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王太子妃候補に選ばれた伯爵令嬢はやり直したい  作者: 美雪


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24/30

24 暗殺予定日



 貧民街の極秘視察日になった。


 リセットはザカリアス付きの魔導士として同行する。


 グリンとマリンは別行動。現地で所定の位置につくことになった。


「リセットは絶対に無理をしないように」


 リヴァイスは心配でたまらなかった。


 ザカリアスと一緒のリセットは命を失う危険に遭遇するはずだった。


「大丈夫です」

「兄上、何かあった場合、リセットのことをお願いします。絶対に置いて行かないでください。女性が兄上の足についていけるわけがありません。リセットは魔法が使えてもか弱い女性です」

「わかっている」


 リセットは魔法への対処はできるが、物理的な攻撃や襲撃には弱い。


 一方、ザカリアスは剣術が得意で、物理的な攻撃や襲撃には強い。


 ザカリアスとリセットが組めば、理論上は物理攻撃にも魔法攻撃にも対処できるはずだった。


「グリンがいる場所はわかっているよね? そこが緊急時の待ち合わせ場所兼避難場所だから」

「大体は覚えている」


 貧民街は路地が多いためにわかりにくい場所だったが、グリンとマリンのおかげで詳細な地図が作れた。


 その地図を頭に叩き込んで逃げることになった。


「心配だ……」

「大丈夫ですって」

「リヴァイスが一番冷静ではないかもしれない」

「一番狙われやすいのは最高位者の兄上です。僕の婚約者の命もかかっています!」

「大丈夫だ。物理的なことなら任せろ」

「大丈夫です。魔法的なことなら任せてください!」


 ザカリアスとリセットは見つめ合った。


「私とリセットはなかなか良いコンビになれそうな気がする」

「そうですね! 物理と魔法で丁度良いです!」


 ザカリアスとリセットが微笑み合う。


(妬ける……)


 リヴァイスは心の中で呟いた。





 貧民街に到着した。


 唯一王太子の命を守り抜くことができた時の行動を元にして、リヴァイスが視察の計画を立てた。


 同じようにすれば、同じようなことが起きる。予想しやすく対処もしやすい。そうであって欲しいという考え方でもあった。


「この辺りで襲撃されて」


 案内役の騎士達がそう言った時だった。


「金持ちがいるな」


 いかにもごろつきといった様子の男性達が現れた。


「なぜこんなところにいる?」

「視察だ」


 ザカリアスが答えた。


「ここは治安が悪い。問題が多くある。改善しなければならない」

「全部、国王と王太子のせいだ!」


 男性達は睨んで来た。


「重税につぐ重税で国民を苦しめている!」

「何?」


 ザカリアスは怪訝な顔になった。


「重税だと?」

「お前達のようなやつらのせいで俺達は苦しんでいるんだ!」

「目に物見せやる!」


 男性達は武器を構えた。


 騎士達も剣を抜いた。


「落ち着け。重税の話を聞きたい」

「話すことなんかない!」

「そうだ!」

「俺達の怒りを思い知れ!」


 男性達が襲い掛かって来た。


 だが、突然現れた結界で攻撃が防がれた。


「待って欲しい。何か誤解がある!」


 リヴァイスが叫んだ。


「国王は重税をかけていない!」

「国王にとってははした金だろうさ!」

「だが、俺達には苦しいし重いんだよ!」

「何度も何度も……信じられない!」

「慈悲のかけらもない! 非情だ!」

「落ち着いてください!」


 リセットは声を張り上げた。


「その話はおかしいです! 国王陛下は重税をかけていません! むしろ、王太子殿下のおかげで軽くなったはずです! なのに、重くなったと言いましたよね? 絶対におかしいです!」


「その通りだ! 税は軽くなったはずだ!」


 リヴァイスも叫んだ。


「王太子が税を軽くするよう進言したからだ! 税金徴収を行う際に何かあったのかもしれない!」

「すぐに調べましょう! 国王陛下や王太子殿下の知らないところで、手違いがあったのかもしれません。不正だったら大変です!」


 男性達は動揺した。


「重税にはしていないのか?」

「本当は軽くなるはずだったのか?」

「そんな……」

「手違いだと?」

「不正だったら許せない!」


 男性達が騒ぎ出すと、足元に魔法陣が浮かび上がった。


「僕の方に集まれ! 魔法で守る!」

「ギュウギュウに詰めて!」


 リヴァイスとリセットが叫んだ。


 魔法陣から放たれる光が強まり、膨大なエネルギーが爆発した。


「くっ」


 結界をあえて消したリヴァイスは盾魔法に全力を尽くした。


 そのおかげで盾魔法は罠魔法の威力に耐え、全員が無事だった。


 だが、盾魔法の範囲外の建物は消滅した。


「どういうことだ?」

「俺達も一緒に?」

「嘘だろ?」

「殺そうとした!」

「きっと口封じです!」


 リセットが叫んだ。


「私達をここへ足止めするよう言われていませんか? 全員を罠魔法で殺してしまうつもりだったのかもしれません」

「騙された!」

「あいつ!」

「許さん!」

「罠魔法がまた仕掛けられるかもしれません。固まらないようにして逃げましょう!」

「視察は終わりだ!」


 リヴァイスが宙に浮かび上がった。


「僕が周囲を警戒する。馬車へ向かうんだ!」


 全員が走り出した。


 そして、乗って来た馬車が見える。


「待て! 止まれ!」


 リヴァイスが叫んだ。


 すぐに全員が立ち止まった。


「駄目だ! 馬車から離れろ!」


 馬車を守っていた騎士が慌てて離れていく。


 馬車の下に魔法陣が浮かび上がった。


 リヴァイスは罠魔法の威力を知っているだけに、威力を抑えるための結界を張らなかった。


(これで魔力をかなり消費させることができたはずだ)


 馬車が狙われることがわかっていてもリヴァイスは向かうよう指示した。それは術者に罠魔法を使わせることで魔力を消費させるためだった。


(見つけた!)


 リヴァイスは術者の捕縛へ向かった。


「逃げて! 罠魔法に気を付けて!」


 リセットが叫んだ。


 誰もが馬車から離れるように走り出した。


 リセットの手をザカリアスが握った。


「行くぞ!」


 ザカリアスとリセットは手をつないで走り出した。



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