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1章-08-

 生きるためには食事は必要不可欠。

そもそもここに食事を取りに来たことを忘れていた魔王に魔王の腹の虫が再び抗議の声を上げてしばらく魔王の姿は今キッチンにあった。

散らかり放題だった食器をちょうど洗い終えたところで、これから食材を見に行くようだ。


 魔王は着るその衣装も相まってもはや食事係のメイド以外の何者でもない。


 ユーシェはというと寝室の片づけをしていた。

ネグリジェから着替え、両肩が大きく出たワンピースをきて腰には斜めにベルトを巻いている。

部屋の模様替えは今は仕方ないとしてもあの散らかりようは流石に看過できなかったようである。

魔王は人をも殺せるような優しい笑みでユーシェに片づけをするように告げていたのだった。


 しばらくして居間の扉が開きユーシェが寝室の片づけで疲れたことをアピールでもするかのように倒れこんでくる。



「まおぉさまぁー終わりましたぁ。もうこれでぇ許してくださぁーい」


「む?今手が離せん、また後でちゃんと片付いたか診てやる。そろそろ本格的に腹が減ってきた、さっさと食事にするぞ。心配するな、貴様にまともな料理ができるとは思っていない、私に任せるがいい」


「あはー可愛いおなかの虫さんでしたもんねぇ~。しょうがないですよぉ。そういえばまだ一度も食べてませんでしたしねぇ」


「ぐっ・・・生理現象だ、仕方なかろう!・・・以前は味覚を楽しませるためだけに料理をしていたが生きるためとなればまた違った楽しみ方も見つかるかもしれんな」


「あ、今話そらしましたか?仕方ありませんねぇ乗ってあげましょう。どのような食材を使うかで大分体型に関係してくるようですよぉ、王都の女の子たちが言ってました」


「そらしてなどおらんわっ!・・・体型とはこの体型か?」



 そう言いつつ魔王は自らの腰やわき腹などを触っている。

体型がわかりにくい服装であるが歳程度は14,5に見える魔王。

その外見にしては女性らしい体つきであることをユーシェは自らの手で実際に触ることですでに確認していた。


 もちろん墓穴になりそうなので口にはしないようだが。



「そぉーですねぇ~。その体型みたいですねぇ。だからその食材ごとに含まれる栄養も考慮して作れて、初めて主婦と言えるそうですよぉ。お察しの通りあたしは料理できないんで魔王様、頑張ってくださいねぇ」


「フハハハハッ!頑張るも何も料理などお手の物よ!誰がより主婦であるかわからせてやろうではないか。してメイザースよ、食材が見当たらないのだが、どこにある?」



 ユーシェは横たわっていた体を起こすとこちらを見る魔王と目が合う。

言わずとも伝わったようだ。


 そこには言葉など用いなくても通じあう理想の主従関係があった。



「幸いにもここは森の中だメイザース。採ってこい」


「ふぁい」



--------------------



 それからしばらくユーシェのとってきた食材を使って魔王が腕によりをかけた料理を平らげた二人はまだ食卓に居た。

現在の世界について、魔王が知らないことをユーシェの知る限り聞いていたのだ。


 せっかくの復活を遂げた魔王だが初手を打つ前から大いにつまずいてしまったいま、どう巻き返すのか考えるためだ。



「・・・・というわけでぇ、今はぁ、この世界に実質的な魔王は存在しないんですよぉ。魔族をまとめようとする輩はちょくちょくあらわれたりしたんですがねぇ、現れる都度何者かに殺されてぇ、今や人間から見れば魔族も魔物も人から見れば大差ないのかもしれませんねぇ」


「なるほど、我々も落ちぶれたものだな・・だが、その何者かの目的はなんなのだ?統治せぬということは権力ではない・・・力の誇示、名声が目的にしては名乗りを上げぬとは不可解。・・・・このままでは人間にはなめられる一方ではないか!」


「そうなんですよぉー。そんなやつがいるっていうのに加えて、人間達はギルドやら学校やらで力を高めていてぇ、今やこの大陸のほとんどがぁ人間の管轄する土地になっちゃってますぅ。そういうこの森も実は人間のとある王国の領土だったりしちゃいますしねぇ」


「ここまでもか・・・だがこの森の性質は失われておらんのだろう?この城が無事であるのが証拠だ」


「ここが瘴気に満ちていた、魔王様の生きていた時代まで、魔力密度が薄れたせいか迷いの森と呼ばれてたのも数百年前までですねぇ。探索魔法も通信魔法もまるで効果をなさなかったこの森からそういった性質が消えたときは探索隊がもんのすごかったんですけどぉめぼしい利益をあげられず結局数年ほどたって打ち切られちゃいましたぁ。強い魔物もいませんし人間達は放置気味ですぅ。」


「そういえばそのギルドという組織の連中がつい先日も来たのだったな・・・ではここも危険というわけか」



 魔王は現在の状況を把握し、どう世界を掌握していくかを検討する。

だが何よりも先にすることは決まっていた。

それは魔王の力を取り戻すこと。

しかしそこに至るまでの道筋が見当もつかない。


 考え込んで黙ってしまった魔王にユーシェが話しかける。



「魔王様ぁ?あんまり遠くを見過ぎるとぉ、平らな道でも躓いちゃいますよぉ?何事も出来ることから、一歩から、ですぅ」


「ふんっ!まさか貴様にたしなめられようとはな、そんなこと言われずとも分かっておったわ!」



 魔王は食べ終えた食器を持って立ち上がるとキッチンのほうへと振り返る。

だが歩みは進めず、背中越しにユーシェに告げる。



「明日の朝ここを発つ。目的は私の魔力の回復ただ一つ!良いな?」


「もちろんです、魔王様!どこへでもお供致しますよぉ!!」



 給仕のメイドが凄んでるようにしか見えないのだがそれでこその魔王なのだろう。

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