第九節 女教師島津さん
ある日の良く晴れた朝――、
渡辺紗希は通学路を歩き独り、悩んでいた。
(ハァ……松本君……。今日も教室で暴れ出して……。このままじゃまた停学処分になって……いいえ、もっと酷い退学処分にまでされてしまうんじゃ……?)
そこに春嵐の様に突如現れたのは女教師島津さん。
「ハーイ! いきなり飛び出てババババーン! 女の子の味方、島津センセーだゾ!! 悩める良い娘に、人生の生・き・か・た、教えちゃうぞ!」
「!?」
突然、ハイテンションなアラサーが元気に叫びながら登場し、助け船を出してくると、いう展開に、渡辺紗希は驚愕した。……が、即座に記憶がフラッシュバック! 島津さんについての情報が、頭のスクリーンに映像として流れ出す!
「あっ……アナタは! 今作『松本無印』の『第二十節 特別教室』において、女子達に近藤さんの装着方法を教えてくると思いきや元カレとのコイバナをしてその場の空気を一変させた後に、そこに居た女子達に近藤さんを配った……島津センセー!?」
渡辺紗希が、115文字に上る他己紹介とも言える発言をしたのに対し、ふふと口元を緩ませた島津さんは、それに答えるのだった。
「ご丁寧に、どうも。思い出してくれましたわね、私のコトを――! それはそうとアナタ、乙女の悩みを抱えていますわね?」
「はっ!? 乙女!!?」
渡辺紗希は人生において凡そ関わりが無いであろう単語を用いた発言に完全に面食らった。更に、島津さんは畳み掛ける。
「そうでしょ、そうでしょ?」
「悩んでは……いますけど」
「ふふ。さあ、話してごらんなさい。アナタの、想い人を!!」
「なっ!?」
渡辺紗希は顔真っ赤になった。蒸気でも沸きそうだった。
「ふふ……」
「もっ、もういいです。私、真剣に悩んでいたんですよ?」
「えっ?」
「アナタみたいな大人には、絶対なりません」
「ちょっ?」
「サヨウナラ」
渡辺紗希は足早に駆けていった。
「あー……」
島津さんは独り、路上に残されるのであった。
――、
学校が終わり、いつも通りのばいばいを言い合って別れる、そんな夕刻――、
漢、松本は公園のベンチに座り、独り悩んでいた。
「畜生……後ろ美人の野郎が、今日も絡んできやがった。担任が言ってた様に……アイツは俺を……レイ……?」
そこに春嵐の様に突如現れたのは女教師島津さん。
「ハーイ! いきなり飛び出てババババーン! 漢の子の味方、島津センセーだゾ!! 悩める良い子に、人生の生・き・か・た、教えちゃうぞ!」
「!? てめぇは……!?」
突然、ハイテンションなアラサーが元気に叫びながら登場し、助け船を出してくると、いう展開に、松本は驚愕した。……が、即座に記憶がフラッシュバック! 島津さんについての情報が、頭のスクリーンに映像として流れ出す!
「あっ……アンタは! いつぞやのいかがわしい授業に突然参戦した、変態女!?」
松本が、35文字しかない他己紹介とも言える発言をしたのに対し、スーッと俯き、元気をなくした様に見えた島津さんは、それに答えるのだった。
「へ……変態女ですって?」
「ああ、お前は変態だ」
松本は当然だと言わんばかりの反応を見せる。
「へ……へへ変態。わたっ、私が変態……? へ……変態女。……変態」
「!」
視線がどんどん下がっていき、ブツブツブツブツささやき続ける島津さんに対し、松本は同情にも似た感情が芽生えた。
「(この女……効いてる……?)な、なぁ。ちょっと、変態は言い過ぎた。大丈夫か」
「ふだしらですわ! ハレンチですわ!! 縮めてフレンチですわよ!!!! と、いうコトでフレンチトーストお持ちしましたわ。お召し上がりくださいな」
島津さんはあっつあつのフレンチトーストを左胸の四次元ポケットから取り出して、松本に差し出した!!
「カリっ……! 甘いな……」
松本はその外はサクサク、中はもっちりの食感のメープルシロップがとろーりとのった、あっつあつのフレンチトーストを一口食べた!!
――、
「成程……松本君はその『後ろ……なんとか』さんに襲われるんじゃないか、と……」
「ああ」
公園のベンチで優雅にティータイムを嗜む二人は、込み入った話を済ませた様だった。
カタッとティーカップを置いた島津さんは立ち上がり、言う。
「カンタンな事よ、松本君!」
「!」
そして均一で破れにくい薄膜構造の合成樹脂製のソレをひらひらとなびかせながら、言った。
「……『近藤さん』が、全てを解決させてくれる……!」
「……! 先生……!!」
「うん!」
「諦めさせてんじゃ、ね――――!!」
松本はこの世に生を受けてから初めて、女性にジャーマンスープレックスを食らわせた。




