【第22話:社会的な盾と、過去のアーカイブ】
【Scene 1:佐藤の納屋・早朝 申請書類の最終チェック】
朝6時。佐藤はコーヒーを片手に、法務局へ提出する設立登記申請書類をチェックしていた。 モニターには、ヴェルが作成した「事業目的」の最終ドラフトが映っている。
「事業目的:自律走行AIアルゴリズムの研究開発。電子機器、精密機械の保守・修理。よし、これでいい」
『「株式会社Ripartenza」 再起動、再出発。いい名前ですね、マスター。 これからあなたが発行するすべての請求書に、その名が刻まれることになります。 書類の不備、誤字脱字、印影の解像度。すべてチェック済みです。バグはありませんよ』
「勝手にいじるなよ。行くぞ」
【Scene 2:現場(上田の叔父の家)・午前 荷物の移動】
「健治、悪いが若い衆を二人貸してくれ。1階の荷物を2階へ上げる。 1階を空にしないと、お前らも床板を剥がして作業できねえだろ」
現場に到着するなり、佐藤は健治に声をかけた。 健治は「おう、わかってるよ」と頷き、手際よく指示を出す。
「おい、お前ら! 2階の畳に養生シートを二重に敷け。 その上に佐藤さんの指示通り、叔父さんの荷物を運び込むぞ。傷を付けるなよ!」
佐藤の指揮のもと、荷物は次々と2階へ運び上げられていく。 使い込まれたちゃぶ台、古びたラジオ、家族の記録。 職人たちが養生された畳の上を機敏に動き、荷物を効率的に配置していく。 佐藤は配置を確認しながら、1階の天井を剥がす際の振動や埃を想定し、荷物を保護シートで覆った。
【Scene 3:法務局・午後 株式会社の設立申請】
午後は一転して、静かな法務局へと場所を移した。 作業着を脱ぎ、クリーニング済みのシャツに着替えた佐藤は、窓口で「株式会社Ripartenza」の設立登記申請書を差し出した。
登録免許税15万円。佐藤にとっては、このプロジェクトを個人の活動から、明確な責任を持つ組織へと切り替えるための、正当なコストだった。
窓口の職員が淡々と書類をチェックしていく。 佐藤はその様子を、処理の完了を待つエンジニアのような冷静な目で見つめていた。
「これで受理されました。登記完了まで1週間ほどお待ちください」
「承知した」
法務局を出ると、冷たい風が頬を打った。 だが、佐藤の胸の内には確かな手応えがあった。 これで、B社とC社の報酬800万円は、個人の資産ではなく法人の資本として、正当に管理されることになる。
【Scene 4:佐藤の納屋・深夜 着工初日の振り返り】
夜、再び納屋へ。 埃にまみれた体をシャワーで流し、佐藤はモニターの前に座った。
『お疲れ様でした。法人の申請、無事に受理されましたね。 健治さんから連絡が届いています。 「1階は空になった。床下を確認したが、50年前の仕様で土がむき出しだ。湿気がひどい。 明日は午前中に防湿シートを全面に敷いて、湿気を止める。 配線用のスペースも空けておいたから、お前は午後から来い。床下作業になるぞ」だそうです』
「健治のやつ、よく見てるな。 明日は断熱の1次工事だ。壁を塞ぐ前に、まずは地面からの湿気を潰す」
佐藤は軽く肩を回し、少しだけ表情を緩めた。 2階に適切に運ばれた叔父さんの荷物。その過去を守りながら、新しい場所をビルドする。
『明日の午前中は現場不要ですね。納屋での事務処理と、午後からの敷設作業のシミュレーションに時間を割けます。 マスター、明日は少しゆっくり寝て、脳のキャッシュをクリアにしてください』
「そうさせてもらう。寝るぞ、ヴェル」
【前回の資産:12,800,000円】
【収入:0円】
【支出(株式会社設立費用):150,000円】
【現在の資産:12,650,000円】
【第22話:完】
【偉人の言葉】 「商売とは、感動を与えることである。」




