表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
misunderstanding  作者: ryure
第六章 金色の双子と世界の失敗
64/73

57

「りゅうと、りゅでぃと……」


 しばらくは盛大に泣きわめいていたルチェだが、今はただただ涙を零しながらリュートの名前を呼ぶだけになっていた。俺はいたたまれなくなって目をそらした。


 そらした視線の先には、怯えて震える魔王の息子がいた。確か名前は…………アーフィルか。そのとなりには賢者。賢者は見たことがないほど暗い表情で俯いていた。賢者もやはり元は人間か。最初は好奇心しかないやつだと思っていたが・・・・・・そうでもないのか。


「ね、きんいろはどこにいっちゃったの?くろいろ、わるくないあやかはどこにいっちゃったの?」


 一人、この状況を理解していないのか、どこかずれた事を、ふわふわと頼りない口調で聞かれる。今はそれどころじゃないと叱りつけたいが、相手は「体は」同い年、見た目は大きくても中身は幼子同然だ。記憶なんて一年分あるかどうか。そんな子供を叱るわけにもいかず(言葉を話せるのは偽物の影響……らしく見える)、俺は呟くように返事を返すだけにしておいた。正直頭は冴えてきたが精神の方は自分で気がつかないほどまいっている。


「俺には……分からない。勿論、ルチェにも、賢者にも、だ……。リュートが、どこにいるかを……」

「へんなの。ぼくがしりたいことがわからないなんて。いまもね、しりたい、おもうけどわからない」


 心底不思議そうに首を傾げるアーフィルの言葉に引っかかりを感じて、思わず詰め寄った。知りたいと思えば……知れる。偽物の異様なまでの状況把握能力の高さの理由か!


「お前は、知りたいことが全部分かるのか?」

「……止まって、技術者殿。アーフィルは何も知らない子供だからね、魔王の血の能力を自分で把握していない……我にも全部は分からないから」


 掴みかからんばかりにアーフィルに詰め寄ると、やんわりと賢者が間に割り込んできた。

 こいつは、…………何も知らない子供ではないだろう、確か、伝承では「魔王」という存在、血筋はこの世の全てを知る者だ。その直系であり、息子なら、自分の身近なことぐらいは知っていて当然。

 幼子としては知っているはずがないことでも能力的に知り得ることもあるはずだ。ならば、リュートの居場所が今は分からずとも強く探すように求めれば。手がかりぐらいは掴めると信じたい。


 だから、聞けるなら聞くべきだ、厳密にはこの世界の者ではないアヤカ殿が関与していても、魔法を阻害する能力があろうとも。リュディトゥはこの世界の人間なのだから。魔王の能力がこの世界にしか影響しなくても魔法に由来するものでもいい。リュートは、かすかなりともわかるはずだ!


「ん…………きんいろはね、このせかいにいるよ。くろいろのあやかはね、んーー、かたちがかわっちゃったみたい。このせかいにいるんだ。えっと、なかみはあやかだよ。でもかたちがちがうみたい」


 一抹の期待と共に紡がれたアーフィルの言葉は、予想よりはずっとマシだったが理解のできない不可解なものだった。、…………。


 早くリュートの存在や位置を知らせて、魂が抜けたような、痛々しいルチェを早く何とかしてやらないとならないのに。俺には何もできない。


 無力に感じることを、あのリュートも感じたことがあり、それ故に剣で自分を突き刺したということをこの時は知り得なかった。


・・・・

・・・

・・


『えっ、双子?』

『生物としてはリュディトゥと双子の体じゃ…………本来、二十年前に渡すべきだったものじゃがの』


 世界の言葉を聞いて、金髪に金色の目……というよりは黄色っぽい色をした目になった綾香は楽しげに笑い、また、ほろほろと目から涙をこぼす。涙は悲しみではなく、嬉しさ、喜びに見えた。…………嬉し泣き、かなぁ。泣かなくても、あれで死んだら死んだで綾香と同じになれると思ったんだけどな。世界の話だと綾香が俺の双子になるみたいだから死ななくてよかったけれど。


『文字通り、リュディトゥと真の「半身」、双子となったわけですね?』

『そうじゃのう。だがの、残念なことにわしは「リュディトゥの双子」の体は作れるが、その体で、その魂で魔力のような不安定な物は行使できぬよ。魔力はわしの力では才能を与えるぐらいしか出来ないからの』


 よく分からない話だけど、魔法なんて俺も綾香も使ったことも使おうと思ったことも無かったんだから関係ないと思うけどな…………魔族や魔王の魔法が俺たちに効かなかったのは有り難かったけどね。魔法に憧れたことがないっていうことはないけど、綾香と同じで俺は剣の方が好きかなぁ。


『魔法なんて……私には不可解で、不要なものです。恐ろしいものです、易々と命を奪い、死にかけた命を救えるのですから。

それよりもリュディトゥは元の世界に帰れますか?リュディトゥはあの世界で死なずに済みますか?』


 綾香の聞いたことに俺は思わず目を剥いてしまった。…………、俺は生まれてから綾香と一緒にずっと居たんだから、綾香がいるならどこでもいいのに。それより自分の心配をして欲しいのに。


『リュディトゥも綾香もちゃんと仲間たちの所に返すことを約束しようぞ。いや、返さなければ最悪この世界が消えるのでの……』


 失敗に失敗を重ねたわしは返さなければ消されてしまうのじゃ、と世界は言った。

勘違いをより濃く受けるのは綾香の方です。分離すればリュディトゥはリュディトゥの扱い。

ただ……綾香もリュディトゥも、ルチェやオランからすれば同一人物のようなものですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