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misunderstanding  作者: ryure
第五章 獅子の剣士と黒の少女、そして闇の魔王と賢者
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「お前に何が分かるというのッ?!」


 大声で「私」は叫び、同時に私につかみかかってきました。ただ、何故か「私」は私に触れる前に手を引っ込めましたが。


「私はね、貴女みたいに恵まれているわけでは無かったのよ!ぬくぬくと暮らせる貴族の生まれでも、痛みに悩まされない体でも、自由に生きれる所でもね!」

『だったら、八つ当たりをするのですか?どうして貴女は負のことしか考えられないのです?』


 私はぴしゃんと「私」の頬を打ちました。すると、「私」は身を悶えさせてもがきます。


『触れるな、触れるなぁ……!オリジナルのあんたに触れられれば私は消えてしまう……!』


 「私」の姿が不規則にチカチカと光りました。これは…………使えるかもしれません。


『あっはははは!私が消えればあんたの体を乗っ取ってやるよ!』


 話の通じなくなった「私」は高笑いしながら私に手を伸ばしました。私は勿論、あのような破壊主義者でも世界に絶望した、厨二がかった性格でもありませんから逃げます。この体は幽霊……いえ、この世界では「精霊」あつかいなので疲れなくて便利ですね。

 …………もし、私の体が前世でも強かったら、追っ手を振り切った後に心臓麻痺で死ななかったでしょうに……。


 もしも、を考えるのは止しましょうか。幸いにもリュディトゥが此方に向かってきています。何とかなりそうですね。


『貴女のように狂ってしまうなぞ、もってのほかです。私は、貴女のようにはなりません』


 怒りや憎しみで動きが大きくなっている「私」をかわすことは簡単です。私にはリュディトゥでの記憶がありますから体の動かし方がよく分かります。「私」は、乗っ取っていたアーフィル・アゼルスに下僕を召喚させて、ただただ強大な魔法を使わせる戦い方をしていたので体術には長けていないようですね。

 やはり、完全に私そのものでは無いようです。私は、前世で常に努力し続けなければいけなかったのですから…………。


「綾香!大丈夫っ?!」

「ヘイキ。あのこ、何とかする、先」


 異変に気付いたリュディトゥが私を抱え上げてもう一人の「私」から距離を置きます。


「剣士殿、あの影をどうするつもりなのかい?」

「とりあえず綾香に触れさせては、いけない。あいつは綾香を乗っ取る気だから……!」


 必死に賢者様に訴えるので、私はそこまでしなくても良いよ、と言うようにリュディトゥの短くなった髪の毛を引っ張りましたがリュディトゥは気にも留めてくれません。…………私とてそこまでひ弱な心を持っている訳ではないのですが。


 そういえば、言葉は何時も以上に分かりませんが、リュディトゥが話す言葉は心が少し繋がっているので分かるものなのですね。初めて知りました。


「分かったよ、剣士殿。…………あの偽物のアヤカ殿に我は触れることが出来ないけどね」

「視野に煙でも入れればいい。綾香は目が悪いから簡単に動きが封じられる」


 …………、弟よ、私の弱点を味方とはいえ、賢者様とはいえ易々と話さないで欲しいのです…………。


・・・・

・・・

・・


「来るなっ!綾香に指一本たりとも触れさせないからな!」

「あは、あはははは!私は綾香よ、本人がもう一人の自分に会いに行って何が悪いの?」


 不意に結界のスレスレまで近くに偽物のアヤカちゃんが迫ってきて、僕は凄くびっくりした。偽物のアヤカちゃんと、リュートと本物のアヤカちゃんの追いかけっこは賢者の補助を得ながら延々と続いていた。


「…………ふぅん、これが本体の器の従兄弟かぁ、似てないね」

「ほっとけ!それにリュートを器扱いするな!」


 何を言っているか、異世界語をしゃべっていると分からない本物のアヤカちゃんだけど、あのアヤカちゃんは物腰柔らかな女の子だ。だけど、この偽物はどうだろう。高笑いをしたり、物凄い形相になったり、汚い言葉を使ったり。とてもとても、アヤカちゃんには思えない。


「あら、器は器なのよ。死んだ綾香が何故かこの世界に迷い込み、それから入った体。本体の綾香の魂の器。まぁ、今は分離してるせいで自我が出てきてるけど。

私の器はほら、ちゃんと使ってたからあんまり記憶も持ってないし、自我も弱いでしょう?」


 魔力を持たない偽物は結界が効かない。偽物は僕には何の害も及ばせられないから、別に近くに寄られようがすり抜けられようが構わないといえば構わないけど、アヤカちゃんと同じ顔でそんな表情を浮かべて近寄って欲しくない。纏う黒い霧も何だか見ていて嫌な感じがするし。


「そんな訳ないだろ!リュートにも本物のアヤカちゃんにも別々に自我がある!体をただただ乗っ取っているお前がそんなことを言うな!」


 叫ぶように否定すると、薄ら笑いを浮かべた偽物は、今度はオランの方へふらふらと移動した。


 リュートは本物のアヤカちゃんを抱え上げたまま、魔王の玉座の残骸の上に立ってこっちを見ているのが見えた。かなりの距離だ。


「ご機嫌よう、王子様。本体の器の親戚だったかしら?」

「黙れ、偽物」

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