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misunderstanding  作者: ryure
第四章 不死身の剣士と剣聖と大魔王
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外伝2

時系列は少し前。

『師弟バトルとルーウェンス』


 太陽が出てきたぐらいに目が覚めた僕はいつも通り顔を洗おうと小屋の梯子に足をかけた。……にしても、オランの寝相は何とかならないのか。蹴られたり巻き込まれたりしないように部屋の端という、出来る限り離れて寝ているから被害は無かったけど、今日は隣の部屋に頭を突っ込んでたなぁ。軽く部屋を横断して段差を乗り越えたって事になるな。オランって実は凄いのかも知れない。


 リュートは既に起きていたみたいだし、早いとこ狩りに行かないとなぁ。


「……ん?」


 欠伸をしながら井戸に歩み寄ると少し遠くから金属音が響いてきた。……リュートが剣を練習するときは巻き藁だっけ、植物で作ったり毛皮のぼろっちいのを巻きつけたりしたのを木刀で叩いてるから……何だろう。戦ってるとか?……誰がだよ。


 一応足音をたてないようにそっと歩きながら、音のする方向へじりじりと近づいた。


・・・・

・・・

・・


 キィンッ!


 一際高い音が響く。今まではそこまで大きい音じゃなかったから気になるな…………。僕は足を早めた。


 キィンッ!キィンッ!


 音が近づく。あれ、あそこにいるのは…………叔父さん?木の陰に隠れて何をしているんだろう。今みたいな朝焼けで視界が悪くなきゃ、隠れても叔父さんは目立つのに。


「…………叔父さん?」

「しっ!静かにっ!

…………あぁ、ルチェくんだね、君なら来ると思っていたよ」


 鬼の形相で睨んできた叔父さんは僕だと分かった瞬間に小さく笑った。残念ながらそれで誤魔化されるような子供じゃないんだよ、もう二十歳なんだ、僕。だからその顔も怖くないんだけど、一応曖昧に頷いて叔父さんの覗いていた方を伺った。

 木に隠れていたけど、そこはぽっかりと何故か木がない空き地になっていて、二人の人がいた。ちょうど朝焼けが山の間から差し込む場所だから目が眩む。よく見えないなぁ……。


「……あの人達がどうしたの?それから金属音が聞こえたんだけど……」

「ルチェくん、君はまだ寝ぼけて目が霞んでいるね。片方はリュート、片方はアルバ殿だよ。真剣での稽古だ」


 リュートと聞いた瞬間に僕は若干普段より小さめに開いてあった目をカッと開いた。日の光が目を刺すように迫ってきて、視界が一瞬白に染まったけど気合いで吹き飛ばす。叔父さんがたじろいた気がしたけど気のせいかな。


「リュートが稽古……真剣……アルバさん……剣聖……ふふふふふ……なんで僕はリュートの勇士を十年も見逃して来たんだろう…………ふふふふふ……リュートが格好いいのは知ってるけど……こんな早くからやってるなんて……ふふふふふ……僕、明日から絶対に見逃さないよ……」

「帰ってきなさい、甥よ」


 すっかり目が覚めて綺麗になった視界の真ん中には、確かオランが怪しく笑いながら作っていた剣を持つリュート。剣を素振りどころじゃない激しい動きだなぁ……。戦いながらだからめまぐるしく動くけど、絶対に見逃さない。

 剣を作ったオラン曰く自分の中で何かが切れる音がしたそうだけど。リュートが使うなら僕だって鍛冶がしたかったなぁ。専売特許が無くなるって言われたから止めたけど。


「……あんな動きでよく疲れないなぁ、流石だなぁ」

「ルチェくんも結構凄い動きをしているよ。よくもまぁあんなに視界の悪い密林で走れるもんだ」


 隠れているとはいえ、絶対に見つからないようにはしていないのかな、最初に「しっ!」とか行っていた割には普通の声でしゃべってる。


 とか考えているうちに金属の打ち付け合いはどんどん激化していく。リュートの反射神経も半端じゃないけど、あんな大柄な体でリュートに対峙しつつ対して動かないアルバさんも流石は剣聖だよ。


「……勝負がつくかな」

「…………」


 ぽつりと叔父さんが呟いて、真面目な顔になった。叔父さんは振り返って僕に言う。


「良く見ておきなさい、ルーウェンス。

非公式とはいえ新たな剣聖の誕生だ」


 再び二人を見た叔父さんと僕には、確かにアルバさんの剣が弾き飛ばされる瞬間が見れた。そして素早いリュートがアルバさんの首に剣を突きつけるのを。


・・・・

・・・

・・


「ねぇ、オラン」

「…………何か?」


 一旦小屋に帰ると流石に目を覚ましたオランが楽しそうに縫い物をしていた。正直早すぎて手がぶれて見えるんだ……。神業とはこれか。リュートと別の意味で凄くなったもんだよね……。


 今はちょっと寂しい気分だからあんまり何かを考えるのはよそうかな……。


「憧れの人ってどんどん遠くなるね」

「言っておく…………お前と俺が戦えば三分以内に俺は死ぬ。つまり、お前は俺にとっては遠い人だからな」


 手を止めず、顔も上げずに返してきた言葉は優しい口調ではなくて。だけど十年越しの友人の言葉は僕を気遣ってくれた。

 室内だというのに黒いフードは目立つ金髪を隠していた。きっと今のオランの顔は何とも言えないような顔なんだろうな。


「……そっか。リュートは遠くても、想像よりは近いのかも知れないな」


 呟きを聞いたオランは無言のままでいた。




 剣聖、ここに誕生す。

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