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ファンタジーワールド

さて、またもや卒倒したあたしですが、理不尽な現状に目を覚ましたわけです。



「なっ……ひあっ」

「起きた?ああ、いいよ、無理しないで俺に委ねて」

「な、にが……あっん!」



……言わずもがな、散々啼かされました。

起き抜けだっつうの!

委ねるも何も、合意をすっ飛ばしてすでに致しちゃってるって、頭の中どうなってんの!?


と思ってBBを引っ叩いたのは、それからおよそ三時間後のことであって。



「声が枯れてて何言ってるかわからなかったよ」



とは、引っ叩たかれたことさえ気にも留めないBBの言葉。


淫魔族って絶倫なの?

そして傍若無人?

傍若無人で絶世の美女顔で、もしかしたら、ついでとばかりにとんでもなくチートとか?


チートは最近覚えました。

元いた世界で、完璧な人を友達がそう呼んでいたので。

ちなみに、そのときにようやくリア充って言葉も知りました。


ああ、俗っぽいあの世界が懐かしい!

いやね、ここも、少なくともBBは半端なく俗っぽいけどね!


……淫魔族ってくらいだし、あたしの精気でも食ってるのかな。


こーわーいーっ!!!!!



「で、どう?」

「美味しい」

「それはよかった。ただ、そこじゃないんだけどね」



自らの行為を正当化したいのか単なる気紛れなのか、腰砕けで動けないあたしに紅茶を持ってきてくれたBBが、苦笑を滲ませてそう言った。

まあ、最初からこういうところは優しい。

それが何故に、移動となると米俵担ぎなのかはわからないが。



「まあ、俺は大抵わかったからいいけど」

「何が?」



どうでもいいけど、何で全てを語らないかな。

わかりやすく簡潔に、まとめて喋って、お願いだから。



「情報共有。再度試してみたんだ。今度は上手くいってると思うんだけど、どう?」

「……他にどうにか出来ないの?」



普通に説明するとか、何かあるだろ、何か。


しかしながらBB曰く、ヒーロー5 (戦隊ものみたい) に魔族から淫魔が選ばれるのは情報共有が可能だからで、所謂いわゆる義務みたいなものらしい。

異邦人からしたなら傍迷惑極まりない話だけど、淫魔的に、それは対したことにはならないらしく。

何でも、異邦人の精気は格別に美味しいんだとか。


……やっぱり喰ってた……。


でも、今みたいに普通に説明すればいいのでは?

と思ったけど、もう言うだけ無駄な気がしたので、それは何とか飲み込む。

あたしに大事なことは、如何にしてセクハラとパワハラと下ネタを躱し、無事帰還を果たすのかということだけ!


そしてその後の確認により、世界に体が馴染んだらしいあたしの情報共有は、今度こそ、上手くいっていたのでした。



「残念」



BBが呟いた言葉は、聞かなかったことにする。





場所は変わってさきほど担がれてきた応接室。

腰砕けなあたしは、やっぱり担がれてます。

やっぱり米俵で移動させられて、ここで肩に乗せられました。


肩にだよ。

どういう頭の構造してるんだ。


ハスキー美少女は結局、淫魔族の雄だったようで (情報共有の賜物) 名をゼルガスディ・ジャガール・バルボッサと言うらしく、しかも、何と魔族の長だとか!

うおおぉおっ、まさかの魔王様出現!


魔王様か……見掛けによらず厳つい名前だなあ。

魔王っぽいような気がしなくもないけど。

ファンタジーね。

緩やかな流れる川のようにウェーブを描くBBの真紅の髪とは対照的に、魔王様の髪色は淡い金色でドストレート。

それをハーフアップにしていて、目は濃紫色、手足はおそろしく白く、やっぱり黒いロングワンピースみたいなものを着ている。

……どう見ても、十七、八歳程度の美少女。


もう、見掛けには騙されないようにしよう。


如何に美しい面の皮でも、一枚剥げは、皆、淫魔!


これを今日より、教訓にしたいと思います!



「で、だいたい理解したのか?」



やっぱりハスキーボイスな魔王様。

馴れちゃえば、このギャップは意外に絶妙なのかもしれないけど……



「……お陰様で」



現在あたしは、BBの右肩に座っているわけで、頭上高くから魔王様を見下ろしている。


誰も突っ込まないけど、これ、ありなの?

大丈夫?

突然「無礼者があっ!」とか、ぶち切れたりしないでくださいね!

あたし、普通の異邦人なんで!

対魔力戦とか無理なんで!


あたしの思考がどうであれ関係ないらしい魔王様以下従軍は、あれよあれよと話を展開していく。


そっちの勝手な都合で召喚されたあたしは、最初からずっと置いてけぼりだ。

そう、本当の最初っからね!



