『だ~れだ?』(戯曲)
キャスト 1女
2男
3男
4女
5男
6女
7男
死体
暗闇の中、絶叫。
ピンスポット、イン。
女4「私、刺し殺してしまった!私、刺し殺してしまった!!」
女4、絶叫。
ハデなBGM。
照明、イン。
舞台上手、死体が転がっている。
女1、男2、男3、男5、女6、あわてふためきながら次々に出てくる。
男3「ひっ!人が死んでる!」
女1「殺人よ!」
男2「大変だぁ、警察を呼ばなきゃ!」
男5「へぇ~、俺、人の死体って初めて見た。写メ撮っとこうっと。(スマホを構える)」
女1「バカ!何やってんのよ!人が死んでるのよ!」
女6「私、こわ~い。」
男2「大丈夫だよ、ボクがついているから。」
女6、女1の陰に隠れる。
男2「ははは・・・」
男3「一体誰がこんなことを・・・」
皆、ゆっくりと、女4を見る。
女4、コクコクうなずく。
男7、登場。
男7「犯人は、この中にいます!」
女1「・・・あんた、誰?」
男7「私ですか?あ、申し遅れましたが、私、名探偵です!」
全員「名探偵?!」
男7「あ、これ名刺です。(皆に名刺を配る。皆、不審そうに受け取っていく。)」
女6「すご~い、名探偵ってちゃんと書いてある~~」
男5「詐欺に一番引っかかりやすいタイプだね。気をつけたほうがいいよ?」
女6「そんなことないも~ん!(ふくれる)」
男5、男2を突っつく。
男2「(女6に、)キミ、ボクと付き合わないかい?一生ハッピーにしてやんよ?」
女6、女1の陰に隠れる。
男5「前言を、撤回します。」
男2「負けないからな!(涙をぬぐう。)」
男3「あんた、名探偵って言うなら、犯人がわかるのか?」
男7「ええ。見当はついています。(ドヤ顔。)」
女1「一体、誰が犯人なの?」
皆、ゆっくりと女4を見る。
女4、コクコク。
男7「まあ、結論を急いでも仕方がありません。」
男3「いや、急げよ?」
男7「(無視して)まずは現場保存が肝心です。皆!死体には手を触れないで!」
死体、飽きてきたのか、転がったまま首筋をボリボリ掻いたりしている。
男7、そんな死体に向かってハリセン一発。
死体、動かなくなる。
男7、死体を確認。
男7「死因は打撲。どうやら、被害者は頭部に強烈な一撃を加えられたようだ。ひどい・・・」
男3「お前がひどいんじゃないのか?」
女4、ナイフをアピール。
男5「一体誰がこんなことしたんだろうねえ?」
男3「お、俺、やってないからな!」
女1「私だって違うからね!」
女6「私じゃないも~ん」
男2「ボクはこんなことしませんよ?」
男5「俺、人の死体見られてある意味ラッキー♪」
皆の視線、男5に集まる。
男7「(男5を指さしながら)犯人は、お前だ!」
女4、地団太踏んでいる。
女1「あんた、なんてことやってくれてんのよ!」
女6「ひど~い」
男2「自首してください!(泣)」
『太陽にほ○ろ』のBGM
男5「・・・刑事さん。」
男7「探偵ですけど。名探偵ね。」
男5「刑事さん、」
男7「探偵。」
男5「俺、なんてことを・・・」
女1「今からでも、遅くはないわ。いつだってやるなおせるわよ!」
女6「頑張ってね~」
男7「今回は後味の悪い、ヤマだったぜ。」
男3「ふう、これで安心して・・・」
女4「ちょっとっっ!」
全員「?」
女4「ちょっとアンタたち、それで事件が解決したとでも思ってんの?!」
男2「犯人は、自らの罪を認め、刑事さんに自首したんです。」
男7「探偵です。名探偵。」
男2「これ以上彼を責めるのは酷というものではないでしょうか・・・」
女6「そうだよ~、犯人さんかわいそ~」
女1「あんた、血も涙もないわけ?この冷血漢!」
全員「れーけつ!れーけつ!れーけつ!」
皆で女4を取り囲む。
女4「待ちなさいよ!こいつが犯人だったら、動機は何なのよ!動機は?」
男7「おい、動機だって。」
男5「動機って言われてもなあ。」
男2「いくらでもあるんじゃないの?好きな相手に冷たくされて、逆恨みしてやっちゃったとか、どうせ自分のものにならない相手を、いっそ誰にも渡したくないからやっちゃったとか・・・」
女6、女1の陰に隠れる。
男5「殺す気まんまんだねえ。」
男3「あんた、ひょっとして・・・」
男2「ち~が~う!たとえですよ、たとえ話!ね?」
女6、女1の陰に隠れてガクブル震えている。
