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misunderstanding  作者: ryure
第六章 金色の双子と世界の失敗
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 彼女がそう言った途端、リュートが、そしてルチェくんがビクリと反応しました。弾けるようにティオの方へ振り返ったのはルチェくんで、ティオの言葉を必死で否定し始めたのがリュートです。


「それはない、それはない!俺は綾香の意志に反対したことはない!俺の希望は綾香の希望だったんだから!」

「…………、それは、そうだろうよ。私は生まれた時からずっとリュートと共にあったのだから。リュートよりその意識は自我があり、年上だったのだから。……、その意識を浴び続けていて、染まらないような……アデルスの方が普通では無いのだから」


 アデルス、というのは誰でしょうか。恐らく賢者様と一緒にいる魔族の方……であると推測します。何故ならオラニウス様がちらりと魔族の方を見ましたから。……その前はアーフィルと言っていませんでしたか?


「でも!でも!そんなふうに綾香……ティオが悪者に見えるように言わなくたって……」

「…………」


 訴えかけるリュートの声を今度は無視してティオは話を続けました。リュートより少し黄色味がかった目が暗い色を宿しています。強く握られた拳は白くなっているのに私はふと気付いてしまいました。


「私は最初、この世界に別の性別となって『転生』したのだと思っていました。リュディトゥというのは私の転生体で、私が正真正銘リュディトゥであるのだと、少し前までは思っていました……、ふと、数年前にあまりにも前世の私と価値観や考え方が変わっているのに気づくまでは……。

それまで、私は彼を、リュディトゥという由緒正しきアースルヴァイツ家の青年の存在を……知らず、蔑ろにしていたのです…………。…………本人はそうではないと、私と同じように生きるのが希望だったと言っています。でも、私は知っているのです。もう一人の『私』を。アーフィル・アゼルスという魔王の息子……何も知らない天使の生まれ変わりの体を乗っ取り、思うままにしていたのを…………。私のやっていたことは、もう一人の非情な私とそう変わりはないのです…………」


 彼女はとうとうと語ります。アーフィル・アゼルスという悲劇の魔族の話を。そして彼に巣食った自分の憎悪の存在を。そして自分の片割れであるリュディトゥと、自分のことを。


「…………、不肖の娘、私は、どのような処罰も受けなくてはならないのです。私が前世で憎んだ悪と同じようにはなりたくないのです。…………、だか、」

「黙らっしゃい!聞いていたらありもしないことを語って!何度も言うけど俺は自分の意志で綾香に従っていたからな!

父さんに母さん!綾香に、俺の大事な姉に何か罰を食らわせる気が微塵にでもあるなら次代剣聖の片割れであるこの俺が両親であろうと叩きのめしてやるのを覚えていてくれ…………、まぁ、綾香に、本当の剣聖に止められたら負けるのは俺だけど……」


 途中から勇ましく、また恐ろしいまでの闘争心を宿したリュートは最後には見たこともないような柔らかい苦笑を漏らして私たちを見ます。鋭い目、それが今のリュートには余り見られず。柔らかな微笑みと日溜まりが似合う彼は確かに今までのリュートとは違う息子なのだと知らしめられます。反対にリュートに怒鳴られたティオはむすりと俯き、黙り込んでしまいました。彼女にはきっと太陽と艶やかな黄色の薔薇が似合うのに、きっとその光をとらずに自ら闇を見る。そんな危なげな彼女に確かに今までのリュートを感じました。


「…………、父さん」

「なんだね、リュート?」


 日溜まりそのもののように優しく笑ったリュートが突然、ティオの肩を抱き寄せてウルガに聞きました。目は優しく、表情は輝く太陽。なのに何故…………このように吹雪のような冷たさを放っているのでしょうか、リュートは。

 知られざる息子の一面を知れてとても喜ばしく感じました。ただ、それを向けられたウルガには同情します。ウルガはそれはもう、リュートを小さい時から甘やかす人でしたから。


「無いって知ってるけど俺の大事な姉さんであるティオに何かしたら父さんだろうが物理的にこの世界から抹消してあげるね。父さんって何気なく親馬鹿だからティオが可愛くて仕方がないと思うけど、必要以上にティオに近寄ったら暴れてあげる」

「…………、そうか。

俺はすごくミーミルファンの頃の勇ましく、慈悲深く、そして反抗期ではなかったリュートが懐かしいなぁ……なんて」

「勇ましくて慈悲深いリュートは今のティオだってば。だけど近寄ったら潰す」


 親子の言い合いに目を白黒させ始めたティオが縋るようにこちらを見てきました。そんな可愛い娘に私は優しく微笑みます。あなたを決して娘ではないなんて思わないわ、という意味を込めて。


・・・・

・・・

・・


「…………どうしよう、オラン。正直リュートが格好良すぎて頭が爆発しそう」

「勝手に爆発しとけ。

それゆり、前よりもなんかリュートはへにゃけてないか?」

「へにゃけていようがなんであろうがリュートが格好良くなったら誰が格好いいのか教えてくれるかな、オラン?あぁティオだよね、リュートより格好いい人をもし探すならティオだよね。ティオならリュートと同じだし、ティオなら格好良くても当たり前だよね。でもティオは可愛い人だよね!やっぱりリュートの格好良さが全て凛々しさと可愛らしさに変わったのがティオっぽいからティオが素晴らしいのは仕方がないよね!」


 あとは家族団欒の話があるだろう、と思ったから俺たちは客間を貸してもらった。

 だが、あの部屋のように特殊な結界が無くては残りの魔族に襲撃されるのではないか、と賢者殿に聞いてみたところその心配はないとはっきり言われた。

 魔族は実力主義の世界であるから魔王に勝ったリュートたちを集団で襲うことはない。あの時はアゼルスが偽物のアヤカ殿に操られていたから集団で来たのであって本来の形ではないそうだ。それから真なる魔族はあの出来事以前から数が少なく、元々魔族は世界征服にも人間支配にも興味はないらしい。魔王の亡き今は静かに元の場所へ帰るだろうと言っていた。

 それから、魔族化した人間も徐々に戻っていくだろうとも。魔王亡き今は魔法も解けたらしい。


「語るな、ルチェ」

「……うん。まずはその、魔法の火薬を下ろそうか……」


 ついイラッとしてしまい、対魔用の火薬を生み出してしまった。まぁ、ルチェの鬱陶しさを考えれば仕方ないな。

迫り来る最終話。


あ、次じゃないです。

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