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03 幼馴染 内田遥斗の後悔

幼馴染 内田遥斗(うちだはると)の視点

*ダメ男無双です。


俺には幼馴染がいた(・・)



赤ん坊の頃の俺は病弱だったらしい。

覚えてはいないけど“子育てサークル”に行っては“風邪”から始まって“インフルエンザ”や“ 手足口病”やらを様々な病気をもらってきた。「どうして、この子だけ」というのがその当時のオカンの口癖だったとか。


幼稚園に上がる頃、マンションに引っ越した。隣に住んでいた香菜の父親と俺のオヤジが同じ会社だったらしく、香菜ともよく遊ぶようになった。





春から高校生になるって事で“彼女”というのに興味が出てきた。

手短にいる香菜ならOKするだろうと告白してみたら、案の定。チョロすぎ。



香菜は、まぁまぁ可愛い方…かな? ずっと一緒にいるのでときめく事はないけれど、気を遣わなくて済むっていうのも理由。嫌いじゃないし。今、俺に好きなやつもいないし。

“香菜が彼女になった事”に、なぜか親が俺よりも喜んでいた。



ファーストキスも初体験も香菜で済ませて、周りの同級生よりも一歩大人になった感じ? 最近の俺って絶好調。




++++高校一年 二学期


夏休みも終って、ますます運が向いてきた。

サッカーでは、面白いように点を取れるようになるし。周りの女子も、俺をみて「格好良い」とか「遊びに行こう!」とか言い寄ってくるし。部活には差し入れの山。スマホには女子のメルアドが三桁。 俺って凄くない? 今、モテ期かも?





++++高校一年 三学期


学年一の美人の白鳥からも声をかけられた時にはびっくりした。

でも、当たり前かなって。ノリに乗ってるもんね。俺ってば。


体の相性もバッチリ。白鳥は色々進んでいて、ご奉仕が気持ちよかった。比べて…香菜は初心者丸出しのマグロだし。それに、関係を持てば持つ程、香菜のダメな部分が鼻についてきた。おっちょこちょいというか、どんくさいというか、顔のニキビがだせーっていうか。残念なんだよ全部。情だけはあるから惰性で付き合っているって感じかな。取り敢えず、次の彼女が出来るまでのキープって事。



春休み、香菜には部活があるとかいって、部屋に白鳥を連れ込んだ。

お楽しみの最中に、香菜が突然部屋にやって来た。いるよね? 間の悪い奴って。

俺たち3人の対面に「うわ、修羅場!」って他人事みたいに思ったわけ。

だって、ドラマとか漫画みたいな展開だし? ちょっと、ワクワクしたし?


まあ……香菜の事はどうでもよくなっていたし…あいつの家も、もうすぐ引っ越すから、親関係とかも関係なくなって、潮時だったのかもな。






++++高校二年 新学期


学年一の美人と一緒に歩いている姿を他の男どもに見せびらかして、奴らの悔しそうな顔が面白かった。白鳥と彼氏彼女の関係になっても、白鳥に隠れて他の女子とも遊んだ。まぁ、白鳥も同じような事をしているから、どっちもどっちなんだけど。今が楽しけりゃそれでいいじゃん。



時たま、ちらりと見える香菜の様子に 胸が痛まない事もないけれど、もう俺たち他人だし関係ないかなって思うわけ。向こうも俺と付き合えていい思い出が出来ただろうし。


ある日、香菜の隣にいる服部綾女っていう女がすげー睨んでくると思ったら、放課後に待ち伏せされた。


はっきり言って超メンドクサイ。部外者がしゃしゃり出てくんなよ。


『いい夢見れたのはあんたの方。もう一生これ以上の幸せはあんたには来ないから』


だって。 そんなわけないじゃん。

馬鹿じゃねーの。


ちょうどいいタイミングで、白鳥が声をかけてくれて、正直助かった。

目の前の女の目つきが、何をやるか判らないような感じだったし。

俺の黄金の脚がどうにかされたら たまったもんじゃないしな。


(さっきから、消火器をチラチラみていてマジでビビったわ)


白鳥と2人。仲の良さを見せびらかすようにその場から去ったけど……なぜか服部のさっきの言葉が耳に付いて離れない。まぁ、負け犬の遠吠えだろうが。


(これで俺の幸せのピークだと? 俺はもっと上にいける男だし。馬鹿じゃないの)









――って、その時は思っていたわけで。








++++高校二年 二学期以降


白鳥との交際が続いて、だんだん調子が悪くなった。

大事な試合で、たまたま蹴ったボールが自分のチームのゴールで…その1点のせいで試合に負けた。エースも降ろされて、イライラして中学時代のダチとウロウロしていたら そのうちの一人がタバコを吸い出して、流石にまずいと奪って消そうとした時に先生に見つかった。そしてなぜか俺が吸っていた事になった。 そのせいで大会にも出られなくなり、 反省の態度もないとかで無期で部活動禁止になった。サッカー部の連中はもちろん、大会の為に練習をしていた応援団や吹奏楽部の連中にまで恨まれて学校に居づらくなるし。 俺、全然悪くないのにさ。


白鳥も、前よりも艶というか張りもなくなり、ニキビばっかり出来ているし…付き合っていた最後の方の香菜もこんな感じだったかな。 お互いイライラして、小さいことで喧嘩が続く。女って怒るとキーキー煩いんだよ。邪魔くせ。そういえば、香奈はそんな事なかったな。どんなに嫌なことがあっても、俺の前では嬉しそうにニコニコしていたし。


はぁ。この不運続き、なんなの?

