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misunderstanding  作者: ryure
第二章 剣士の成長と異変
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『15』

 そして、審判の王宮近衛兵がキラリと日の光を浴びて輝く、新品の小金貨を手から落とし…………チャリン、と部分的に石畳である地面に触れて小さな音を立てました。


 次の瞬間、黒い疾風が王子殿下の横をすり抜けます。同じく黒い、剣の眩しい反射光が綺麗な弧をえがきました。黒い疾風。勿論、私のリュディトイゥのことです。


「な、な…………!」

「アルバ先生ならば、目を瞑っても防げますよ」


 ザクリ、と何かが突き刺さる音がしました。見ると、王子殿下から二メートル程先には、先ほどまで王子殿下が持っていた聖銀のレイピアが刺さっています。私の可愛いリュートくんは黒鉄のレイピアをぴたりと王子殿下の喉元に当てながら、低く囁きました。

 残念なことに此方からは何時ものリュートくんの鋭い眼光は見えません。でも、見える顔の半分は…………今までに見たことが無いほど、楽しそうに笑っていました。リュートくんが楽しいならいいですね。そろそろ王子殿下もちゃんと正しいことを知っていかなくてはなりませんし…………陛下の御墨付きなのですから、派手に戦うリュートくんを見て純粋に楽しみましょう。

 天井の抜けた闘技場で、静かな風がリュートくんと王子殿下の髪を揺らしました。きっと、爛々と金色の瞳は太陽の光に輝いているのでしょう。


・・・・

・・・

・・


 リュートくんって、やっぱりとっても凄いんだ!王子殿下との剣の試合で、たった一瞬で勝負を決めちゃうんだ!やっぱり誰よりも凄いの、リュートくんは!僕の目にはあの動きじゃ、断片的なリュートくんしか見えなかったよ!とってもとっても格好良かったし、珍しくリュートくんがとっても笑顔だったから心の中に永久保存するよ!でも勿論、普段のリュートくんの姿も絶対に忘れないけどね!それでも特別におぼえておくつもり!


「う、嘘だ!穢らわしい黒色の癖に剣の試合で魔法を使ったんだろう!」

「私は魔法が使えません。それから、ここは魔法は使えないようになっています」


 うん?ここ魔法使えないの?試しに少しだけ、火を出す魔法とかやってみようかな。ちょっと前に教えてもらったんだ。

 僕って剣が使えないし、弓しか使えないくせに他に何の技能もない役立たずなんだもの。だけど魔法の才能も対してないみたいで……ちょっとだけ炎とか、治癒の魔法が使えるだけ。リュートくんは魔法が使えない代わりに剣が物凄いんだよね?天は二物を与えず、とかいうけどリュートくんにはガンガン二物を与えていいと思うんだけどなぁ……と言うかなんで神様はリュートくんに魔法を使わせなかったんだろう。それともまだやっていないだけ?


「……っ?!」

「あら、ルーウェンスくん、魔法を使ったの?今ここは魔法が使えないように結界があるから無理なのよ……無理したら身体に悪いわ」


 リュートくんのお母上が、急に吸い取られた魔力をひょいっと結界から取り戻してくれた。この結界は魔力を吸い取るタイプかぁ…………。一番嫌だよ。だってさ…………手に持ってるリュートくんの写真とかを一瞬で他人に持ってかれる様なもんだから。

 見ようとした瞬間に!酷いよ!あ、僕としたことが炎の魔法とリュートくんの写真を同列扱いするなんて……。僕、リュートくんの肖像画の写真を前、頑張って父上に貰ったからそれが宝物なんだ。


「×××××ではありません、殿下」

「…………」


 何時までも小さな子供みたいに暴れる王子様にリュートくんが声をかけている。何だろう、「ヤオチョウ」って。ズルのことかな?リュートくんって難しい言葉を知っているんだなぁ。でも変わった発音……そんな言葉あるんだ。


「陛下、全力で早く勝ちました」

「うむ、私には剣の煌めきしか見えなかった。素晴らしい腕前だな、アースルヴァイツのリュディトゥ」

「お褒めに与り光栄です」


 黒いレイピアを鞘に収めたリュートくんは、放心して地に膝をつく王子様に手を差し出した。物語の騎士王みたいな絵になっている、とっても格好いい光景だよ!


