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misunderstanding  作者: ryure
第三章 蛮族の剣士と最速の狩人
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「で、あのことだが」


 ぽつりと唐突に話し始めたリュートにびくっとする。話し始めた瞬間からリュートは冷たい無表情になっていたから。


「俺は村人を逃がし、俺は正面突破する」

「お婆さんが来てくれるんだろ?」


 呆れたようにやんわりとリュートを止めるオランは見た目だけ。止めれるはずはないと、助けを求めてこっちをみた。リュートを止めれるはずがないだろ、僕に。


「いざとなったら、だ」

「魔族がここでは弱体化はするだろうが、多勢に無勢だろう、無茶言うな」


 シェーラさんの手紙を思い出せば、余程有力な魔族で無い限りは弱くなるはず。だから勝機はあるけれど、稀薄。勝てるわけなんかない………………けど、リュートがいると話が違う。多対一にはリュートは強いから。僕は後衛しか出来ないから、そういう戦いは限りなく弱いけれど。


「みすみす自由を逃してたまるか」


 ……自由か。リュートは昔自由じゃなかったと言うのだろうか。僕としては、どんなリュートも格好いいと思うけれど。またそれとは違うんだろうな。ここを守るために、リュートは戦うんだろう。なら、僕はそれに従うだけ。


・・・・

・・・

・・


「正面突破」

「阿呆…………」


 魔国の方向に(三百六十度全部周りは魔国だけど)大剣を向け、小さく呟いているけど言っていることはとんでもない。決意の塊になったリュートを止めるのはもう無理だ。


「魔族が来るなら頭ひっつかんで引きずり出してやればいい」

「野蛮な考えだ」


 小声で言い返すが、さて困った。リュートは戦場に切り込むだろうし、ルチェは後方支援をするだろう。俺の場合は戦闘技術なんかないから引っ込むんだろうけど。魔法は使いたくない。俺の剣術は役に立たない。戦闘において役立たずな俺としては平和が一番だけど、……戦闘狂の気があるリュートは止まるはずがない。魔王が大嫌いなんだし。


 ま、困ったといってもあまり危険ではない。賢者殿やリュートのお婆さんが味方なら戦死は免れるだろうし。一番困るのはウルガ殿やアルバ殿の説得だろうか。……リュートを止める選択肢がない。


「魔法なんか痛くないからな、楽勝だ」

「普通、初級を人間が受ければ死に至るが?」


 そういえばかの昔、魔法を受けつつも眉一つ動かさなかった友人を見て、ため息を一つ。規格外なのはいい、まだ。ただ、無茶に俺を巻き込むな。


「そうなのか」


 別段、気にした風もなくこちらを見返すリュートは目をぱちくりさせた。


「服すら傷つかないのに人は死ぬのか」

「あのときお前、魔法を思いっきり防ぐ場所で魔法を使える猛者と戦ってたよな、魔法なんかマッチの火以下なんだから服は無傷だろう、人体には影響があるが」


 魔法とは摩訶不思議で、見た目は何ともなくとも人体に害なす物。つまりマッチの火以下に見えていても魔族が使えば凶器。ルチェが使えば見た目のまま。魔族の刃にまさに相応しいものだ。魔法封じすら気にしない猛者の魔法は弱々しかったが威力はとんでもなかったはず。まぁ、そんな力に溺れたからこそあいつらは魔族になったんだが。


「ふぅん」


 聞き流すな、リュート。俺やルチェはお前と違って魔法で死ぬんだ。だから無視すんなって。ルチェ、おい、気まずげに目を逸らすな。


 魔国に向かって小石を高速で投げるリュートを止めながら、迫り来る不穏な空気にまたため息を吐いた。なんでこう、いつもは無駄に大人であるリュートはいざという時にはなんて酷く子供何だろうか、と考えながら。


・・・・

・・・

・・


 そしてやってくる、戦いの日。村のみんなは既に逃げた。ここにいるのは俺たち…………俺と、リュート、ルチェ、ウルガ殿、アルバ殿、そして賢者。

 泣きながら好きな子に別れを告げるルチェを励ますリュートが、こちらの主力。前衛で戦いながらも魔法を避けれるなんて軽く言ってるこいつが、主力だ。向こうの主力は知らないが、魔法中心で戦われたらリュート以外死ぬ気がする。だから、出来れば魔法でなかったら…………生きれるかな、という希望的観測だ。リュートのお婆さんが来るまで持ちこたえる、とウルガ殿には言っているが……説得はリュートに任せた、知らん。


「来たな……」


 魔族はやや顔をしかめながら、数人で歩いてやってきた。偵察の要員か。出来ればこれで全部であって欲しい。人間あがりではない真の魔族は人間では太刀打ち出来ないし、真の魔族でなくとも五人ぐらいで対等だろうから……。


「空気が不味いな」

「魔力が薄いんだ、黙っておけ。こんな場所じゃ、魔法は使いたくねぇな」


 木陰に隠れる俺たちが見えないせいか、のんびりと話す魔族を見て、リュートの笑みが深まった。勿論、見てて気持ちの良い笑みではなく、残虐で獰猛な笑みだ。普段は無表情だからか妙に寒気が走る。


「……気配ねぇな」


 いや、俺の横にいるリュートは殺気を隠そうともせずに笑っているけど。声はあげていないが、間違いなく不気味なやつがいるんだが。気づかないのか……出来れば帰ってくれ、今すぐに。


「…………生活の跡がある、それも新しいのが。人間がいた証拠だ」

「へぇ、賢者みたいな特殊体質を持ったやつって村を作れるぐらいいるのかよ」


 ルチェが静かに矢を弓につがえて構えを取り始めた。もう始まるのか。まだあいつら、何もしていないが、いいのか。


 やや疑問ではあるが、ルチェもリュートも木陰から飛び出したりはしない。あいつらがエスカレートしてなにかをするまでは待つのか。短期なルチェが弓を射るのが先か。リュートが魔族を狩るのが先か。


 タイミングを見計らう二人と魔族を見比べていると、ふいに空から何かが降ってきた。

 ……………えっ?人って降るもの、だっけ。あれ、見覚えがある……。


・・・・

・・・

・・



そろそろ血なまぐさくなるかも知れません。ぬるいですが。

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