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我ながら結構やかましく騒いでいたつもりだけど、リュートは何故かまた伸びてしまうし、リュートの隣にさっき何故か寄ったオランはオランで絨毯の床に情けなく座り込んでへたっているし、叔父さんと叔母さんは少し離れてこちらをなんか微笑ましそうに見ているばかりで何も言わない。
……そりゃあリュートを魔王のところへ殴り込みの敵討ちに行くのを一日ぐらい引き留めたけどさ。でもそのリュートも動く気配はないし…………あ、絨毯に突っ伏した…………何か言いそうな賢者は見覚えがある気がするメイドさんと何か話してるし、うん。明日いろいろあるのにこんなに平和でいいの?
さっきリュートが顔をあげたから分かるけど、泣きはらした顔を誰か何とかしてあげてよ、ねぇ。腫れはとれないの?格好いいリュートの顔を何とかしてあげてよ、ねぇってば。
それに今日はこれでいいの?明日リュートが死ぬかもしれないんだよ?相手は魔王だよ?
「やっと……静かになった……ぐぶぶ……」
「何で痙攣して泡吹いてんの、オラン」
「……静か、俺楽、ルチェ五月蝿い」
「はぅっ!」
泡を吹いて目を回しているオランは放置しておいて(大袈裟に言っただけだから死にそうではないし)、リュートの、やっと絞り出したような言葉に大ダメージを受ける。
つまり、考え込んだ僕がさっきと違って黙って静かだからリュートが楽。僕が五月蝿いって訳だね……はぅっ!心にダメージが……。
「…………年々悪化してるな、このリュート厨が」
「何その最大級の褒め言葉……!」
リュートに五月蝿いと言われたのでやや小声にしながら返事をする。
明らかに今、オランに貶されたけど言われた言葉は僕からすれば褒め言葉だし、自分よりかなりちっちゃいやつに見下すような視線で見られても、それも下から見られたらまったくもって迫力なんてない。怖くないよっだ。
同じく下から見られても、リュートの視線なら多分物凄く怖いと思うけど……威圧感凄いし…………。ん、リュートの上目使い?そこらへんの女には絶対、断固として見せたくないね。リュートは格好いいから心の綺麗な子以外近づけたくないもの。リュートは格好いいからすぐに虜にしちゃうでしょ。従兄弟として守るよ。でも、僕の大切な想い人は取らないでね、取らせないから!
・・・・
・・・
・・
・
…………。
馬鹿騒ぎしていたらいつの間にか夜になっていたらしい。部屋に窓がないからいまいち分からないが。
で、明日は大仕事があるもんだから早いとこ寝ておいて疲労を取っておきたい俺としてはこの部屋の隅にでも寝かせてもらえればそれでいい。石の床には柔らかい絨毯が敷いてあるからここ十年の中では一番寝心地がよさそうだ。だが、母さんとしてはそれは許せないそうで……な。まぁ、俺もそのまま床で寝たら寝相が最悪なオランに蹴り飛ばされそうで嫌なんだが。
オランの寝相の伝説としては、十年前には俺とルチェをボコボコに蹴り飛ばしてみたり、五年前には小屋から落ちかけたり(ギリギリで助かった。落ちてもいざという時は賢者様に治してもらえばいいが、打ちどころが悪ければ死ぬ高さだ)、武器だらけの隣の部屋に転がり込んだり(こんなものは日常茶飯事だ)、一番危なかったのは壁にかけてあったルチェの矢筒に突っ込んだときだな。壁に物凄い勢いで突っこんでいったからバラバラと落ちてきたらしい。ルチェが目撃者だ。幸い、怪我はしなかったみたいだがあの時の慌てっぷりは見ものだった。つまり、オランと同じ床で寝たくないというわけだ。今までもオランを一番端に置いて周りに布なら毛皮やらを積んだ殆ど意味のないバリゲートをつくり、酷いときには縄で縛っておいたが、気休めだったな。勿論俺とルチェは逆の壁の端にそれぞれ寝ていたが。
無駄に暑苦しいルチェはこっちに寄るなと言っておいたな。
「……おい、オラン寝るな」
「……起きてるよ……」
ふと見ると、こっくりこっくりと今にも眠りそうに船をこぐオランに声をかけ、眠そうな声を聞いたルチェがオランを蹴り飛ばそうとするのを止める。……仮にもこの国の王子を蹴り飛ばすのはまずいだろうよ……。
「もうお休みになられますか?」
「……あぁ」
古株の見知ったメイドが尋ねてきた。頷いた瞬間に広いこの部屋にいきなりベッドが出現した。…………冷静そうに取り繕っているが、心臓が止まりかけるほどびっくりした。眠りかけのオランは気付いていなかったみたいだがルチェは間違いなく飛び上がったな。あ、すっ転んだ。腰抜けたんじゃないか?
「お休みの際にはこちらのベッドをお使い下さいませ」
「……了解した」
驚きから覚めぬままだが、慌ててもしょうがない。しかも見た目だけは取り繕ったので如何にも冷静そうに答えておいた。ただし心臓はまだバクバクと五月蝿い。ルチェはピクリともしないし大丈夫か……?
その日はそれで就寝し、明日に備えた。