「王子殿下。お立ちになって下さい」

「…………」


 王子様はリュートくんの手を取らなかった。それどころか、地面に突き刺さった自分のレイピアを引き抜き、リュートくんへ向かって思いっきり投げた。王子様の暗殺計画を一瞬たてたのは僕だよ。多分叔母上もだけど。リュートくんのお母上ね。

 剣先が、真っ直ぐにリュートくんへ向かって……。


 でも、リュートくんはやっぱり凄いんだ。飛んできたレイピアをひょいと片手で掴んで止めたんだよ。そして…………。


 バギッ……グシャッ……。


 格好いい笑顔が消えた無表情のままで、レイピアを片手でへし折り、ダンって踏みつけたんだ。リュートくんがやるとなんでも正しいことに見えるよね。“正しいこと”だよね、リュートくんがやってるならさ。

 流石はリュートくんだよ…………でも王子が持ってるレイピアなら、強化の魔法とかもかかってると思うんだ。だけどそれすらを超えてグシャグシャの金属の塊にしちゃうなんてやっぱり凄いよね!あんなこと、僕は一生できないと思う。


「殿下は私を殺す気でしょうか?つい壊してしまいましたよ」

「ひっ……」


 台詞だけだとまるで悪役だよリュートくん…………でも、リュートくん怒ってる。今までに見たことが無いぐらい……。でも格好いいと思うんだ。誰よりも。


 王子がレイピアを取るために二メートルぐらい離れていたからかな、リュートくんは一歩ずつ王子に歩み寄る。進む度にリュートくんの足元の地面の土が割れてるよ…………。地面がバキバキ言ってるよ……。


「では第二試合を王子殿下が望まれているようですので…………誰か、殿下にレイピアをお願いします」


 恐る恐るリュートくんに審判の王宮近衛兵が新しいレイピアを差し出した。それを無造作に受け取ったリュートくんは、笑ったよ。心底楽しそうに、嬉しそうに、新しい玩具を貰った幼児のように、ね……。その表情すらも格好良いけど、ほんの少しだけ怖くなった。リュートくんがとても遠い雲の上の人だと自覚して。で、でも!僕はリュートくんがどんなに遠い存在になっても追いかけるし、どんなに下のところからでもリュートくんを見上げるつもりだけどね。


「さぁ、殿下。

今度は打ち合いにしましょう?」


 リュートくんの金色の目が愉快そうにチカチカと瞬いたのが見えた。がたがた震えて怯える王子にレイピアを酷く丁寧に渡すリュートくんを見て…………リュートくんも、自分の髪色のことについて言われて、怒ったんだと初めて気づいたよ。

 僕?最初から逆襲についての計画はたてているよ。リュートくんが馬鹿にされたんだ。リュートくんが、大好きなリュートくんがだよ?王子じゃなかったら僕の弓が唸ってたよ。僕の力じゃショートボウしか使えないし、ロングボウなんて使っちゃったら、かかっている強化魔法とかに僕の筋肉とか骨とかがやられちゃうけど……うん、リュートくんのためなら怪我せずにやれる気がする。


・・・・

・・・

・・


「レイピアでも相手の剣先ぐらいはいなします。だから少しぐらい打ち合いをしても剣は大丈夫ですよ」

「あ、あ…………」


 最高に俺は怒っている。流石に目つきが悪くて白くてひょろひょろしたやつに負けたからって、命を狙うような人間を易々と許したりはしない。だから仕返しとして死ぬほど怖い目にあってもらおうと思い、レイピアを打ち込む。だが、びびって怯えて、レイピアを受け止めなくては危険になるように打ち込まないとこの王子、 反応すらしない。ピクリともだ。反射的に動く以外動かないなんて、こいつ、役立たずになるために生まれたのかと思うほど。偏見を持っているぐらいだ、賢王にはなれそうにない。


「足元がおざなりですね」


 王子のふらつく足を払うように蹴ってやればあっさりと王子は転んだ。やれやれ、所謂“剣術の型”は出来ようとも、体術が全然なってない。

 下手すれば……下手しなくても、二、三年前の俺でも勝てるぐらいだ。明らかに腰が引けている。ちなみにさっきの一瞬で勝負がついたときもだ。


「私に試合を仕掛けたのは誰ですか?」


 剣を払い、わざと隙を見せ。やはり勝ちたい気持ちはあるようで、打ち込んでくる、赤ん坊のように泣いている王子の剣を手で止めてみせ。


 弱者と判定した俺は王子の懐に剣を突きつけた。


・・・・

・・・

・・

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