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misunderstanding  作者: ryure
第四章 不死身の剣士と剣聖と大魔王
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「…………よりにもよって剣士殿が精霊憑きだったとはね」


 賢者がとっさに展開した「瞬間移動」の魔法の転移先は見慣れた場所、ミーミルファンらしき所の湖の畔だった。

 血をだらだら流しながらぐったりとしたリュートをどこか忌々しそうに見る賢者は何やらぶつぶつと呪文を唱え出した。

 その間僕はひたすら効きもしない「回復」の魔法をひたすら繰り返すだけ。リュートに当たる前に魔法の光は掻き消えてしまう。当たったとしてもやっぱり無駄なぐらいの小さな光だ。


 賢者の呪文は早口で聞き取れないけど言葉の雰囲気はリュートがさっき叫んでいた言葉に似ている気がした。そして呪文が終わると不意にリュートの体が硬直した。すごくびっくりしたけど、なんだ……、よく考えれば魔族の賢者が唱えないわけがない。時を止める魔法だ。リュートではなく周りを止めたのか、リュートの服も固まって石のようになっていた。


「……まさか、この世にまだ精霊憑きがいたなんて」


 呆然と呟くオランを横目で見ながら、一時的に時を止められたリュートをそっと草の上に下ろした。


 時を止める魔法はそれなりに一般的なのは知ってる。ただしそれは魔族の中でだけど。時を止める魔法は普通、危篤状態になった人(魔族)を助ける為にその人の時を止めて助けれる人を探すらしい。

 時が止まることは一応術者にもかけられる側にも害は無くて、強いて言えば強力な魔力をずっと浴びているようなもの、らしいよ。だから人間のリュートには辛いものだって賢者が言った。オランは近くにいるだけで見る見る顔を真っ青にして少し距離をとった。これは不味い……って顔をしている。


 でも、時を止めている時間は、リュートの命をつなぎ止めている魔法は術者の能力に比例する。賢者でさえ、三時間が限界らしい。だいぶ前に聞いた覚えがある。


「精霊憑き……多分剣士殿に憑いている精霊は魔法を無効化させるだけだね……なら魔王がやりかけた、精霊を引っ剥がすのをやればいいかな……」


 またぶつぶつと呟きながら賢者は魔法を唱える。魔法で魔法が効かない精霊を引っ剥がそうとしているのにちょっと眉をひそめたけど、オランのほうがぶつぶつ言っている内容が気になる。何言ってんだろ……?


「……だし、精霊憑きとか伝説だろ勇者よりも。何だよリュートって。魔王に喧嘩売るわ、剣聖だわ、勇者見習いとかあの賢者に言われるわ、挙げ句の果てに精霊憑きだと?アースルヴァイツって何だよ、もうリュートが世界征服を目論んでいいよ、それで世界平和に……」


 …………。聞かなかったことにしておこう。それよりも賢者の魔法を気にしよう。魔法なんて初心者同然にしか使えない僕でも分かるほど魔力が、賢者を中心にざわめいているから。


「……かの者に憑きし精霊よ」


 大魔術の特徴である、詠唱が始まる。ゆっくりと、じっくりと練られた魔力と言葉が不思議な光と風を撒き散らした。


 時が止まったリュートの髪の毛先がするすると癖毛が真っ直ぐに、そして色は金色に変わっていく不思議な光景が、目の前にあった。

 その顔立ちこそ変わらない。けれどそこにいるのはリュートであってリュートでない、金髪の青年に変わっていく。いつも顔に宿していた優しげな感じは消え去り、短剣のような冷たさをもつ青年に変わっていく。精霊憑き……らしいリュートは、何故容姿が変わるのだろう。


「……精霊よ、我が前に姿を。精霊よ、光の精霊よ、その姿を我に」


 不意にリュートの体から光が立ち上る。そうだ、賢者の魔法によってリュートに憑く精霊が現れる。


『……ルチェ、オラン、賢者様?』


 だけど現れたのは予想していた精霊ではなく、神々しさの欠片もない、ただの半透明の少女で、声こそ違うけれどその独特の舌足らずの言葉に彼女がリュートで、リュートが彼女なのか、憑く精霊は憑いた者に似るのかと考えさせた。


 リュートは、時の中に封印されたまま。


・・・・

・・・

・・


「……精霊殿、あなたは剣士リュディトゥ殿につく精霊ですね?」


 「賢者様」の声が聞こえました。滲んだように歪む視界の中には「ルチェ」らしき銀髪の青年や、「オラン」らしき金髪に黒いフードの青年が見えます。


 私は何故ここにいるのでしょう。私は死んだ筈。なら、私は何故この人達の事を知っているのでしょう。名前は分かるのに、愛称まで分かるのに、どうしてか記憶が曖昧なのです。私が「リュディトゥ」で、私のこと、「高坂彩花こうさかあやか」が私であり、「俺」であるのは分かるのに…………。


 「賢者様」の言葉は難しく、私にはなかなか理解出来ません。


『私は、何故いる?

賢者様、「俺」、リュディトゥ、何故ここいるの?』


 言語知識が殆どない言葉を必死で繋げて問いかけます。


 何故、私は前世の体にいるのか。何故、今世のリュディトゥの体にいないのか。何故、…………。

慌てすぎて冷静になったルチェと前世リュート。記憶はすごく混乱中。


分かりにくいので軽く説明。

リュート……血を胸からだらだら流しながら時間が止まって固まっている。何故か金髪になった。

ルチェ……慌てすぎて逆に冷静に。効きもしない回復魔法を唱える健気さ。よく彩花ちゃんが半分くらいはリュートだって分かったね。

オラン……「精霊憑き」とか呼ばれる存在の希少さを知ってる故に混乱中。投げやり?

賢者……精霊と交信中。でも言葉通じてない。

彩花リュディトゥ……何故か帰ってきたリュートの前世まんまな彼女。リュートの記憶が曖昧。

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