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1章-06-

当時、世界各所から部下たちに集めさせていた見るからに貴重品だと分かる宝石類からいわくつきの壺や柱時計、呪われた魔剣、とある魔女の使っていた窯がある。

 


「おおっ!!当時のままではないか!そこまで執着があったわけではないが・・・・こうもうれしいものなのだな」



 以前住んでいた城がこうも変わり果てていた中で感じていた一抹のさみしさ。

その反動だろうか魔王は他の魔族から見れば『たかがそれしきのこと』で心を動かしていた。

 

 入って最初にある部屋が一番広く、細部を見るまでに少々時間がかかった。

所々違和感こそ感じたものの荒らされた形跡などはない。

室内の扉は木造だったので、そのままスムーズに書庫、台所兼居間をはじめ、残りの部屋を周ることが出来た。

残りは寝室を残すのみとなった。

 

 しかしあんなにも上機嫌だった魔王の顔はいま、笑みこそ浮かべているものの青筋を立たせていた。

ここに至るまでに、部屋を調べていくうちに、出来上がったある予想のせいだ。

だがまだ怒ってはいけない、結果は寝室の中を見なければわからないのだ、もしかしたら勘違いだという可能性もあるのだから。


 そう、たとえ書斎に今の王都でどのような衣服が流行っているかなど訳の分からないものを書いた書物(ざっし)があり、以前の魔王が綺麗に使っていた調理場に散乱する使い終わった食器の数々があったとしても・・・。


 魔王は思い切り扉を開けた。

そこにあるのは魔王のセンスによって選ばれた気品ある家具で彩られた優雅な空間、ではなく少女趣味の家具雑貨、飲みっぱなしの紅茶、脱ぎっぱなしの女物の衣類、広げっぱなしの先ほどの書物(ざっし)で魔王の思い出とはかけ離れていた。

そして視界の先にある寝台だけは魔王が使っていたものと同じだったのだが、いまその上に丸いふくらみがあった。


 布団の中に何かいる。


 毛布にくるまっているその正体を確かめるため、寝台に静かに近づく魔王。

床に散乱するあらゆるものを避けて通るのは魔王の几帳面さゆえだろうか。まるで猫のようだ。

やっとの思いで寝台の傍へと到着し、毛布をつかむとガバッっと勢いよくめくり上げた。


 するとその中には、こちらも猫のように丸まるり、大きな枕に抱き着きかかえ、その上に涎を垂らすだらけた表情で眠るネグリジェ姿のユーシェがいた。

ほどかれ寝台に広がる綺麗な銀色の髪は昼過ぎの陽光に照らされきらきらと輝きその艶やかさを見せつけている。

昨日は外套に覆われ見えなかった素肌は色白で、除く胸元にははっきりと谷間が形成され、今の魔王よりも遥かに女性らしい体つきをしていた。

長い素足を折り曲げ、抱えるようにしているその寝姿はその間抜けな寝顔からは考えられないほど扇情的であった。


 しかし、魔王から聞こえたのは生唾を飲む音ではなく、青筋の切れる音のみ。



「フハハハハ!ここまで私を愚弄するとは!!よかろう。その腐った性根、私が直々に叩き直してくれる!!」



 魔王はそう言い残すと、踵を返し部屋を出る。

もはや怒りで外が危険かもなどという思考は魔王の頭からきれいさっぱり消え失せていた。

私室を飛び出ると、謁見の間を通り抜け、廊下を走り始める。



「城の中をさ迷い歩く私の姿はさぞ滑稽だったことだろうよ、メイザース。礼をしてやらねば私の気が済まないというもの!!」



 階段へと着くと階下へと急ぎ、地下の一室拷問部屋へと魔王は向かった。


そこへ入ってしばらく魔王が持ち出してきたのは数メートルはあろうかという鞭だった。

こんなもの、ふるう者が振るえば人の肉など簡単に削いでしまうような代物である。

だが相手は魔族、口元を吊り上げ邪悪な笑みを浮かべる今の魔王に一切の慈悲はなかった。


 しかし、右手に鞭を持ち、左手でスカートをたくし上げ廊下、階段を疾走する魔王の姿は確かに滑稽以外の何物でもでもなかったと言える。


 再び寝室へと戻った魔王。

枕に滴り落ちるユーシェの涎が水たまりを形成し始めていること以外変わったところはなかった。

魔王は両腕で鞭を持ち、ゆっくりと頭上に引き上げ構える。



(服を着ていないとは好都合!この鞭で全身全霊の一撃を貴様のその素肌に加えてやろうぞ!!)



 魔王の渾身の一撃がユーシェのあらわになった素肌を襲う。



 バチィイイイィィイイィイン!!



 鞭を張る凄まじい音が寝室内で響いた。



「ふぁぁああ?!って、あれ?魔王様?そんなところに蹲って如何されたんですか?ベットならここですよ?」



 凄まじい音によって・・・・・飛び起きたユーシェ。

その視界が真っ先にとらえたのは寝台傍の地べたで丸くなっている魔王の姿だった。


 何とか平静を保とうとしている魔王だが、脂汗を肌に浮かばせ小刻みに震えながら何かに耐えるその姿はどう見ても平静以外の何かだった。



「ぐふっ・・・な、なんでもない。気に、するな・・・」



 やっとの思いで返答する魔王。


 何が起こったかと言うと魔王の放った会心の一撃だが、それはユーシェの肌を捕える直前にユーシェが常時張っている防御障壁によって返されてしまったのだ。

痛恨の一撃をそのままの威力で返されてしまった魔王。

痛みのあまりにその場に蹲ってしまうのも仕方ないと言えよう。



(このやけにフリフリした衣装ではなかったら、危なかった・・・)



 この衣装でなかった時のことを考え戦慄を覚える魔王。

実は鞭の素人であったこともこの程度で済んだ要因の一つなのだが魔王が知るようなことはないだろう。

助かったことに感謝すべきか、この体を憎むべきか、魔王の引きつった表情がその複雑な心境を物語っている。


 どういう経緯でこのような事態になっているのか寝起きのユーシェに知りようがない。

ふと蹲り震えている魔王の横に鞭が転がっていることに気が付いた。

蹲る魔王、そしてそのわきに置かれる鞭。

おのずと回答は導き出される。



「え?魔王様、もしかしてこんなところでセルフSMでs・・」


「ちがうわっ!!」

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