白鳥と付き合ってからだ。こいつ「さげまん」じゃねぇの?


(俺って…可哀想……)



ずっとつるんでいた連れもいなくなり、白鳥も一緒にいると煩いし。

一人でいる事が多くなって、毎日がつまんねー。なんで俺だけ? 俺、何かしたっけ?

他の女子も蜘蛛の子を散らしたようにいなくなったし。メールしても返事が返ってこないとかも当たり前で、たまに来る返事は「メールしないで。ウザイ」とか。 終いには受信拒否。 このブス共! 調子に乗んなよ!



イライラして家に帰ったら、いつもは遅くまで仕事をしているオヤジが家にいてリビングの空気が重たかった。オカンが場の空気を変えようと「最近、香菜ちゃんと仲良くしているの?」って聞いてきたので、「別れた」と言ったら二人に怒鳴られた。


「今まで香菜ちゃんが傍にいたから、お前は“普通”に暮らせていたのに!」「どうして、香菜ちゃんと別れたんだ! 謝って、許してもらえるまで帰って来るな!」とまで言われて追い出された。もう近所付き合い無いんだから関係ないだろって言ってんのに。また、お隣に住もうかと引越しを考えているらしくて。でも、金がねーから厳しいとか。何? ソレ? そこまでして隣いく?




大体、香菜と離れたら“不幸”って、意味判んねーし。

その時、スマホに白鳥から着信がはいった。

泣きながら「子どもが出来た」って……。


「はぁ? 俺の子じゃないんじゃない?」


思った事を口にしただけなのに、ブチギレされた。

「中出ししたのは、あんただけよ!」って言いやがって。

俺ばっかのせいじゃないし。生で喜んでいたのはお前だっつーの。





ツイていない。

ツイていない。

ツイていない。




そういえば、昔、香菜の家族と出逢う前までは、すごく家は貧乏だった気がする。

たまたま、親の仕事が一緒になって、なぜか両親は無理をして香菜の家族の隣に引っ越して。そうしたら、貧乏じゃなくて普通にまでなって。ついで、俺の虚弱体質も無くなって……。


「遥斗は、香菜ちゃんをお嫁さんにするのよ。そうしたら、ずっと幸せになれるから」

というのが、引っ越してからのオカンの口癖。


毎日、毎日言われ続けて、その時は、ふざけんじゃねえ! と反発して、香菜を無視して遊ぶようになった。しばらくすると、野良犬に噛まれて高熱を出した。心配した香菜が家にやってきて看病をしてくれたら、医者もびっくりするくらい早く治ったらしい。そして またそのまま一緒に遊ぶようになったけれど……。







そうだ。




簡単じゃん。




また、香菜と付き合ってやればいいんだ。

あいつの事だから、俺がちょっと甘い言葉をかければ簡単に付き合える。


楽勝じゃん。




高校三年になって、しばらく学校にも行けなくて、学校の終わる時間にブラブラと香菜を待ち伏せした。




そして、久しぶりに見る 香菜の姿。



フワリと流れる綺麗な黒髪。

ニキビなんてひとつもない すべやかな白い肌に、さくらんぼの様な唇。

瞳は、大きく綺麗に輝いていて……。

以前、学年一美人と言われていた白鳥なんかよりも、ずっと美人で。




(あいつ、あんな顔だったっけ?)




思わず、見とれていた。――俺とした事が、香菜ごときに。



「おい! か……」


香菜に声を掛けようとすると、隣に男の影が見える。

大学生くらいの大人の男。しかも、超イケメン。


(誰だよ…)


すげームカつく。俺の彼女だったくせに。

よくよく見ると、後ろには服部綾女と生徒会長の姿。

服部が俺に気付いて、侮辱しきった視線を向けてきた。

そして、そこらに落ちている石を拾って、俺の方を見て振りかぶった。

ちょ、ちょっと待て!

生徒会長が服部の方を見た瞬間、何事もなかったように石を隠して、頬を赤らめモジモジしている。(服部……いろんな意味で怖ぇー女)


香菜の方をもう一度見ると、恥ずかしそうに、でも嬉しそうにニコニコと男に笑いかけていた。



――あの笑顔…以前は俺に向けていた笑顔なのに……。




その入り込む余地のない様子に…ただじっと見ている事しか出来なかった。


  ・


  ・



学校にも家にも居場所が無くなって

スマホからの三桁の着信履歴。


表示名は、「白鳥」「白鳥」「白鳥」「白鳥」「白鳥」「白鳥」………






俺 ……どうしたらいい?









服部の予言どうり、あの時が俺のピークだったみたいで。

何が悪かったかなんて、全然わかんねー。


あの“修羅場”の時に香菜に謝っていたら……この後の人生、何か変わっていたのかな。



****

ありがとうございました。



…切ない失恋……を書くつもりが、どこかで間違えました。


「日間ランキング1位」ありがとうございました。

よい思い出になりました。

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