第二節 中学女子!? いぶこっこさん
キュキュッと、体育館の床をシューズが擦れてきしむ音――、ダン……ダン……と、ボールが床に跳ね返り弾む音――、体育の授業中、いぶさんはバスケをプレイしていた。
10分前――、
(ここは……? 体育館? オレは、何を……?)
急に目前に広がる光景、それに対していぶさんは戸惑っていた。辺りには中学生くらいの学生に、一人の体育教師。そこでいぶさんは他の学生たちと一緒に体育座りをしていた。
「今回は男女混合だ。チーム分けを発表するぞー。……次、Cチーム女子、いぶこっこさん……」
「いぶこっこさん!?」
いぶさんは聞き慣れない呼び名の、自分に似た名前を聞いて驚愕した。体育館中に響くような大声をいぶさんが上げると、中学生達は一斉に声の持ち主の方に顔を向けた。
「あ……」
「どうした?」
体育教師が不思議そうに問いかけてくる。躊躇い、いぶさんは下を向いた。
「何でも……ありません……(オレ……、オレ……!)」
いぶさんは心の中で叫び声をあげる。
(男なんですけど……!!)
――、
「すごいジャンプ力だっ!」
「いぶこっこ、行け――!!」
いぶこっこ(いぶさん)の身体能力は、男子もが舌を巻く程だった。
(オレ、男なんですけどー!?)
――、
「楽しかったねー」
「俺の3のお陰で勝ったな!」
体育のバスケは終わった。いぶさんはこれから体操服を着替えるところなんだが、場所が知りたくていぶさんはその辺の男子に聞いてみた。
「あのーどこで着替えるんだっけ?」
「何言ってんだ? 男子は教室。女子は更衣室だな」
「あっ、そうだったなぁー。じゃあ教室へ」
教室へ行こうとしたいぶさんの腕を、その辺の女子が掴んだ。
「!?」
「いぶこっこぉー、女子のアンタは、更衣室だろぉー?」
「!!?」
更衣室――、
「汗かいたー」
「彩子、また太ったんじゃない(笑)?」
「やー、言うなー(涙)」
「//////」
いぶさんは女子達が着替えを行っている中、一人後ろ向きになって体操服の布地を両手で掴んでいた。
(オレはもう30過ぎでオカズは夜見るのだが、女子中学生の着替えは――、見れない!!)
「いぶこっこー、何してんのぉー?」
「早く着替えなよー」
「あっ、ああ(この状況……なんとか乗り切らなくては……!!)」
『みっそんインポっ渋る!!~女子にバレずに着替えをせよ~』
(そもそも、オレは女子で、いぶこっこなのだろうか……?)
いぶさんは体操服の下を目視でのぞき込んでみた。
(あっ……ある。チン〇、毛ぇ生えとる)
「何やってんのよ?」
「!?」
そこには、Hがいた。いぶさんの行動を不審に思ったのか、ぐいぐいと目の前で様々な指摘をしてくる。
「アンタ、そこで何してるのよ? それと今日なんか自分の名前呼ばれただけで飛び跳ねてたわよね? アレ何?」
「あっ……そーだっけぇ?」
「なんか怪しいわね」
「あっ!(これしかない!!)ワタシ、ちょっとトイレ!」
「あぁ! 待ちなさいよ!!」
いぶさんはその場から立ち去った。
(女子トイレ女子トイレ……オレは今女子扱い……あった)
バタンと、女子トイレに入るいぶさん。そこは全室個室の、洋式が並んでいるトイレだった。男性用など無い。しかし、一人通路に、男子が。
「は?」
「……」
(オレ、間違ってる!!!?)
いぶさんは一旦ドアを開けて廊下へ出た。標識を見るとそこには『女子トイレ』の文字が。
さては……と、いぶさんは女子トイレのドアを開ける。
「ヘンタイだー!! ヘンタイが居るぞー! オイヘンタイ!!」
大声で威嚇すると、その男子は見覚えがある顔に、姿を変えていった。
「俺は変態じゃない」
「!」
「俺はTだ……!!」
「!!!!」
瞬時――、目の前の光景が変わる。
そこには、見知らぬ天井……。
「ここは……?」
「あっ」
声のする方を振り返ってみる。すると、淡いピンク色のナース服を着た看護婦さんがそこに立っていた。
「目を覚まされたのですね。良かったぁ。ずっと苦しそうな顔で眠ってらしたから……落ち着いて聴いてくださいね。
ここは、精 神 病 棟 で す 」
(病が故の――、夢!!!?)




