一日目 夢と現実
SFホラー要素を含めた作品です。主人公の視点だけでなく、他のキャラクターの視点も交えながらその時間に何が起こっているのか、など推理しながら呼んでいただけると幸いです。
夢を見ている。真っ暗な世界自分が今、目を閉じているのか開けているのかすら分からない完全なる闇、ふと耳を澄ますとピッピという規則正しい音が頭のなかに響いてくる。どうやら耳は正常らしい。体を動かそうとするがピクリとも動かない、体の感覚がない、思考は出来るものの糸が切れた人形のように体は全く動く気配はない。もはやこれが夢なのか現実なのかすら分からない、動くのを諦めたとき遠くの方で人の話し声や、物音が聞こえるのがわかった。
「いつ・・・・か・・・に」
誰かが僕に話しかけているようだ。頭の中はぼーっとしていて、何を言っているのかよく聞こえない。
「君は誰?」
頭にそう浮かんだが、口は動かない当然声もでない。
「また・・・・・から」
何者かはそう言うと足音は遠ざかっていった。
「まって、いかないで」
自分の思いとは裏腹に反応しない僕の体に怒りと悲しみが沸き上げてきた。
再び頭にはピッピっという音だけが木霊する。そして、徐々にその音はテンポを上げ早くなってきた。
ピピピピピピ
機械的な音が頭のなかに響く、だんだんと意識がはっきりしてきた。
「う・・・・・」
重いまぶたを開けると眩しい光に目がくらむ、朝だった、どうやら夢をみていたらしい、目覚ましを止め、顔に触れると頬が少し濡れていた。
「泣いていたのか?」
悲しいような寂しいようなそれが何だったか思い出せない、ただ大事なことを忘れてしまったという喪失感だけが残っていた。
やるせない気持ちを押しやり、陸人は重い腰をゆっくりと起こしベットからはいでた。階段を降りるとテーブルの上に置き手紙と朝食がある。
「朝食を用意しておきました。学校に送れないように」そう書かれている。
椅子に座りテレビをつけた。
「2月7日のニュースです。昨日起きた地震によるガス漏れ事故の影響で、死者多数、意識不明者多数、未だ瓦礫の下敷きになった人の救助を続けているとのことです。また、警察ではガス漏れの原因を・・・・」
昨日大きな地震があったらしい、その影響で未だ救助されていない人がいる。場所は・・・・よく見ていなかった。ふと時計を見ると7時を指していた。
「そろそろ起こしに行くか」
椅子から立ち上がると妹の部屋に向かった。
僕には妹がいる、成瀬瑠奈。朝は弱いのかなかなか置きてこないことが多い、部屋に入るとまだ薄暗い、ベットに近寄ると瑠奈に声をかける。
「瑠奈、起きろ学校に遅れるぞ」
そういうと寝ぼけた様子でうっすらと目を開けた。きょろきょろと周りを見回し僕と目があう、まだ寝ぼけているらしい。
「早く支度をするんだ、遅刻するとまずいからな」
「うん」
瑠奈の返事を確認すると部屋を出た。顔を洗い台所に戻ると瑠奈も椅子にちょこんと座っている。朝食にはまだ手をつけていないらしい、どうやらテレビに釘付けのようだ。
「続いてのニュースです。昨日起きた通り魔による殺人事件で、警察では手口から連続殺人事件の犯人と同一人物であると断定し捜査を続けているとの発表をしました。尚、犯人はまだ捕まっておらず・・・・・」
連続殺人、この街で起きているなんとも物騒な事件である。
「最近はこういった事件も多いですねぇ、あたりまえのことですけど、夜間の出歩きは極力控える。知らない人にはついていったりしないようにしないと、自分の身は自分で守る、それが一番の対策だと思うんですけどね」
他の地域での事件などはあまり気には留めないが、いざ自分が住んでいる地域で事件が起きると、とたんに恐怖がこみ上げてくる。
「おにいちゃん早く、遅れるよ」
気がつくと、瑠奈は朝食をたいらげすでに支度を始めていた。テレビを消し、駆け足で家を出た。
書きながらの投稿です。
何かご意見があれば、なんでもいただけると幸いです。