1-1 新人の初任務
5月20日、
エリア03のとある巨大研究所にて。
平生「すごい薬品臭いですね、ここ……」
阪「そうか?エリア04の郊外にはもっと激臭がだな…」
そう話す2名、いや、近くには計5名の薄着に武装をした者達がいる。多少異なった服装だが、彼等の首元には共通して「CAF」の三文字。「Control of Ability Force」 、「対能力者特殊部隊」と呼ばれている。
彼等がいる場所はデパート並に巨大な研究所。事実上、大量生産が不可能の、ある薬を開発している。そしてその薬の存在が今回の事件の発端でもある。
2030年、全国に謎の細菌が大量発生した。大気中に散布された有害ウイルスの影響で人口の六割が死亡した。感染方法は不明で、発症者は自己治癒は不可能とされ、不定期に血を流し死ぬことから「ブラッドウイルス」と呼ばれる。
その成分を調べて出来たのがある薬、抗ウイルス剤「ヴィーナス」。だが抗ウイルス剤はたいへん希少で、大量に作れるようになるのはまだまだ先だろう。
その貴重な薬をめぐり今の国の治安は最悪である。100近い数のエリアに分断し、他のエリアへの交通網を少なくすることにより悪化を防いだ。しかしそれも愚策に過ぎず、「CAF」の組織が組まれたのだった。
そして時は20年後、2050年。
短髪の男は通信機器の様子を見る。
阪(ちっ、圏外か…、だから狙われたのかもな)
5名は薄暗い中を拳銃を構えながら進む。電気の類は壊れているようだった。とはいえ、無事なものもあり、半停電状態に近い。
阪「罠が仕掛けられているかもしれん、慎重にな、平生」
平生は、はい、と返事をした。阪が平生にのみ注意を促したのは他でもない。平生は今回が初任務。どころか、「CAF」所属初日なのだ。
事の始まりは一時間前。
エリア05の地下にある「CAF」本部Bの一室にて。
鋼「おー、新人共。今回案内を務める鋼拓海だ、よろしく」
三人の新人を前にした金髪の若い男が言う。
鋼「じゃ右から。名前と…年は全員18だよな?名前だけで」
一人目は肩まで届かない、小柄な女性だ。
高宮「あっ、高宮三葉です、よろしくお願いします」
鋼「まぁ女の子は少ないけど頑張って、次は…」
と、横の暗い雰囲気の新人に目をやる。
深見「深見龍我です」
鋼「あ、君が例の!ランクは?」
深見「14です」
鋼「新人で14かよ、凄ぇな…、えっと最後は」
平生「はい!平生貴文で…」
言葉の途中、突然部屋の扉が強く開かれた。現れたのはショートカットの女性。そしてその背後にはがっしりとした体格の男性。
弘前「鋼クン、急いで……、って取り込み中?」
鋼「そ、新人案内だけど、何か事件?」
弘前「三ヶ所の研究所が同時間帯に襲撃されたって。緊急に3つの班が組まれて、A班の指揮が鋼クンだから」
鋼「えー、能力持ちの上位に任せりゃいーじゃん、わざわざ案内役に…」
弘前「残念だけどほとんど出払ってるから、それと新人3名もそれぞれの班に振り分けられてる」
そして新人トリオは初任務となった。
鋼「じゃー行くぞ新人、まあ出番はほぼないと思うけど」
深見は静かに返事をする。
弘前「弘前涼香。初日だし、わたしの後ろについて来て」
高宮「は、はい!」
平生「平生貴文です!よろしくお願いします!」
平生の班の担当は強面長身の坊主頭だった。
阪「阪勝樹、平生といったか、ウチは人手も足りてないし新人扱いする気はない」
続く