女1「大丈夫、万一の時には、アイツを必ず警察に突き出してやるからね!」
女6「あの人、こわ~い。」
男2「ハハハ・・・」
男7「皆さん、だけど少し待ってください。殺人に動機というものは本当に必要なんでしょうか?」
男3「いや、必要なんじゃないかな?」
男2「そもそも犯人だー!ってコイツゆび指したのあんただろ?動機くらいわかってて言ってんでしょ?」
男5「俺、死体見たい。」
男7「そこです!死体が見たいからという理由で人を殺す、こんな短絡的な動機付けで、果たしてお客さんは満足してくれるでしょうか?」
男3「お客って何のことだよ?」
女4「じゃあ、どんな理由だったら満足できるわけ?夫の罪をかぶろうとする母をかばうため、その娘が自ら犯人だと名乗り出たとか・・・」
男7「ストーーーップ!」
女1「あんた、なんてこと言い始めるのよ!」
男2「推理小説のネタバレはマナー違反ですよ!」
女6「ひど~い。」
男5「でも、俺、推理小説、最初に犯人のページ確認してから読み始めるよ?」
女4「ヘンタイは黙ってて。」
男3「何の話をしてるのか、サッパリわかりません。」
男7「快楽殺人。」
全員「えっ?!」
男7「単なる快楽殺人という線もありうるわけだ。」
女1「やっぱりヘンタイじゃない?」
男2「あ、そうか!好きな相手がもだえ苦しみながら息を引き取っていく様子に喜びを覚える快楽殺人!」
女6、女1の陰に隠れる。
男2「ハハハ・・・」
男5「もう、黙ってた方がいいかもしれんよ?」
死体、いつの間にか、起き上がってあくびなんかしている。
男7、もう一度ハリセンで一撃。
男7「そう、快楽殺人!道理も必然もいらない、ただ、己の欲望のまま人の命を奪っていく人の道を外れた外道!まさ
に鬼畜、まさに殺人鬼、鬼と呼ぶのにふさわしい。」
女1「鬼?」
男2「鬼?」
男5「鬼?」
女6「鬼?」
男7「(女4を指さし)こいつが鬼だー!」
全員(男3・女4以外)「逃―げろーー!」
全員(男3・女4以外)散り散りに逃げながら退場。
女4、目を閉じ、しゃがんでカウントを始める。
男3、周りについていけず、おたおたと逃げ遅れている。
女4「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく、しーち、はーち、きゅうーう、じゅーう!」
カウントが終わった女4、周りを探し始める。
逃げ遅れた男3を見つける。
女4「みーつけーた!」
男3「ひっ!」
女4「今度は、あんたが鬼ね。殺人鬼―!」
女4、男3にナイフを投げ渡し、逃げていく。
男3、ナイフをこわごわ手にしている。
男3「俺が?鬼?」
舞台袖から声がする。
女1「そう、鬼!殺人鬼!」
男2「殺人鬼!」
女4「殺人鬼!」
男5「殺人鬼!」
女6「殺人鬼!」
男7「殺人鬼!」
男3以外、声を合わせて出てくる。
全員(男3以外)「さーつじんき!さーつじんき!さーつじんき!」
男3「な、何言ってんだ?違う、俺は違う!」
男3、ナイフを振り回す。
刺された者、一回倒れるが、また起き上がって「さーつじーんき!・・・」
男7「ほーら、やっぱりお前。」
男3「な、一体何なんだ、お前ら!」
女1「刺しても無駄よ。」
男2「だって俺たち。」
女4「私たち。」
女6「みーんな、」
全員(男3以外)「お前に殺された幽霊だからーー!」
男3「ち、違う、あれは、あれは・・・うわああああああああああああああーーーーー!!!」
男3、ナイフを放り出し、絶叫しながら逃げていく。
男7「行ったな。」
女1「行ったね。」
女4「これで少しは懲りたかな?」
女6「かな~?」
男5「ま、どうだろう。」
男7「人を疑い、人を信じられなくなった者の哀れな末路さ。」
男2「ともかくこれで、少しは気は晴れたかな。というところで改めて・・・(女6の方を向く)」
女6、女1の陰に隠れる。
男2「ですよね~~」
女4「じゃあ、そういうわけで。」
女1「じゃあ!」
男5「じゃあ!」
女6「じゃ!」
男7「では!」
皆、散り散りに去っていく。
女6を追いかけて出ていこうとした男2、女1に追い返され反対方向へ。
男2、ナイフを拾う。
男2「今度は誰が鬼になるのかな~?」
男2、退場。
舞台袖から、皆のカウントダウン、「いーち、にー、さーん・・・」
舞台上、死体にピンスポットを残し、照明フェードアウト。
幕。