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番外編SS『僕の奥さん』

*活動報告で掲載していた作品をそのまま載せてあります。



綾女ちゃんと香菜ちゃんの結婚後の話。

ほぼ、会話劇。



登場人物 


瀬能綾女(香菜の親友 旧姓 服部)

瀬能圭吾(元生徒会長 綾女の彼氏で現旦那)


*圭吾視点








「綾女さん、何しているの?」


僕の奥さんである綾女さんが、朝からクローゼットの前で旅行ケースに服を詰め込んでいた。


「あ、圭吾。パスポートどこだっけ? 早くしないと!!」


パスポート?

ああ、もしかして…。

僕は、眉間に手をやりたくなるのを我慢して、綾女さんの手を取って作業をやめさせる。


「もしかして、兄と香菜さんの新婚旅行先に押しかける気?」

「……そんなわけ」


視線が右上にいっている。

綾女さんの肩を掴み僕の方に向かせた。


「あ・や・め・さ・ん?」

「……だってーーー!! 本当は、私たちも一緒に行くはずだったのに! 圭吾の仕事で行けなくなって。判っているのよ? お義兄さんが抜けて…圭吾まで抜けられないっていうのは!! だから、私一人でも、香菜たちを追いかけようかと……ね?」


上目遣いで、目をパチパチさせても…可愛いけど!!

言っている事は納得できない!


「僕たちの新婚旅行は、もうちょっと落ち着いてからって約束したでしょ?」

「…うん」

「僕との新婚旅行なのに、綾女さんだけで行くのおかしいよね?」

「……だって」

「綾女さんは、香菜さんとじゃなくて…僕と結婚したんだよね?」

「ううう。だって」


綾女さんは、学生時代から親友であった香菜さんへの依存度が高い。

彼女曰く、香菜さんは「幸運の女神」らしく……まぁ、確かに兄と彼女が付き合い始めてから、我社の業績もアップして、兄もそして何故か僕まで運が良くなった。


「だって、今朝…ゴミを捨てに行くときに…カラスに糞をつけられた…」

「え?」

「それに、柱の角で足の小指を打った」

「…うん」

「洗濯物も、昨日干し忘れて…やり直しだし… それに!」

「…ちょっと待って」

「香菜が、香菜が近くにいないと!! 私、また不幸になっちゃう!」

「綾女さん! 落ち着いて」

「だって、だって!! しばらくこんな事なかったんだもん」


取り乱した綾女さんは、わーーーと顔を手で覆い隠し、泣きそうになっていた。


ああ。


もう。


ぽんぽんぽん。

僕は背中を優しくたたいた。

綾女さんが、落ち着いてくれるように。


「前に綾女さんが言っていた 香菜さんに嫌われたら…ってやつ?」

「…うん」

「香菜さんは、新婚旅行に行っただけで綾女さんを嫌う人?」

「……違う。香菜はそんな子じゃない」

「そうだよね? さっきの君が言ってた事って、そんなに不幸なこと?」

「………違うの」

「ん?」

「圭吾と付き合えたのも、香菜のお陰だったから…。もし、香菜のご利益が消えて…圭吾が私を嫌いになったらって……思ったらいてたってもいられなくて!!」

「それって…僕が好きだから、香菜さんの新婚旅行先に行こうとしたの?」

「うん」

「僕の事、愛しているから?」

「うん」

「綾女さん、ちゃんと言って?」

「そうよ! 圭吾を愛しているから! だから!! また以前の不幸体質に戻って、圭吾に捨てられたらどうしようって、怖くて怖くて!」

「はぁぁぁぁ」

「…圭吾?」

「どうして、今日は会社があるんだろう。大事な会議なんてなければいいのに」

「?」

「僕はね、ずっと香菜さんに嫉妬していたんだ。だって、君ってばずっと『香菜、香菜』って僕の方をみやしない。結婚だって、向こうが決まってから承諾してくれたし…。色々ね…僕も考えてた。でも、漸く聞けたね」

「圭吾…」

「さぁ、取り敢えず、ベッドに散らばっている服をクローゼットに直そうか」

「…うん」

「そして、綾女さんはここに横たわって?」

「え?」

「えっと…うん。大丈夫、まだ時間はあるから」

「あの」

「足りない分は、夜に全力出してあげる」

「大事な会議って」

「ああ、大丈夫。資料は全部用意して渡してあるし。 ほら? 僕、重役だし? 信頼もあるし? そして何よりも奥さんが大事だし?」

「けけけけけけ、圭吾?!」

「ふふふ。真っ赤になっちゃって。 綾女さんは、いつまでたっても、初心で可愛いな。僕に身を任せて。今だけは香菜さんなんて忘れさせてあげる。不安なんて取り除いて、僕一色に早く染まって…綾女」





後日。



新婚旅行から帰ってきた、兄夫婦に入れ替わるように、僕たちも旅行へ出掛けた。

綾女さんは、あれから以前よりは、“香菜さん”に依存しなくなったけれど、まだ油断は出来ない。


僕にとって、彼女は最大のライバルなんだから。


*リクエストいただいた 綾女×彼氏のSSでした。

リクエストを有難うございました。

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