「で、いいか?ええっと……」

「ヨリです。木村ヨリ」

「ヨリ……ヨリか、わかった」



魔王様はあんまり覚える気もなさそうだけど、まあいいか。


そんなこんなでつまり、旅仕度は任せとけ!

三日後には出発しろ!


ってことでした。


で、


帰れるの?

帰れないの?

獣人はやっぱりあれなの?

ふわふわしてないの?

竜族ってやっぱりドラゴン的なものなの?

変身とかしちゃうの?


ど う な ん だ !


異論は山とあれど、魔王様の無言の威圧の前に、言わずして塵と散ったのでした。

BB、腰を摩るのはやめて。





で、翌日。

至れり尽くせりでご飯はそりゃあ美味かった。

どうやら魔族だろうが獣人だろうが、普通に食事をすることは可能らしい。


エウ曰く、



「人型を持つ以上、人を真似て暮らすこともあるからな」



だそうで。


それはつまり、食べなくても大丈夫ってこと?

そしてまたつまり、やっぱり変身しちゃうということ?


ふと湧いた疑問をBBに悟られると厄介なので、デザートが運ばれてくるまでに、無理矢理詰め込まれた知識データベースを何食わぬ顔で漁る。


ここ、世界の中心であるらしいタンジーナバロウ大国は、言わずと知れた魔族の住まう国。

魔族は闇に住まう者──というイメージ何のその、普通に朝と昼もあれば、他国から勇者が攻めて来るようなこともなければ、普通に国交もあるそうな。

ただ、ヒューグ大国との仲は水面下でのいざこざは付きものらしく、表面上上手く誤魔化していると言った感じだそうで。


……何か、曖昧な情報だな。


魔族とは、大まかに三つの種類に分けられるらしく、魔人、魔獣、魔物の順に、強さと知性は下降する。

魔王様とかBBは魔人レベルで、つまりは魔族の中でもその他を押し退け統べる上位魔族だということ。

魔人レベルで、ようやく人型を持つことになるそうな。

魔族はもともと精気を糧に生きているので、人のような食事は不要だけど、単純に美味しいと思うから食べる者が多いらしい。


趣味みたいなもの?


エウが属する竜族は、まさしくドラゴンそのもの。

知識データベースが引っ張り出してきた見たことも聞いたこともない謎の本の挿絵が、ぽんっと頭に浮かぶ。

どうやら変身後の姿は、東洋の竜と言うより西洋の竜の姿に近いらしい。

変身後……いや、それとも本来の姿がそっち?

エウが着ている服は、どっちかと言うとチャイナドレスっぽいんだけどなあ。

で、これまた食事自体は基本的に摂らなくてもいい構造で、竜族に至っては自然の生気を糧にしているそうな。

ただ、ドラゴラム大国は自給自足で畑なんかも耕しているそうだし、家畜もいるらしい。


そして、一番興味津々なのが、獣人の生態!


さあ、がんばって知識データベース!

あたしの想像を裏切らない成果を見せて!


ベットバビナスタ大国の情報が、ぱぱっと頭に浮かぶ。

……すごく頭がよくなったような勘違いに陥りそうでこわい。


獣人ていうのは、所謂 亜種、亜人と呼ばれる種族なんだそうだ。

魔族や妖精族、竜族なんかと人が混じって生まれた人達。

ハーフだと獣人になる確率が高いらしく、他と比べて国の歴史も種族の歴史も浅い。

魔族との混血の場合、魔力値が高いと魔族の方に属する場合があったり、竜族との混血は竜体に変化が可能ならそっちに受け入れられたりもするらしい。

ただ、妖精族との混血は妖精としては半人前にしかならないらしく、獣人に属することがほとんどだそうな。

けど、人間より圧倒的な体力と知力、能力を誇り、1.5倍の寿命でもあるらしい。

で、肝心のふわふわは……



「……やった─────っ!やっぱりいるんだ─────っ!」

「何が?」



思わず歓喜の声を上げたところで、BBに、最もな疑問を投げられました。

あ、デザート来てた。


ところで。


妖精族の国エルフェニアの情報がほとんどなかったのは、どうしてだろうか。

ヒューグ大国については、心象が悪かったからか、特に興味は湧かなかった。


自分達から犠牲を出したくないから異邦人を喚ぶって、しかも、それが上手くいかなかったら他の人達を殺すって……。

いくらあたしが楽観的に生きてきたと言っても、それがよくないことだってくらいの分別はつく。

まだ、ことの次第がはっきりわからないから、今は言及しないけど……。


何はともあれ。


淫魔になすがままにされた上担がれたり、魔王様を上から眺めたり、デザートもすこぶる美味しかったり、いろんな人達が暮らしていたり。

どうやら、思っていた以上に、この世界はファンタジーなようです。


……で、済めばいいけどなあ。

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