1-4 CAFの司令官
「CAF」とは、
あらゆる事態に対応するための特殊部隊。
交通網が制限された現代では、迅速な任務遂行の為に行動範囲が広く許されている数少ない機関の一つ。
全国各地の範囲に部署があり、平生、深見、高宮ら3名が所属した組織はチームβ。主な活動範囲はエリア02〜08である。暴走した一般市民の本部襲撃に備え、全滅を避けるべくエリア02に一つ、エリア05に二ヶ所本部がある。
「CAF」は主に抗ウイルス剤「ヴィーナス」関連の事件で動く。が、本質的な役割は別にあるのだ……。
エリア03の地下研究所内部の特殊実験室にて。
研究員達が行く手を阻んでいた扉の奥の奥の部屋。扉のロックはすでに破壊されており、弘前が辿り着くのは容易だった。
弘前「これは…」
荒らされてはいるが、いくつもの無傷のカプセルがあった。
弘前(人間?いや……)
液体と共に中に入っているのは、3mもの巨体である人型の「何か」。どす黒く変色し膨張したその姿は、熊に近い。
弘前(ただの感染者じゃこうはならないはず。能力堕ちでもなさそうだし…)
エリア05の地下にある「CAF」本部Bの連絡室にて。
牛嶋「B班のとこが単独犯だぁ?能力者確定じゃねーか」
遠藤「はい。ですが監視映像はすべて破壊されているので特定には時間が掛かるかと」
牛嶋留彦50歳。チームβ最年長であり、司令官でもある。
菊地「司令官、C班と連絡が繋がっています。リーダーの阪が一人逃した犯人を引き続き捜索、追跡すると言っています」
牛嶋「分かった、行かせろ。それと一応、峰島を待機させとけ」
スキンヘッドに長めの髭を生やし、いかにも威厳がありそうな見た目の牛嶋。彼の決断力は早い。
高いIQ所有者のことはMENSAと呼ばれている。MENSAは人口の2%しかおらず、牛嶋はその一人だ。
エリア04のとある造船所の倉庫にて。
10人近いガラの悪そうな男達が集まっていた。
坂口「唐沢さん、大場が戻って来ました」
灰色のパーカーを着た、坂口純が報告する。フードをかぶり、ガムを噛んでいる。右手の甲には大きな黒いアザが。
大場「すいません、他の奴らは「CAF」に捕まっちまいやした…。けど薬は三つ手に入れましたよ」
唐沢「でかしたぞ、大場」
両耳に10以上のピアスを着けている唐沢大地はそう告げた。丈に合わない小さい黒シャツは、彼の筋肉を強調させている。彼の首元には坂口と同様の黒いアザがあった。
エリア05の地下にある「CAF」本部Bの連絡室にて。
牛嶋「C班、聴こえるか?こちら司令官」
阪『こちら阪勝樹、どうしました?』
牛嶋「襲撃者の車と思われる衛星の映像が届いた、まずエリア04に向かえ」
阪『もう来てます』
牛嶋「!?…………流石、といったところだな」
犯人の居場所を伝えようとした彼は、仕事の速い部下に賛辞を贈る。
一部の研究所では、こういった事態に備えてか、その周辺の衛星映像が入手しやすくなっているのだ。
牛嶋「じゃあ南の造船所へ行け。加勢を送るからくれぐれも無茶するなよ」
阪『了解』
そこで通信は切れる。
牛嶋「ったく…、破天荒な奴だ」
牛嶋は煙草をくわえ火を点けた。
続く