僕は友達が多い方ではない、というかクラスでここにいる3人以外はほとんど話したことはない。
俊、瑠奈、瞳心、どう考えても4人しかいないのだ。
「ほら、空ちゃんも誘ってさっ」
佐伯 空僕の家の隣に住んでいる女子で、学年は一緒だがクラスが違う、
昔はよく遊んでいたが、高校に入ってクラスが変わってからは遊ぶ機会はめっきりと減ってしまった。
「お、いいね佐伯空ちゃんだよね1-2隣のクラスの可愛い子、俺も気になってたんだよ」
「お前そういうことにはホント詳しいよな」
「いやぁ、それほどでも、可愛い子は1年から3年まできっちりチェックしてるからな」
別に褒めていったわけではないが、これはこれで俊の特技なのかもしれない(役に立つとはいってない)
「でも、先生はあまり外出するなって・・・・」
「流石に昼間から襲ってはこないっしょ、だーいじょうぶだって何かあったら瑠奈ちゃんは俺が守ってあげるからさ」
瑠奈はさっと僕の後ろに隠れて犬のようにうーっと唸っている。
「瑠奈ちゃんはリクの方がいいってさ」
「そんなぁ、俺ってばそんなに頼りないかなぁ」
肩を落とし俊はしょぼんとしている、正直僕より俊の方が体格はいいし、運動神経もいい。
いざという時頼れるのは俊の方だろう。
「よし、そうときまれば私、隣のクラスにいって空ちゃんに話してくるね」
瑠奈は足早に教室を出ていった。
「二人共今日は早く寝ろよ、夜更かししてインフルエンザに掛かりましたとか言うなよな」
俊は、笑いながらまた僕の肩を叩いている。
「別に夜更かしとかしてないよ、ただ変な夢を見てさ妙にリアルっていうか夢の中まで起きてる
感じがして、よく寝れなかったいっていうか」
「ああ、俺もそんな夢見るわ、まぁ朝起きたら内容わすれてるんだけどよ」
夢なんてだいたいそんなものだ、起きた直後は覚えていてもほとんど忘れてしまう。
夢はレム睡眠の回数だけ(一晩に4~5回)見るとされており覚えているのはせいぜい1回程覚えている夢は目覚める直前がレム睡眠だったときに見たもので、それ以前に見た夢はノンレム睡眠のたびにわすれてしまっていると、どこかの本で見た気がする。
「瑠奈ちゃんもそんな夢みる?」
「・・・・・・・」
瑠奈は相変わらず犬のように僕の後ろから出てこようとしない。
「まっ、深く突っ込むのはもてるやつのすることじゃないか、これ以上いうと噛みつかれそうだし」