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「…………」
「リュート、ねぇ、アヤカっていう精霊は何だったの?」
賢者の介抱をオランに任せ、とりあえず僕はリュートを問いただすことにした。「アヤカ」の名前を出した瞬間、リュートは盛大に動揺して少し顔色が悪くなった。
…………聞かれたくない話、なのかな……?一応怪我は完全に治してたから大丈夫だと思うけど病み上がりに無茶はさせたくないから質問、止めとこうかな……。
「……アヤカは……精霊ではない。どちらかと言うと……幽霊だな」
「……幽霊が取り憑いてるの?」
言いにくそうにボソボソと話し始めたリュートだけど、言い始めたことには目を剥いた。幽霊……って、アンデットの仲間……?
「取り憑いている、訳ではないな…………害は全く無いし……」
「…………」
でも、明らかに幽霊のアヤカがリュートの体に入った瞬間、取り憑いていたり、伝承の「精霊憑き」と同じように容姿が変わってた。性格までは変わったかまでは判断出来なかったけれど……。でも、底冷えする目で、敵意のある視線で見られたことは忘れられない。思い出すだけで恐怖だから……震えが止まらない。
「……何と言うべきだろうか。『リュディトゥ』は俺だし、『彩花』も私だからな……イッシンドウタイ、いや……彩花は俺そのものか」
聞いたこともないぐらい流暢に喋るリュートの言葉は時折理解できない。今までにもあったように僕に分からない言葉が混じるから。リュートだからって納得は出来るけど、あのアヤカの話していた言葉だと思うと合点がいかない。リュートはこの言葉以外は知らないはずだし、もう一つの言語、異世界の言葉は魔法が使えないリュートには無縁だ。
「…………、無理矢理に言うとな、ルチェ。俺は彩花だから、それでリュートだから線引きは出来ないな」
「……なあリュート。お前とアヤカっていうヤツは魔法の異世界語喋ってたみたいだが、…………人間か?人体には魔力があるんだから異世界語を喋っている時点で魔法が発動するだろう?」
予想は外れてあの言葉が異世界語だと言うのが分かった。言葉に疎いリュートが、複雑怪奇な異世界語を喋れるなんて。リュートはすごいけれど、有り得るのかな?
…………リュートなら良い意味で人外とかありそうだけど、確かに異世界語で魔法が発動しないなんて。
「……異世界語が何たる物かは知らんが、俺は父さんと母さんの子で人間だ。魔族ではないな」
「知ってる。俺の遠い親戚でルチェの従兄弟だろう、出生は完璧に人間なんだ。だから聞いてるんだ。人間だろうと石ころだろうと体には魔力が宿る。リュートの体にも魔力が宿っている…………回復の魔法やら、翻訳の魔法が効いたからな。だが、アヤカから魔力は感じられなかった。多分、アヤカがいるからリュートには魔法が効かないんだろう?
…………アヤカは、何者だ?幽霊なら、死してなお魂と意識をこの世に結びつけている術者に魔力がないんだ。おかしいだろう?」
ふうと溜め息を吐いたオランは手を翳した。すると小さな火の玉が現れ、リュートに向かって飛んでいく。リュートは避けるでなく、腕で払うでなくそれをぼんやりと見つめてた。リュートにぶつかる寸前に火の玉は急に萎んで消えてしまって、リュートになんら被害はないみたいだった。
「リュート自体には魔力がある。そりゃそうだろう、いくらウルガさんに似ていても、母親はかの有名な回復師。遺伝的にはリュートが元々持っている魔力はカスみたいな魔法が使える今のルチェより上だろうな。
だが、アヤカは?アヤカの見た目とリュート本来の見た目が二分されて融合しているのが普段のリュートだ。だからアヤカの能力とリュートの能力も半分ずつだろうがな。
分けるべき魔力を持たないアヤカと分ければリュートの魔力は無くなる。全く魔力を持たない人間や物なんて聞いたこともないが、魔力が弱い人間には魔法が効きにくく、耐性があるのは知っている。武術大国で魔力が生来少ない人間が多いレッサヴィーラ人が魔族に成りにくいのはそのせいだからな。つまり、魔力が無い故にリュートは魔法が効かないわけだ。なら、この世で有り得ない魔力無しのアヤカは何者だ?」
「…………………言ってしまえば生前は人間だ。ただ、魔法がない世界の、な」
途中から目を細めて話を聞いていたリュートは、にこりと笑った。顔は確かに笑っているのにどうしてか無表情にしか見えない。
「……、生まれ変わったときはどうしようかと思っちゃったよ。体が弱かったから今度は沢山運動しようって決めて、頑張って言葉も覚えた。前世の、アヤカの記憶があるだけで俺は人間でしかないけれど。
アヤカは人間だ。異世界人……なんでしょう」
柔らかい口調ですらすらと紡がれる言葉に、あぁだから翻訳の魔法で言葉が滑らかになったんだな、と関係ないことを考えた。
叔父さん、アルバさん。従兄弟のリュートはやっぱりすごい人だった。だけど僕はどんな顔で接すればいいのか分からないんだ。アヤカさんは女の子だった。僕は本当にどうすればいいのか分からなかったんだ。
何気なく後半はリュートの顔しか見てないルチェ。




