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misunderstanding  作者: ryure
第五章 獅子の剣士と黒の少女、そして闇の魔王と賢者
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『…………、お前は危険だ』

「え、今更なの?ここで産まれたときから私は危険なんだよ?

だけど私はリュディトゥくんたちに危害を加えないって何度も言ってるじゃない。リュディトゥくんたちには危険じゃないならいいよね?迷惑かけて闇討ちされたくないし」


 無言の魔法によって自分の姿の形をした木偶を弓士殿たちの所に残し、結界を二重にかけ、自分の姿を消して剣士殿たちにゆっくりと近づく。幸いにも危惧すべき存在のアルフィー・アゼルスは我にはわからない異世界語を喋っていないので話が分かる。流石に剣士殿までもこの世界の言葉をしゃべるように期待するのは間違っているが。


「いいわけあるかっ!てめぇなんかに世界を滅ぼさせるほど……」

「あは、リュディトゥくんには幸せな、幸せな生活をプレゼントしてあげるつもりなのに?

リュディトゥくん、私が世界を滅ぼした暁には君がほんの少し前まで営んでいた生活に戻してあげるよ。

あはは、私は何でも知ってるんだよ。君がミーミルファンで一緒に住んでた人間も生きているし、血生臭い記憶は下僕に消させればいいしね。この体の能力かな、世界の情勢がすぐに分かるんだ。

そうだなぁ、邪魔しないでくれたらリュディトゥくんにとって元の平和な世界にしてあげる。えっと、アルバさん……だっけ。リュディトゥくんの先生も私の下僕とか要らない魔族を生贄に百人ぐらいだせばきっと魂を呼び戻せるよ?体なら百人ぐらい生贄にすれば再現出来るし」


 とんでもない最悪の禁忌を事も無げに言い放つアーフィル。その言葉に剣士殿の顔が歪む。それは葛藤と怒りか。剣士殿の高潔な心には酷い言葉を聞くだけで苦痛なのか。そして微かな一瞬の葛藤の末、剣士殿は振り払った。


「…………本来なら、敵討ちも、先生は望まないだろう。それは、先生、嫌がるに決まってる……!俺に関係なく、だが良いわけがないだろう……!」


 拙い言葉と共に紡がれたのは確かな拒絶。爛々と輝く金色の目を見て、アゼルスは淀んだ光を目に宿す。剣士殿の返事を聞いたアゼルスはつまらなそうに唇を尖らせた。目に宿っている狂気がなりを潜め、年相応の……いや、それよりも幼い少年に見えた。そういえばアヤカ殿もそうだったが、異世界の二人は幼く見える民族なのか。だが反面、狂気ではないもののギラギラと光続ける金色の目と悲しみと怒りに揺らぎ続ける剣士殿の金目は火花を散らす。


『何を間違えてお前がゆがんでしまったかは知らん。確かに前世の俺は理不尽さや人間の汚さに絶望していたがお前は異常だ。そこまで恨む要因はない。だいたい、立場上自由な時もあったんだろうが。小さい赤ん坊のように泣き喚く方がまだマシだ、てめぇのやろうとしていることは。

この世界も差別は大きい。俺の黒髪も人間の中では異端、ルーウェンスの黒目も異端だったのだから。貴族に産まれなかったら俺も幼少期、どんな差別を受けていたかは分からんな。

だがな、お前はただ理不尽を嘆き、ただただある力を振りかざして暴力的に訴える子供だ。たしか同い年だと言ったが…………、お前の中にいる魔王の息子のせいなのか?思想が違いすぎる。そんな考えを持つような人間ではなかったからな、綾香は』


 長い長い言葉の端々には吐き捨てるような苦々しさが混じる。時折混じるため息に呆れもだ。

 …………もしもこの剣士殿の言葉を我が魔力を込めて唱えればどうなるだろう。場違いにも持ち前の好奇心が疼いた。強大な力を秘める言語を易々と使いこなし、薄ら恐ろしい力で世界を終わらせようと目論む者を止めることのできる彼に戦慄が走る。

 最大の脅威といえるこの闇の魔王が、危険だと見る人物。新たな剣聖。光の人間。…………勇者。様々な、誰もが一度は羨むような称号を望めば、彼が望みさえすれば思いのままに出来る彼は強く鋭い目でアゼルスを睨んでいる。


 だが、そうしてはいられない。我は我が出来ることをしなくてはならないからだ。


『精霊召喚っ!』


 前よりも力を込めて、異世界の言葉を使い。二人の異世界人の魂をここに召喚する。止めなくてはならないのだ、こんなつまらない世界でも、滅びさせるのは。止めさせなくてはならない、この苦しい世界でも我らの故郷だからだ。そして、あのミーミルファンの悲劇をこの少年に繰り返させてはいけない、からだ。エゴもある、だが、らしくもなく正義を求めた。


 我の魔法によって二人の姿が揺らぐ。体に宿る魂が姿を現すからだ。

 いきなり現れた少女は剣士殿に寄り添いながら、アゼルスそっくりの……いや、アゼルスがアヤカ殿そっくりなのか……少女はこちらを不安げに見てきた。アゼルスよりも小さく幼い彼女の時は止まっていて、彼女の様子に異変はない。そしてそのアゼルスに宿る人間は…………黒い怨念に取り憑かれた少女の形をしていて、いれものを呆然と見ていた。体は、のた打ち回り、苦しんでいた。


「……賢者、助かった…………」

「あの子私、でも私違う……狂い、変。ありがと、賢者」


 剣士殿はアゼルスを押さえつけながら絞り出したような声を出した。アヤカ殿は自分そっくりの、だが闇に包まれた少女を指差しながら言う。


「……魔王の息子に取り憑く魂は綾香なんだよ、魂の劣化複製だと本人は言っていた」

「うわぁぁぁぁあ゛、あ゛あ゛!」


 のた打ち、叫ぶアゼルスを易々と押さえ込んだ剣士殿は鋭い目をもう一人のアヤカ殿に向けた。

 ナイフを構え、半透明の少女に対峙するアヤカ殿が見えていないのか闇に取り憑かれたアヤカ殿はふらふらと立っていた。

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