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misunderstanding  作者: ryure
第四章 不死身の剣士と剣聖と大魔王
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「い、いいのだね?いきなり痛みが来るだろうけど、致命傷ではないから、死なないとは言っても……突き刺さった矢までは移らないから血を噴く羽目になるけれど、いいのですね?」

「僕の傷が簡単に魔法で治るなら、リュートの傷が治って、僕がリュートの為になって、親友のリュートが今感じる苦しみから少しでも解放されるなら、僕、死んでリュートに会えなくなる以外ならば何でもするんだ。だから確認は良いから早くしてよ、大婆さん」


 普段なら僕が言っていることに気付いて止めに来る、心優しいリュートは話を聞ける状態ではないし、此方を見て心配げなオランは叔母さんの治療を受けているから動けない。叔父さんは黙ってみててくれてるし、止める人がいない今のうち。

 リュートが早く楽になって、魔法で治るなら傷が後々にリスクがたいして無いみたいだし、さっさとやっちゃって欲しいな。


「…………その勇気ある心意気に感謝します。

……『×××××』……」


 大婆さんがよく分からない言語で魔法を唱えた瞬間、背中や腕に焼け付くような熱さと感じたことが無いぐらいの激しい痛みが僕を襲った。頭にも怪我があったのか、垂れた血が視界を染めていく。……大事なバンダナが汚れちゃったな……。

 でもさ、感じる痛みは酷いけど、僕は唸り声すらこぼさなかったよ。だってリュートが、さっきの瞬間まで感じていた痛みなんだよ?リュートの、僕らを守る為に受けた傷を代わりに僕が一時的に受ければリュートは痛くなくなるし、怪我も今すぐに無くなる。それにリュートの為になれるなんて僕はとっても嬉しいんだから。

 そういえば、魔法に耐性があるリュートも、「僕」に魔法がかかって血の関係で傷が移るなら耐性も関係ないみたいだね。良かった、成功して。


「『×××××××』……。

具合はどう、ルシェヴァルツのルーウェンス?」

「全く痛くないよ、大婆さん。

リュートはどう?」


 リュートは相変わらずしゃっくりあげていたけど、僕から見える背中の傷は消えていた。刺さっていたらしい矢も近くに落ちていたから無傷だと思う。一つ心配なのは流れ出た分の血かな。それは僕もだけど、リュートと流れた量は全然違うから。


「リュートも心配無いようよ」

「……良かった」


 安心したように叔父さんがホッと息を吐く。つられるようにして、僕も息をそっと吐いた。


・・・・

・・・

・・


「何、もう一度言ってみろ」

「は、はい、魔王様……!

原住民や逃げ出した人間の住まう『ミーミルファン』に襲撃致しました第一魔王軍は全滅を確認、四天王のうち風のリヴィーンは参加致しませんでしたので無傷、他は同じく全滅致しました!なお、第一偵察部隊によりますと、現在ミーミルファンに人間は居らず、逃げ出したと見られます!」


 魔王城、玉座の間にて。おどろおどろしい装飾に黒や紫などの色合いのその場所はまさしく魔王の居城の中枢である。

 声だけは威勢の良い魔王軍近衛隊長は敬礼のまま、冷や汗を垂れ流していた。何故ならば魔王が姿も知らぬ人間の生き残りに深い憎悪を抱き、向けられた殺気は行き場がなく、この玉座の間に充満していくばかりだったからだ。


 魔王はぐしゃりと自らの金色の髪を掻き上げると、その真っ黒な目を鋭く光らせて命令する。


「…………元人間の長を呼べ、直ちにだ」

「はっ!」


 不機嫌かつ憎しみの色に染まる魔王が頭に浮かぶ反魔王勢力を思い描いた。


 ミーミルファンの賢者、アースルヴァイツの賢者、逃げ出した人間、そして今から呼ぶ元人間の国王。全てが魔王に憎むべき存在であり、永遠に相知れない者だった。


 だが、魔王は知らない。魔王が人間を憎むと同時に生き残りの人間である青年が魔王に殺さんばかりに憎み、怨み、復讐心にかられていることを。反転した鏡のように真逆である「魔王」と「剣士」がその武器を交わす日が近いことを。


 魔王は、一人玉座の間で「ある青年に似ていなくもない顔で」にやりと笑い、「またある青年によく似た表情で」宙を仰いだ。


「…………、……勇者、か」


 思いを馳せるのは、まだ見ぬ勇者であった。


・・・・

・・・

・・


「……母さん」

「まぁ、リュートに私がまた『母』として接することが出来るなんて夢のようだわ!」


 あれから何時間か経って、何とか落ち着けたリュートは今度は盛大に同様してるね。いやぁ、最近リュートが余り話してくれなかったからさ、寂しくって。だから長々とリュートに落ち着くように話をしてたら、途中からリュートがじりじりと僕から離れていっちゃってさ。何でかなって思ったけど、最後には全力の鬼ごっこになったよ。負けたけど。


 僕が話した成果か、リュートの心に余裕が出来たからか……明らかに後者だけど……落ち着いたリュートは、決まり悪そうにしていた。服が真っ赤っかの血塗れだから。

 そしたら叔母さんが昔の叔父さんの服を出してきてくれたけど、うん。…………袖もズボンの丈が合っていないリュートでも格好いいから大丈夫だよーーって、言いたいな。要するにぶかぶかでね。急遽オランが丈を揃えて、それから今に至るんだ。

 あ、その前に魔法で叔母さんが大量に剣を持ってきてくれたっけ。リュートは昔、沢山の剣を持ってたって言ってたし……それかな。


 久しぶりに騎士っぽい服で、叔母さんから受け取ったレイピアを持つリュートは酷く懐かしい気がしたよ。


「……」


 だけど、僕らはアルバさんを見送らなくちゃいけないんだ。僕からはリュートの顔が見えないけど……。悲しい顔をしているのは分かる。僕も、感情の麻痺が少しずつ無くなってくるのが分かった。

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