50
「じゃあいいや。リュディトゥくんに綾香。君たちは私のそのものだし、異世界の記憶を知る同胞だから私の夢の計画で殺さないでおこうかな。それから、私の叔父さんも。私の叔父さんは別に私に嫌なことをしたわけじゃないし、あの憎たらしい魔王に攻撃してくれたし…………うん。むしろ感謝しないと。
あと、リュディトゥの親戚とか友達とかは残しとこっと。あとあとになって、リュディトゥの先生を間接的に殺しちゃった魔王みたいに敵討ちされたら面倒くさいし」
ほろほろと涙を流しながらも、妙にうきうきとした口調でアルフィーは喋り出す。部分的に聞いていると、どうやらルチェたちに害が及ばないのだが………まぁ、それはいいのが、こいつ…………もしや。
「ねぇねぇリュディトゥくん。世界って滅ぼしてみたくならないかな?前世の綾香はそこまで思ってなかったけど、人並み以上に世界に絶望してたよね!今回私がすることはあれの延長上だと思ってよね。まぁ、君は前世で人殺しじゃなかったけど……、人以上に弱い体に金目当てにすり寄ってくる邪魔な阿呆共、無能な人間に嫌気、さしてたよね」
「……何を……するつもりだ……」
声が低くなるのを自覚しながら、無邪気な笑い声をたてるアルフィーに問いかける。予想は悪い方へ悪い方へ、あたる。
「あはっ!聞いちゃう?
えっとね、魔王はね、生まれたての私を見た瞬間に石の部屋に閉じ込めて、せっかく自由に体が動くのに、私を不自由にしたんだよ。それで部屋がだったから壊したら、今度は封印されるんだもん。だから魔王に復讐しようと思って力を蓄えながらいい子ちゃんを前世みたく演じたらね、下僕をくれたり外に出してくれたんだ。ふっふーー、楽しかったけど、まぁ復讐心は変わらなくてね。えへへ、この髪の毛は血と墨で染めてるけど本当は真っ白なんだ。この目を見てよ、綺麗な金色でしょ?魔王の息子にあるまじき力と色だから迫害されてたんだ。
あ、そうだ。リュディトゥになった綾香も貴族だった十年ぐらいは結構不自由だったんでしょ、いろいろさぁ!だから私と違って自由だった人や虐められない魔族はみぃんな殺しちゃえっ!って思ったんだ。
でも安心してよ、リュディトゥや、リュディトゥの従兄弟やレッサヴィーラの王子様や、ミーミルファンの賢者って呼ばれてる私の叔父さんや、リュディトゥとかリュディトゥの従兄弟のお父さんとかお母さんとか……取り敢えずリュディトゥに関係ある人と魔族は殺さないから。だって、リュディトゥって私ぐらい強いから、敵討ちされたくないんだもん」
勝手なことを言っているのは分かった。にしてもこいつは本当に綾香の記憶を持っているのか不安になってきた。訛のない日本語を聞いたため、完全に嘘ではないのは分かる。記憶が一部なのも分かるが…………。綾香は語学が嫌いだった。今、言葉に苦労しているのはそれが理由だ。だが、こいつはどうだろう。すらすらと喋っている。翻訳の魔法はこいつにも魔法が効かないんだからないだろうし。
それに、綾香の心の一番深い所には孤独を嫌う弱虫がいるはずだ、自分でも分かっているほど一人ぼっちが嫌いなのだから。……前世ではな。こいつは俺のように今世での体の持ち主と精神が結びついているわけではないようだから相当だろうに。それなのに人や魔族を減らすか?情けないが、前世の綾香なら間違いなく減らさない。殺されかけた相手を殺さなかったのは人を減らしたくなかったからだった覚えがある。
…………ん?こいつの話を反芻していたら変なことに気づいた。
『……叔父?』
「私の叔父さんはミーミルファンの賢者って呼ばれてる。魔王の異母兄の、人間上がりの魔族だよね」
・・・・
・・・
・・
・
あいつに子がいたとは。しかも剣士殿の前世絡みの狂魔とは…………厄介な。力もそれなりにあり、下僕と呼んだ使い捨ての魔族を大量に抱え込んでいるようだ。
「…………賢者、…………あのアーフィルだったか、アゼルスだったかは知らないけど、あの魔王の息子は何者なの?アヤカちゃんに、似すぎだよ」
「魔法言語は複雑怪奇。我はこの世界の生物だからあまり知らないけどね…………。言葉の端に『同じ』と言っていたよ。多分、前世絡みで同一人物なのか、双子何だろうね…………」
狂った笑い声をあげ、剣士殿に詰め寄る少年からは魔族と人間、両方の気配がした。魔族が四分の三、人間が四分の一の血を引いている筈…………だが、剣士殿同様、魔力は感じられなかった。いや、あるにはあるようだが、魂によって消されていく。
「…………危害は?」
「加えられていないよ、技術者殿。ただ、思想が危険そうだ。魔法は効かないからいざとなったら弓士殿、援軍を頼むよ」
「分かった」
睨むように二人の行動を見る。と、剣士殿が魔王の息子から距離を置き、少年は笑い声をまた、あげた。
アゼルス
狂人(魔)。一応自我あり。綾香?
魔法は効かない。力は未知数。(リュディトゥぐらい?)




