転生出来ないとかふざけてるんですかねぇ
ここはどこだろうか。確か俺はトラックに轢かれて....あ、天国か。にしては辺り一面真っ暗だが....
「どうも。えーっと....雨崎 颯太さん。読み方はあめさき はやたさん、でよろしいですよね?」
パッ、とスポットライトがつき、そこに女性が現れる。その女性は、比喩ではなく、本当に天使のようだ。
「ど、どうも。その....あまざき そうたです」
「え、あまざき そうたって読むんですか!?申し訳ありません!!」
その天使は、そう言って深く頭を下げた。
「あ、いえいえ!!こちらこそ読みにくい名前ですみません!!」
天使に合わせ、俺も頭を下げた。
「....本当だよ。もっと簡単な名前にしろや」
天使が小声で呟いた。
「....え」
「いえ、なんでもないですぅ〜」
天使は、おぞましい顔からぱっと明るくなり、そう言った。
「は、はは....そうですか....」
俺の笑顔は引きつっていた。外見は天使だが、内面はそうでもないらしい。
「ここは地上で死んだものが来る世界。幼くして死んでしまった子から寿命で死んだご長寿の方まで、色々な方が来ます」
「といっても、ここで暮らせとかそういうのではありませんよ」
いや、こんな何もないところで暮らせとか、鬼畜すぎるだろ。
「ところで雨崎さん?あなたはトラックに轢かれて死んだのですが」
「ええ。それでここに来たんでしょう?」
「理解しているのなら話は早いです。それで、あなたのこれからの事についてなんですが....」
キタキター!!「転生」だろ?なんてテンプレパターンなんだ。死んでよかった。まあ死にたくて死んだわけではないのだが。
「選択肢は色々あります。
①このまま無に還る
②天国で永遠に働く。
③私のように死者を案内する仕事に就く
です」
「私のオススメは今私がやってる③ですよ!!」
「....は」
え、なんか真面目で真っ当な選択肢しかないんですが。
「? どうなされました?」
天使が不思議そうな顔で言う。
「いや、その....選択肢って、他にないんですか?」
「え、いやぁ....あることにはあるのですが....あまりオススメ出来ませんよ?」
オススメ出来ない=危険=転生
これだ!!これを期待してたんだよ!!
「なんですかそれ!!詳しく聞かせてください!!」
「転生」
ほらやっぱり。俺は昔から運だけはいい。死んで転生できるなんて、ここはネット小説の中かよ。
「....するためにいろいろやる」
!?....いろいろ?
「はあ....『いろいろ』って手続きみたいなやつですか?」
「そういうのじゃなくて....命懸けの、厳しいミッション、みたいな」
「命懸けの....厳しい....ミッション....ですか」
「....」
「....」
数秒間、沈黙の空間が続いた。
「え、転生するために命懸けって....え?」
「申し訳ありません。やっぱりそのまま転生するのがお望みでしたよね....」
「あ、はい....ってことは、それやんないと転生出来ないんですかぁ!?」
俺は思わず大声をあげた。何故だ。何故ここまで引っ張っといて何故転生出来ないんだ!!
....いや、落ち着け。死んだのに俺に選択権がある。転生できるチャンスもある。これだけで幸福なことだ。いいじゃないか。怖い。確かに怖いが、転生のためだ。どんなミッションでもやってやろう。
「本当に申し訳ありません。では、再び①②③のどれかで決めていただくということで」
「........」
「って、どうしました?」
「....やります」
「....へ?」
「だから、転生するために色々やります!!」
俺の大声がそこら中に響いた。
「え、ええ!?て、転生する方向でよろしいんですか!?」
天使は動揺してそう言う。
「ええ!!いいですよ!!ミッションでもなんでもやってやります!!」
俺はバンバンと胸を叩きながら言った。
「でも、命の保証は無いですし、もう一回死んだら地獄に....」
「ええ。危険だってことは重々承知してます!!それをふまえて、です!!」
確かに危険かもしれない。だが俺の恐怖心と転生できるかもというロマンをはかりにかけたら、圧倒的にロマンの方が重い。
いいか....漢のロマンは命より重い!!(迷言)
「....わかりました。本当にいいんですね?」
「ええ」
俺は深く頷いた。
「では、これをどうぞ」
天使は俺に紙の束を手渡した。
「これは....?」
「マニュアルです。これからあなたが飛ばされる世界でやるべきことが書いてあります」
「え?俺って他の世界に飛ばされるんですか?」
初耳だ。てっきりここの近くで労働させられるのかと思っていた。
「ええ。実はここの過程で死ぬ人も多いです。」
「ええ!?死ぬんですか!?」
「そうです。やっぱりやめます?」
「....いや、やります!!お願いします!!」
「分かりました。....では、転送魔法!!『ファントム・ルーラ』!!」
天使は叫んだ。
「え、天使さんって魔法なんか使えたんですか!?ってわあああああああ!!」
気付けば俺の体は宙に浮いていた。魔法恐るべし。
「では、転生目指してがんばって下さいね。さようなら〜!!」
「うわあああああ!!死にたくねえええええ」
ギュンッ
「ふう、ようやく行きましたか....」
「この魔法も、私が転生した時に身につけたもの....懐かしっ」
「あいつ、生き残れるのかな〜........うん、無理。」