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「…………。
……っ?!『結界』!」
嫌な沈黙が延々と続くかと思われた空間だが、不意に賢者が大声をあげる。そして異世界語で結界を張ると急に棒立ちになったアーフィルを伏せさせた。その直後、耳の痛くなるような高い音がその場に響き始めた。
「……、大丈夫、そんなのいらないから、賢者」
結界が現れてそれがチカリと光ったのと同時に、リュディトゥと綾香がいた場所が輝きだす。それを伏せさせられたままぼんやりと眺めるアーフィルは、口だけ独立したかのように言葉を紡ぎ出した。声はアーフィルの物だが、話し方はいつもと違ってはっきりとしていた。耳障りな音はどんどん強くなっていく。
「帰ってくるだけだから、リュディトゥと綾香が。彼らの友が彼らに早く会えるように結界を解いてやりなよ」
「……リュート、帰ってくるの……?」
操られたかのように一本調子で話し続けるアーフィルはすがるように問うルーウェンスを無視して話し続けた。そしてゆっくりと立ち上がり、手を光へかざした。その行動の意味は魔法を行使するつもりなのか…………、それは誰にも分からない。魔法の使えないはずのアーフィルは手をかざすだけだ。
高い音はますますひどくなっていくが、それと同じで光も強くなっていく。だがそれらは何かの合図を待ってるかのようにそれ以上の変化はしないのだった。
「世界は失敗した。金色の双子は帰ってくる。ただそれだけだが、今はただ見守っていて欲しい……」
不思議な色をたたえた目を光らせたアーフィルはふわりと手を振った。操られたように虚ろな目はこの場所ではなく、遠くを見ていた。ここではなく。どこかを。自身の持つ能力のせいであるかもしれないし、「天使」だとか言われる迷信が実が本当であるのかもしれなかった。だがそこに居たのはアーフィルの姿をした「何か」であるのは間違いなかった。
アーフィルが手が振った瞬間、とたんに光が増し、現れたのは二人の人間。寄り添うように立つ二人のうち、片方はその場の者たちに見覚えがあった。
「リュート!」
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眩い光だ。目が開けれないぐらいに……。眩しい光だ。…………、ルーウェンスの声が、聞こえる。
「……、ただいま」
それだけは言っておこうと誓っていた言葉を言う。真っ白な光は掻き消えるように消えた。
「そ、そこまで心配しなくても大丈夫だよ、ルーウェンス」
「何を言ってるの、リュート!死んじゃったかと思ったし、消えてしまうんだから……、僕、不安で不安でしょうがなかったよ!」
俺がいなくなってからどんな気持ちだったかを長々と語るルーウェンスの相手をしながら、隣でアーフィルに謝り続ける綾香……、いや。彼女もリュディトゥなのだけど……の頭をくしゃりと撫でた。その様子を見ていたらしいオラニウスが不思議そうに俺達を見る。
「ん?その子は……多分、アヤカ殿だろう?どうしてリュートと瓜二つの姿になっているんだ?」
「……うん、まぁ彼女は綾香、何だけどね。でも、中身という意味なら、彼女のほうがリュディトゥだから……さ。俺は俺だし、彼女は彼女だけど……」
話を振られ、きょとんとしてオラニウスを見上げる綾香……帰ったら母上に綾香の今世の名前を付けてもらわないといけないや……紛らわしいから。綾香は綾香だけど、この世界に生まれた俺の双子でもあるから。
「……ああそうだった。ルチェ、オラン。俺もリュディトゥだからな。
…………今は適当にアッディとでも呼んでくれよ」
聞いたことのあるような事を言う綾香にルーウェンスは吹き出した。あれ、おかしいな。ルーウェンス達にこのことを言った時は分離していたから綾香は知らないはず何だけど。双子の神秘かな。
「あは、あはははっ!じゃあアディー、君はどうしてそんなに金髪のリュートそっくりなの?リュートの格好良さが可愛らしさに変わっただけで僕見てて幸せなんだけど」
「……幸せ?
まぁ、おれ……じゃなかった、私は綾香の記憶を持った状態のリュディトゥが、リュディトゥの双子として存在しているとでも思ってくれ。本来、私はリュディトゥの双子の女として産まれるはずだったからな。世界が修正した」
柔らかい微笑みを浮かべた綾香の目には鮮明な景色が映っているんだろう。耳に聞こえる言葉は日本語と同じぐらいはっきりと意味の分かる言葉なんだろう。
良かった、世界を脅して綾香の魂を入れる体の視力を異常に良くしてもらって。良かった、世界を脅して綾香の魂を入れる体に「言葉の祝福」をかけてもらって。
「そう……。なら二人ともリュートなんだね!
リュート、おかえりっ!」
泣きはらした赤い目が幸せそうに笑う。それを見ていたみんなも笑う。微笑みを受けた綾香も笑う。
すうっと邪悪な呪縛が溶けていく音が聞こえる。もう大丈夫、俺たちは自由だ。それに、仇も打った。
俺はもう一度綾香の髪をくしゃりと撫でた。
まだ続きます。後少しお付き合い下さい。




